Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1333

ヒップホップに娘を思う 泉まくら

Image may be NSFW.
Clik here to view.
泉まくら  as usual.jpg


この人に興味を持ったのは、15年の『愛ならば知っている』のジャケットがきっかけ。
大島智子のアートワークが、下の娘とオーヴァーラップして、妙に心にひっかかりました。
どんな人なのかとチェックしてみると、
「普通の女の子が半径数メートルで起こったことを
リリックにしたゆるふわラップ」とのこと。

聴いてみると、時にメロディを歌うパートもあるものの、
ポエトリー・リーディングのようなラップは、淡い語りのよう。
「ゆるふわラップ」というのも言い得て妙だなと思いましたけれど、
つぶやくようなフロウには、しっかりとしたビート感が宿っていて、とても自然に聞けます。

この「自然に聞ける」というところがキモで、語りを音楽的に聞かせるには、
相当な技量が必要だということを、再認識させられます。
歌謡曲の朗読とか、フォークの語りには、さんざん赤面させられてきましたからねえ。

語りを自然に聞かせるには、かつては節回しやこぶし使いというスキルを必要とされたのが、
ヒップホップの時代では、新たにビートに言葉をのせる
リズムの咀嚼力が求められるようになり、それを若い世代が獲得してきたんですね。

ヒップホップというビートの利いた音楽でありながら、
昔のフォークみたいなリズム感のなさを露呈するラッパーがたまにいるのは、
リズムの咀嚼力が足りないからでしょう。

そう考えてみると、泉まくらのラップを「ゆるふわ」と表現するのは、
いささか彼女のスキルを軽んじているようにも思え、
若い日本人ミュージシャンが持つ高度なリズム咀嚼力を、
彼女もまた備えていることがわかります。

トラックメイクも、泉まくらの音楽世界を過不足なく、簡潔に表現しています。
cero に通じるネオ・ソウル~ヒップホップを横断したサウンドで、
どこか都市の郊外感をイメージさせるところも、cero と同じ匂いがしますね。

昨年、下の娘が家を出て一人暮らしを始めてから、
「どうしてるかなぁ~」とふと思い起こすことが増えました。
泉まくらを聴いていると、ますますそんな思いが募ります。

泉まくら 「as usual」 術ノ穴 XQND1012 (2019)

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1333

Trending Articles