うわぁ、まるでエドワード・スタイケンのファッション写真みたいじゃないですか。
マレーネ・ディートリッヒやグレタ・ガルボの名フォトの数々が思い浮かぶ、
ノスタルジックなセピア調のジャケット・デザインに目を奪われました。
ヴェトナムのヴェテラン・ポップス・シンガー、タイン・ハーの新作です。
ドイツ系アメリカ人の父とヴェトナム人の母のもとに生まれたタイン・ハーは、
少女時代から地元ダナンのラジオ局で歌ってきたという人。
高校卒業後に難民申請してフィリピンへ渡り、
難民キャンプの美人コンテストで優勝してから本格的に歌手活動を始めたそうで、
91年にアメリカへ移り、96年にトゥイ・ガからデビュー、
越僑歌手として20年以上のキャリアがあります。
白人の父親の影響でヴェトナム人的な顔立ちでないところが、フィ・ニュンと同じですね。
そんなタイン・ハーが、17年から活動拠点をヴェトナムへ移し、
ヴェトナムの若手作曲家や音楽家たちとプロジェクトを組み、
2年の歳月をかけて作り上げたのが本作です。
若手による作品ながら、ノスタルジックな抒情歌謡路線のアルバムで、
近年のボレーロ・ブームに沿った作品といえます。
実は、タイン・ハーを聴くのはこれが初めてなんですが、
おそらくトゥイ・ガから出していたアルバムとはがらりと違っているんじゃないかな。
語尾のヴィブラート使いのしつこさがやや気になりますけれど、
少しハスキーな声で軽やかに歌いながら、
しっとりとした情感を出すあたりは、さすがですよ。
ドラマティックな曲で歌い上げても、まったくしつこさを感じさせず、
さっぱりしてるところも美点ですね。
ドライな味に魅力のある人です。
Thanh Hà "MỚI MẺ NÀO CŨNG NGỌT NGÀO" Phương Nam Phim no number (2019)