ナイジェリアから誕生したアフロビーツは、
目まぐるしくシーンが動く、今もっとも生きのいいジャンルへと発展し、
他のアフリカ諸国や欧米にまで、グローバルな支持を広げています。
それに比べたら、ここ十年来音楽性が停滞したままのフジなど、
もう完全に無視して構わないっていう気分になろうというもの。
評判の良かったスレイマン・アラオ・アデクンレ・マライカの新作を、
試聴する気すらなれずスルーしてたのも、そんなせいなのでした。
深沢美樹さんがミュージック・マガジンに紹介されていたのを見て、
さすがに試聴くらいはしておくべきだったかと思いつつ、
その後再入荷もなく、記憶の彼方になっておりました。
で、ようやく1年遅れで聴いてみましたよ。
なるほど確かにこれは、ジュジュのサウンドを取り入れたモダン・フジとしては、
傑作のひとつといえます。
ふにゃふにゃと軟弱な音を鳴らすソプラノ・サックス、ちゃらいシンセ、
アルペジオをテキトーに垂れ流すギターがモダン・フジの三大汚点ですけれど、
ここではパーカッション・アンサンブルのみのパートと、
サックスやスティール・ギターなど、
西洋楽器と合奏するパートのバランスもよく、
ジュジュのリフを取り入れたアレンジもこなれています。
なによりパーカッション・アンサンブルの充実ぶりが、聴き応え十分です。
トーキング・ドラムのサカラが、重低音の強烈なアクセントを打ち込み、
畳みかけるように疾走するパーカッション陣と、
トラップ・ドラムの派手なフィル・インが、すさまじいグルーヴを生みだしています。
野性味あるスレイモンのスモーキー・ヴォイスも、
激しくシャウトもすれば、一転じっくりコブシを利かせるなど、硬軟使い分けも鮮やか。
フジもせめてこのレヴェルの作品が当たり前くらいになってくれないと、
昔のように熱心に追っかける気には、もうなれないなあ。
音楽的にも、ジュジュのモノマネからいい加減脱却して、
ヒップホップやビート・ミュージックへ接近して、
もっと大胆に変革してくれたらと願っているんですが。
その課題をクリアするうえでキーとなるのは、
フジが当初持っていたストリート感を、いかに取り戻すかなんじゃないのかなあ。
フジのミュージシャンも、いまやお金持ちのパーティを中心に稼ぐようになり、
支持層がジュジュのそれと変わらなくなっているじゃないですか。
かつての不良が、いつのまにか金持ちのおべっか使いになったのが、
フジ堕落の一因と考えるのは、当たらずといえども遠からじのはず。
貧しい若者たちのストリートのコンペティションから誕生した原点に、
もう1度フジが立ち返ることができれば、
この停滞を打破できるきっかけが生まれるように思うんですけれども。
そんなのは、ロックに不良性を求めるのと同じアナクロニズムなんですかねえ。
Sulaimon Alao Adekunle Malaika "GOLDEN JUBILEE" Golden Point Music no number (2018)