ラトヴィアといえば合唱。
歌の宝庫で知られるお国柄ですけれど、
ラトヴィアの夫婦と娘2人のラタ・ドンガも、
3世代にわたって歌い継いできた民謡をレパートリーにしているといいます。
フィンランドのカンテレによく似たラトヴィアの民俗楽器、
クアクレの清涼な弦の響きを生かしつつ、
ピアノ、ベース、エレクトロほか、さまざまな楽器を多彩に取り入れています。
プロダクションがよく作り込まれているうえに、デリケイトな仕上がりで、
デビュー作にしてこの完成度の高さは、スゴいですね。
クアクレは、お父さんのアンドリス・カプストが弾いていますが、
プログラミングやエレクトロを担当しているマルチ奏者のウギス・ヴィティンシュが、
サウンドづくりのキー・パーソンのよう。
ラトヴィアの古代と現代だけでなく、ラトヴィアと世界をつなごうという音楽性は、
インド南東部のテルグ語とラトガリア語をミックスしたグループ名にも、
はっきりと表れています。
なんでも、「ラタ」は、テルグ語で女性を象徴する植物だそうで、
「ドンガ」はラテン語の砦を意味し、神と霊の家を象徴するラトガリア語とのこと。
古代インド・ヨーロッパ語族バルト語派の広がりをさかのぼる試みは、
インドのサロード、西アジアのダフ(枠太鼓)、
中東のダルブッカをフィーチャーしたサウンドに表明されていて、
アンドリスは、ラトヴィアの伝統音楽に影響を及ぼしてきたスラヴ、インド、
中東の音楽の要素を露わにしようとしています。
こんな学究的なテーマをポップ・ミュージックとして成立させるのは、
容易なことではないんですけれど、これは稀有な成功作ですね。
4人のア・カペラのコーラスは、深みのある荘厳な響きを持ち、
力強いシンギングからは北の生命力が溢れ出ます。
ラトヴィアの古代と未来を鮮やかに示してみせた野心作です。
Lata Donga "VARIĀCIJAS" Lauska CD079 (2018)