わお! ようやく手に入ったぞ、ドン・カエターノのアルバム。
ドン・カエターノは、アンゴラの内戦時代をサヴァイヴしたヴェテラン・センバ・シンガー。
数多くのバンドを渡り歩いた人ですけれど、もっともよく知られるのは、
アンゴラで初めてエレクトリック・ギターを導入した植民地時代のトップ・バンド、
ジョーヴェンス・ド・プレンダの81年再結成後のフロント・シンガーを務めたこと。
ブダの編集盤“ANGOLA 80s” にも、ジョーヴェンス・ド・プレンダをバックに歌った
86年のシングル曲‘Tia’ が収録されていたし、ジョーヴェンス・ド・プレンダの
ドイツの91年ライヴ盤でも歌っていましたね。
40代に入り、ようやく97年にソロ・アルバム“ADÃO E EVA” を出し、
その後もアルバムを2枚出したんですけれど、入手困難でとうとう見つからず。
それだけに、このゼカ・サーとの共同名義の新作が届いたのは、嬉しかったなあ。
ドン・カエターノは、アンゴラ政府(MPLA)がキューバとソ連の支援を受けていた70年代、
政府後援の留学生として77年にキューバへ渡っています。
この時、留学生の音楽仲間だったアントニオ・メンデス・デ・カルヴァーリョとともに、
キューバの人気デュオ、ロス・コンパドレスにあやかったデュオ活動を始めたところ、
キューバのアンゴラ人学生コミュニティの間で人気が沸騰。
そこでさらにメンバーを増やしたコンボ・レヴォルシオンを結成し、
キューバで3年間活動します。
その後アンゴラへ帰国すると、ゼカ・サーとともに、
アンゴラ版ロス・コンパドレスを復活させ、
ドンがジョーヴェンス・ド・プレンダに招かれるまで、デュオ活動を続けたのでした。
コンビを組んだゼカ・サーは、ドンが16歳のときに結成したグループ、
セヴン・ボーイズのメンバーで、ドンにとって幼なじみのもっとも古い音楽仲間です。
『35周年メモリアル』という新作のタイトルどおり、35年ぶりに再会した作品なのですね。
ほとんどの曲が二人の共作で、おそらく当時の曲なのでしょう。
二人の曲ではない‘Un Larara’ は、
本家ロス・コンパドレスの‘Hay Un Run Run’ のカヴァーです。
二人の土臭い声がいいんだよあ。
野趣に富んだこの滋味深さは、ヴェテランにしか出せない味わいですよ。
グァラーチャ、ソンゴ、ボレーロといったキューバのスタイルに、
センバをミックスしたサウンドも、たまりません。
ディカンザが刻む軽快なリズムや、メレンゲでタンボーラが叩くのと同じ
ト・ト・ト・トというリズムにのせて奏でられるアコーディオンに、
センバらしさがよく表われています。
ほっこりとしたラテン調センバは、キゾンバとはまたセンスの違ったサウンドで、
得難い味があります。
Dom Caetano & Zeca Sá "MEMÓRIAS 35 ANOS" Xikote Produções no number (2018)
v.a. "ANGOLA 80’S 1978-1990" Buda Musique 82994-2
Orquestra Os Jovens Do Prenda "BERLIN FESTA!" Piranha PIR40-2 (1991)