めったに出会えない、ぼく好みのジャズ・ヴォーカリストを見つけました。
温かみのあるふくよかな声がいいんだなあ。
素直な発声で、中低音から高音までトーンを変えずにムラなく歌えるところは、
最近の女性歌手に少なくなった資質ですね。
高音になると、キンと立つ女性の歌手がやたらと目立つにようになったのって、
いつ頃からでしたっけ。日本のアイドル歌手に限った話でなく、全世界的に
一定の年齢以下の女性歌手に共通して聞かれるようになったこの傾向、
完全に世代的なものみたいですけれど、苦手なんですよねえ。
語尾をハネるような歌い口とか聞くと、もうダメ。
で、そんな歌い口とは無縁の歌い手がこのジャネット・エヴラ。
声を張ることはおろか、わずかに強いアクセントもつけず、ひたすら穏やかな歌いぶりで、
高音域をふわーっとした霞のような歌い方をして、夢見心地に誘います。
イングランドのグロスター出身だそうですが、現在はアメリカのセント・ルイスで活動中の
シンガー・ソングライターで、ベーシストでもあるんですね。
ジャネットの書く曲がまたシャレているんです。
ボサ・ノーヴァやラテンのテイストを湛えたロマンテッックな佳曲揃いで、
明るく爽やかな、昼間の窓辺が似合うジャズ・ヴォーカルです。
マイケル・フランクス、スティーヴン・ビショップあたりが好きな人にはぴったりでしょう。
これがデビュー作で、自主制作とのこと。
穏やかな休日の午後、公園の野外音楽堂でライヴを観てみたい人です。
Janet Evra "ASK HER TO DANCE" no label no number (2018)