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マリア・テレーザ・デ・ノローニャの全録音集

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Maria Teresa De Noronha.jpg

すごいボックスが登場しました!
最愛なるファド歌手、マリア・テレーザ・デ・ノローニャの全録音集であります。
そうかあ、2018年はノローニャ生誕100周年だったんですねえ。

ファド歌手の最高峰といえば、文句なしにアマリア・ロドリゲスですけれど、
一番よく聴くファド歌手となると、
やっぱりぼくはマリア・テレーザ・デ・ノローニャですね。
なかでも、ポルトガルEMIが06年に出した4枚組はノローニャの決定版で、
どれだけ愛聴したことか。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2009-11-27
すぐに廃盤となってしまったため、入手しそこねた方が多かったようですけれど、
そんなファンにとっては朗報でしょう。

世界的に有名になったアマリア・ロドリゲスと同世代のファド歌手ながら、
73年に引退してしまったがため、ポルトガル国外ではほとんど知られていないノローニャ。
新世代のファド歌手からファドを知り、昔のファドはアマリア・ロドリゲスしか知らない、
なんて若い人にこそ、ぜひ聴いてほしい人です。
今の時代には、ディープなアマリアより、
なめらかでナチュラルな味わいのノローニャの方が、きっとウケもいいはず。

CD6枚にDVD1枚と60ページのブックレットを収めたこのボックス、
未発表や初公開のレア・トラックも満載なんですが、
いわゆるマニア向けに作られていないところがミソ。
「コンプリート」ぎらいのぼくでも、手放しに絶賛できる内容になっています。

ぼくが「コンプリート」ものに関心がないのは、
凡演や駄演まで聞かされるのは、まっぴらだと思っているからですけれど、
ノローニャはコンプリートで聴いても満足できる、数少ない音楽家のひとりといえます。
それは、円熟期に引退してしまい、録音量がけっして多くないことに加え、
デビューから引退まで、ノローニャのみずみずしい歌いぶりは一貫していて、
録音も粒揃いだったことの証明でもあります。

さて、中身をみると、ディスク1~3がスタジオ録音。
59年にヴァレンティン・デ・カルヴァーリョと契約してからの録音を録音順にまとめ、
未発売のテスト録音3曲に続き、初EPから71年録音のラストLPまで収録しています。
そしてディスク3の最後に、ヴァレンティン・デ・カルヴァーリョと契約する以前の
SP録音16曲をクロノロジカルに収録。52年にメロディアへ録音した初SPの2曲に、
53年から55年にロウシノルから出たSP7枚分14曲が並びます。

ディスク4・5は、ラジオ録音。
ポルトガル放送局で隔週放送されたノローニャのファド番組は、
ノローニャがプロ・デビューした翌年の39年から始まり、
47年の結婚後の数年ブランクを除いて、
62年12月までロングランとなった人気番組でした。
ここに収録された音源は、熱烈なノローニャ・ファンが自宅のラジオの前にマイクを立てて
家庭用レコーダーに録音した、プライヴェート・コレクションから編集されたものです。

録音をしたのは当時まだ16歳だったという、ファド・コレクターのヌーノ・デ・シケイラ。
パット・ブーン、ポール・アンカ、プラターズと同様、
ノローニャのファドに夢中だったそうで、
60年から番組が終わる62年まで、自宅前を横切るバスの騒音に邪魔されながらも、
出来る限り録音を残したとのこと。
解説のブックレットには、
自分のコレクションがCD化されたことへの謝辞が載せられています。

そして、ディスク5の最後に収録されたボーナス・トラックが目玉。
こちらは国営放送局が残した公式記録で、
39年録音の2曲、46年録音の3曲、49年録音の1曲が収録されています。
こんな若い頃のノローニャの歌声を聞けるとは、思いもよりませんでした。
39年の2曲はノローニャの初録音で、まだ20歳ですよ!
声をぐぅーっと伸ばす張りきった歌いぶりが、ういういしく聞こえます。
この録音時の写真がブックレットに載せられているのも、注目です。

ディスク6は、これまた初めて耳にするライヴ録音で、
63年録音の5曲と70年録音の4曲を収録。
大衆的なファド・ハウスで活動したファディスタと違い、
若い頃からスペインやブラジルから招かれるような貴族出身の歌手だった
ノローニャは、大勢の観客を前にしたコンサートのライヴ録音が残されていて、
円熟期の歌いぶりを楽しむことができます。

そして注目のDVDは、往時の国営テレビ放送を収録したもので、
59年放映と67年放映の2つの番組を収録。
完璧なまでのヴォイス・コントロールで音の強弱をつけ、
上がり下がりの激しい古典ファドの難曲を、いともスムーズに歌ってのけます。
吐息混じりにひそやかに歌うデリケイトさは、悶絶もの。
映像でノローニャのエレガントな歌いぶりを観ながら聴くと、
あらためてエクスタシーに酔いしれますねえ。

伴奏のラウール・ネリーのギターラの妙技にもまた、目を見張ります。
59年の番組中にインスト演奏があり、右手のフィンガリングが生み出す、
美しいサウンドには、ウナらされました。
ギターラ2台、ギター2台、低音ギター1台という珍しい編成の
67年の番組も見ものです。

つんどくだけで棚の肥やしになるボックスとは大違いの、
いつも手元に置いて、楽しめることうけあいのボックス。一生もんです!

[6CD+DVD] Maria Teresa De Noronha "INTEGRAL" Edições Valentim De Carvalho SPA0663-2

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