戦後レンベーティカの恋唄 マリカ・ニーヌ
これまた原田さんから、するりと差し出された温故知新盤。 アラブの旧作もそうですけど、ギリシャも古いCDがまだ結構残っているらしく、 CD衰退の現在、CDショップとしては古いカタログに活路を見出すのは、 手堅い選択でありますね。 30年くらい前によく聴いた、レンベーティカの名女性歌手マリカ・ニーヌ。 レンベーティカをギリシャの国民歌謡に引き上げたヴァシリス・ツィツァーニスとのコンビで...
View Article21世紀に蘇るレンベーティカ ヴィヴィ・ヴーツェラ
マリカ・ニーヌを聴いていて、この春カンゲキしたレンベーティカ新作を 取り上げそこねてたのを思い出しました。 これがデビュー作という、女性歌手ヴィヴィ・ヴーツェラのアルバムです。 デビュー作で、戦前スミルナ派のレンベーティカのレパートリーを歌うというのも スゴい話なんですけれど、こういうアルバムがぽろっと出るところが、 まさしくギリシャ歌謡の奥深さなんでしょうねえ。...
View Articleスーダンのブルース・レジェンド アブドゥル・アジーズ・ムハンマド・ダウード
黄金の宝が眠っていることはわかっているのに、 待てど暮らせど、いっこうに発掘されないスーダン大衆歌謡。 オスティナート・レコーズのヴィック・ソーホニーが手がけ始めたので、 その成り行きを見守っていたところ、まったく別のところから、 ヴィンテージものがひょっこりリイシューされました。 それがアリゾナ州トゥーソンを拠点とする ブルー・ナイル・レコーズというレーベルがリリースした、...
View Article南スーダンのファニーなポップス パンチョル・デン・アジャン・ラック
南スーダンのポップス? あの国にポップスなんて存在するのか? 独立早々の国境紛争から内戦に突入した南スーダンの惨状を思えば、 当然わき上がる疑問です。 南スーダンの国旗の三色を背に、『南スーダンの声』と題した本作の主役、 パンチョル・デン・アジャン・ラックは、内戦を避けて国外に脱出した難民たちにとって、 レジェンド扱いされている歌手だとのこと。...
View Articleオーガニックなマンデ・ヒップホップ ルカ・プロダクションズ
バマコのアンダーグラウンド・シーンで活動する、 ラッパー/トラックメイカーのルカ・ギンドによるプロジェクト、 ルカ・プロダクションズの新作がすごく面白い。 前2作では、バラフォン、コラ、ジェンベなどの演奏を散りばめてはいても、 全体的にはエレクトロニックなサウンドが支配していましたけれど、 今作はンゴニを中心とする伝統楽器による生演奏をメインに全面展開。...
View Articleモンペリエから登場したエチオ・バンド エチオダ
エチオピアで研究活動をされている映像人類学者の川瀬慈さんから教わった1枚。 エチオダは南フランスのモンペリエのバンドで、エチオピア音楽をベースに、 アフロビート、ファンク、レゲエをミックスした音楽をやっているといいます。 3年前にアルバムを出したようなんですけれど、日本未入荷。 早速オーダーしてみました。 う~ん、さすが川瀬さんが推薦するだけのことはある、本格派のバンドですね。...
View Articleハイランドと東欧を繋ぐバグパイプ ブリッド・チェインビョール
スモールパイプス(小型バグパイプ)の持続するドローンのディープな音色に、 金縛りとなってしまう深淵な音楽。これを演奏しているのが、 まだハタチの女性だというのだから、驚かされます。 ブリッド・チェインビョールは、スカイ島の音楽一家に育ったパイプ奏者。 16年にBBCラジオ2のヤング・フォーク・アワードを受賞、 翌17年にはスコッツ・トラッド・ミュージック・アワードの新人部門に...
View Articleヨイクの伝統の呪縛から放たれて ヴィルダ
ヨイクのシンガーとアコーディオンの女性デュオのアルバム。 ヨイクをコンテンポラリーなサウンドで歌うアーティストは、 アリ・ボイネはじめいろいろ聞いてきましたけれど、 どれも<極北のエスニック音楽>といった作り物ぽさが拭えなくて、 二の足を踏んできたのが正直なところ。 でも、この二人はちょっと印象が違いました。 まず、ヨイクのミスティックな面を誇張していないのが、いい。...
View Articleあれから22年 イライザ・カーシー
うぉ~、この大物感、ハンパないね。 もはや父マーティン・カーシー、母ノーマ・ウォーターソンの名前を出さずとも、 イングリッシュ・フォークのヴェテランと肩を並べる貫禄が備わった、イライザ・カーシー。 新作は原点回帰ともいうべき、直球勝負の伝統音楽アルバムです。 オープニングの曲で、ハンマー・ダルシマーの響きを鈍くしたような音色に、...
View Article前半フュージョン/後半キューバン・ジャズ エル・コミテ
取り上げようか、やめようか、ちょっと迷ってたんですけど、 なんだかんだよく聴いているんだから、やっぱ書いておこうかという気になりました。 キューバ新世代ジャズのグループ、エル・コミテのデビュー作。 ツイン・ピアノに2管の7人編成、全員キューバ人ですが、 リリース元はフランスのレーベル。 「超絶のキューバン・ジャズ」なる触れ込みで買ったものの、...
View Articleアンゴラのソウルフルなアーバン・ポップ ヨラ・セメード
アンゴラのキゾンバ・シンガー、ヨラ・セメードの前作“FILHO MEU” は、 アフロ・ズークの亜流と受け止められがちなキゾンバのイメージを払しょくする、 一大傑作でした。 https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-09 ポルトガル語圏アフリカとフレンチ・カリブの多様な音楽要素をミクスチャーした手腕が、 それまでのキゾンバにない高度な洗練を遂げていて、...
View Articleプータイのラム モンルディー・プロムチャック
10年以上前、たった1枚見つけたCDで、 トリコとなったモンルディー・プロムチャック。 モーラムの伝統的な歌唱法をしっかりと備えた人で、 太く芯のあるコブシ回しの絶妙さに、いっぺんでマイってしまいました。 当時どういう人なのか調べるも、手がかりがなく、 前川健一さんの『まとわりつくタイの音楽』に書かれた、 わずか6行の短い紹介が、ゆいいつの日本語情報でした。...
View Articleモダン・フジの課題 スレイモン・アラオ・アデクンレ・マライカ
ナイジェリアから誕生したアフロビーツは、 目まぐるしくシーンが動く、今もっとも生きのいいジャンルへと発展し、 他のアフリカ諸国や欧米にまで、グローバルな支持を広げています。 それに比べたら、ここ十年来音楽性が停滞したままのフジなど、 もう完全に無視して構わないっていう気分になろうというもの。 評判の良かったスレイマン・アラオ・アデクンレ・マライカの新作を、...
View Article初期フジに接近したスピード感あるサカラ オライウォレ・イショラ
ジュジュ化していくフジにいまさら変革を求めるより、 いっそのことサカラの新人に期待を寄せた方が、実りは大きいのかも。 そんなことを思わせる作品に出くわしました。 サカラなんてすたれた音楽に、 いまさら新人が登場することななんてないと思っていたら、 いやあ、出てくるんですねえ。まだまだサカラ、生き延びています。 講談の神田松之丞みたいなものかしらん。...
View Articleナイジェリアのヘップ・キャットが残したトランペット・ハイライフの傑作 ジール・オニイア
ジール・オニイアのリーダー作なんて、あったんですか! うわあ、まったく知りませんでした。これは驚きのリイシューです。 ジール・オニイアは、ナイジェリアン・ハイライフの巨匠 ボビー・ベンソンのジャム・セッション・オーケストラでキャリアをスタートした、 ナイジェリアの名トランペッターの一人。 ボビー・ベンソンのもとから巣立ったトランペッターに、...
View ArticleナイジェリアとUKが共振するバンクー・ミュージック ミスター・イージー
アフロビーツの新人、ミスター・イージーの新作は、 ミックステープ“LIFE IS EAZI” の続編。 前作の「アクラからレゴス」から今作は「レゴスからロンドン」と、 いまも旅の途中にあるようです。 https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-06-12 冒頭の短いイントロが、クラシックな香りのハイライフで、...
View Article繊細にして豪胆なギター・トリオ プレストン・グラスゴウ・ロウ
CDショップのジャズ・コーナーであれこれ試聴していたところ、 まるでシュミじゃないサイケなジャケットのCDに、ピンとくるものがありました。 全然知らない人でしたけれど、キレのあるコンテンポラリー・ジャズ・ギターに、 こりゃあいい、と買ってみたところ、家に帰って聞いてみれば、ええぇ~? まるで違うエレクトロな音楽が飛び出し、ビックリ。 なるほど、これならジャケどおりだわなと、ひとりごち。...
View Article梅雨寒にジャジー・ヒップホップ ザ・デリ
ぜんぜんお日様が顔を見せませんねえ。 7月に入ったら、夏どころか季節が逆戻りしたような梅雨寒になってしまって、 職場で半袖シャツを着てるのがぼくだけで、一人クールビズかよという、 恥ずかしいことになっています。 まあ、通勤でウォーキングするぶんには、ぜんぜん寒くないし、 本人的にはノー・プロブレムなのではありますが。 6月までせっかく夏気分の音楽でウォ-キングしてたんですけれど、...
View Article季節はずれのクリスマス・アルバム ジュリア・ブトロス、マジダ・エル・ルーミー
ジュリア・ブトロスのクリスマス・アルバムが12年に出ていたんですね。 アラブのポップスのサイトを眺めてたら、偶然に見つけちゃって、大あわて。 いやぁ、これまでぜんぜん気付かなかったなあ。 あれ、13年にはマジダ・エル・ルーミーまで、 クリスマス・アルバムを出してるじゃないですか。 こりゃなんたることかと、レバノンのお店に早速オーダー。 昨年ヒバ・タワジのクリスマス・アルバムを、...
View Articleタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの先達 タラフル・ディン・クレジャニ
写真家の石田昌隆さんが、00年12月にルーマニアのクレジャニ村を訪れ、 タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの写真を撮った時のことを書かれた フェイスブックの記事を読んでいて、気になる記述を見つけました。 ベルギーの作曲家ステファーヌ・カロがタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを発見したのは、 88年のオコラ盤『クレジャニ村の楽師たち』がきっかけでしたけれど、...
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