写真家の石田昌隆さんが、00年12月にルーマニアのクレジャニ村を訪れ、
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの写真を撮った時のことを書かれた
フェイスブックの記事を読んでいて、気になる記述を見つけました。
ベルギーの作曲家ステファーヌ・カロがタラフ・ドゥ・ハイドゥークスを発見したのは、
88年のオコラ盤『クレジャニ村の楽師たち』がきっかけでしたけれど、
それよりもずっと昔に、ルーマニアの国営レコード会社のエレクトレコードが、
クレジャニ村の楽師たちの音楽を録音していたと、石田さんが書かれていたんですね。
その録音は49年と52年に行われたもので、07年になってその音源が
ルーマニアの民族音楽学者マリアン・ルパシュクによって編集され
CDリイシューされたとあり、そのCDタイトルも書かれていました。
こんな記事を読んだら、手に入れるっきゃないじゃないですか。
さっそくルーマニアから取り寄せましたよ。
届いたのは、簡素なペーパー・スリーヴのCD。
音楽学者がコンパイルして国営レーベルから出したものだというから、
てっきり充実した解説付きのCDが届くとばかり想像していたので、これにはがっかり。
というわけで、文字情報は得られませんでしたが、
ハイドゥークスの先人たちの音楽を聴くことができました。
タラフ・ドゥ・ハイドゥークスとまったくかわらない、
祝祭感いっぱいの奔放な演奏ぶりが圧巻です。
生命力あふれる歌いぶりに、なるほどハイドゥークスは
この村の伝統を忠実に継承してきたんだなということが、よくわかります。
じっさい、このCDに収録された歌曲の‘Săbărelu’ は、ハイドゥークスの94年作
“HONOURABLE BRIGANDS, MAGIC HORSES AND EVIL EYE” で聞けるほか、
高速ダンス・チューンの‘Brâu’ も98年作“DUMBALA DUMBA” で聞け、
編成の違いがあるとはいえ、その演奏ぶりに半世紀近い開きを感じさせないのだから、
スゴイです。強烈なスピード感は、昔からずっとそうだったんですねえ。
音質がめちゃくちゃ良いせいで、なおさら古さを感じさせません。
91年のデビュー作でタラフ・ドゥ・ハイドゥークスに圧倒されたぼくには、
その後世界各国で引っ張りだこになるにつれ、
超絶技巧を売り物するケレン味が強くなっていくのに、食傷気味となりました。
いまでもタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの90年代のアルバムに一番愛着があるせいか、
このタラフル・ディン・クレジャニの演奏は、ぼくにはとても美味であります。
Taraful Din Clejani "CLEJANI DE ALTĂDATĂ 1949-1952" Intercont Music no number
Taraf De Haïdouks "HONOURABLE BRIGANDS, MAGIC HORSES AND EVIL EYE" CramWorld CRAW13 (1994)
Taraf De Haïdouks "DUMBALA DUMBA" CramWorld CRAW21 (1998)