アンゴラのキゾンバ・シンガー、ヨラ・セメードの前作“FILHO MEU” は、
アフロ・ズークの亜流と受け止められがちなキゾンバのイメージを払しょくする、
一大傑作でした。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09
ポルトガル語圏アフリカとフレンチ・カリブの多様な音楽要素をミクスチャーした手腕が、
それまでのキゾンバにない高度な洗練を遂げていて、
ゴージャズなプロダクションともども、魅惑的なクレオール・ポップに仕上がっていました。
2016年のベスト・アルバムで、エディ・トゥッサの新作を押さえて選んだんですけれど、
迷いはありませんでしたよ。
あれから4年、昨年春にリリースされた新作が、1年遅れでようやく手元に届きました。
CD2枚組、全29曲120分超の新作は、ヴォリューム感たっぷり。
前作が弦オケから始まる意表を突くオープニングだったのに比べると、
今作は打ち込み使用のキゾンバでスタートし、
前作の練り上げたクレオール・ミュージックの豪華さに比べると、
ちょっと後退した感のある、平均的な仕上がり。
ディスク1の4曲目まで、打ち込み使いの平凡なキゾンバが続き、
5曲目でようやく生ドラムスにクラリネットをフィーチャーしたモルナとなります。
レゲエのリズムを取り入れたこのトラックがフックとなり、
その後生ドラムスによるトラックがしばらく続き、ビギンとセンバのミックス、
センバとコンパのミックス、コラデイラなど多彩なクレオール・ミュージックを繰り広げ、
終盤には、アコーディオンをフィーチャーしたストレートなセンバも出てきます。
プロダクションのことばかり書いてしまいましたけれど、
伸びのある声でしなやかに歌うヨラのヴォーカルは、
アンゴラのポップ・クイーンといった風格を感じさせます。
まさにヴェテランの味わいというか、いいシンガーですよねえ。
クレオール・ミュージック中心にまとめたディスク1に対して、
ディスク2はバラード中心のポップスで、
ヨラのソウルフルな歌いぶりを堪能できる美メロ曲が並びます。
2曲目のボレーロ‘Athu Mu Njila’ での歌いぶりにはグッときたし、
インドネシアかマレイシアのポップ曲を思わす7曲目の‘Dias Da Semana’ は、
アンゴラでもこんなメロディがあるのかと、とても新鮮でした。
プロダクションもオーケストラを使うなど、バラード編の方が手が込んでいますね。
コンガ、ディカンザ、ギター3台のシンプルな伴奏で歌うセンバを、
ラスト・トラックに持ってきたのは意表を突かれましたけれど、
爽やかな締めくくりになっています。
Yola Semedo "SEM MEDO" Energia Positiva Music EPCD005 (2018)