取り上げようか、やめようか、ちょっと迷ってたんですけど、
なんだかんだよく聴いているんだから、やっぱ書いておこうかという気になりました。
キューバ新世代ジャズのグループ、エル・コミテのデビュー作。
ツイン・ピアノに2管の7人編成、全員キューバ人ですが、
リリース元はフランスのレーベル。
「超絶のキューバン・ジャズ」なる触れ込みで買ったものの、
最初聴いた時、「ジャズ」でも「キューバ」でもぜんぜんないじゃん!
オープニングの割り切った8ビートのドラミングからして、
ジャズというよりはフュージョン。
ロドネイ・バレットのドラムスは、手数は多いもののコンパクトに叩くから、
うるさくならないスタイルで、歌伴上手そうと思わせるタイプです。
新世代ジャズのドラマーのリズム・フィールを期待したもんだから、
それとは違うスタジオ出身のフュージョン・ドラマーといった端正なプレイに、
あれれ、と思っちゃったんでした。巧いのはわかるんだけどさ。
新世代ジャズらしいサウンドが聴けるのは、4曲目の‘Transiciones’。
アブストラクトなラインからホーンズを含む合奏になだれ込むと、
複雑なリズム・アレンジとなって、フュージョン臭は解消します。
うん、こういうのを、期待していたんですよね。
そして、メンバー全員キューバ人というのに、ホントか?と思ったのは、
冒頭から中盤4曲目までのリズムに、ぜんぜんクラーベのフィールがないから。
キューバン・ジャズの強いグルーヴがなくて、
なめらかといえば聞こえはいいけど、淡白なフュージョンのリズム感があまりに支配的。
5曲目の‘Carlito's Swing’ でようやくオン・クラーベとなり、
ピアノがトゥンバオを弾き始めるブリッジから、
ようやくラテンらしくなるとはいえ、薄味だなあ。
で、一番キューバらしいサウンドを聞かせるのが‘Son A Emiliano’。
90年代キューバン・ジャズの傑作、
ガブリエル・エルナンデスの“JAZZ A LO CUBANO” 所収のソンゴで、
これなら文句なしのキューバン・ジャズといえます。
そして、続くラスト・トラックのラテン・ジャズ化した、
マイルス・デイヴィスの‘So What’ で締めくくるという、
終盤になってようやくキューバン・ジャズらしくなるアルバム。
これ、曲順を真逆にしたら、印象がガラリと変わったんじゃないかと思わずにはおれない、
前半と後半では別グループの演奏のように思える作品です。
El Comité "Y QUÉ?" Inouïe Ditribution SDRM5072018/1 (2018)