ラテン/カリブ音楽オールタイム・アルバム・ベスト30
11月号のラテン/カリブ音楽オールタイム・アルバム・ベストも、 個人史を基準にして、愛着のあるレコードでセレクトしたら、 ものの見事に古いもんばっか並んじゃいました。 でも、ベスト100の1位だって『ライヴ・アット・ザ・チーター』なんだから、 そう責められるセレクトでもないと思いますけれども。 ブラジルもラテンも、過去の遺産がデカすぎて、 新しい作品が太刀打ちできないのは、致しかたないですね。...
View Article2010年代オールジャンル・アルバム・ベスト30
12月号の2010年代オールジャンル・アルバム・ベストは、 2020年代に活躍を期待する音楽家、 または音楽シーンという未来志向の基準でセレクトしたんですが、 なんと30タイトルのうち、28タイトルが死に票という惨憺たる有様。 1位に選んだエディ・トゥッサの“GRANDES MUNDOS”を、 「別のタイトルでも可」としたので、かろうじて死に票を避けられたものの、...
View Article穏やかな休日の午後に ジャネット・エヴラ
めったに出会えない、ぼく好みのジャズ・ヴォーカリストを見つけました。 温かみのあるふくよかな声がいいんだなあ。 素直な発声で、中低音から高音までトーンを変えずにムラなく歌えるところは、 最近の女性歌手に少なくなった資質ですね。 高音になると、キンと立つ女性の歌手がやたらと目立つにようになったのって、 いつ頃からでしたっけ。日本のアイドル歌手に限った話でなく、全世界的に...
View Articleアラブ古典歌謡とスーフィー詩を歌う愛国主義者 ジャヒーダ・ワハビ
アラブのCDで、アラビア語より英語のアルファベットが、 これほど目立つジャケットも珍しいですね。 レバノンの古典歌謡歌手、ジャヒーダ・ワハビの新作です。 すでにヴェテランといえる歌手で、今回も自身のレーベルからのリリースです。 ウム・クルスームを尊敬し、もし歌手にならなければ軍人になったという彼女。 16歳の時、内戦で軍人だった父親を亡くし、 ジャヒーダは愛国主義者になったといいます。...
View Articleクレオール・ケイジャンの伝統と現代 ロスト・バイユー・ランブラーズ
戦前ケイジャンをそのまま再現するような演奏ぶりなのに、 ちっとも古臭くないどころか、すごくヴィヴィッドなサウンドに いつも目を見開かされ思いのする、ロスト・バイユー・ランブラーズ。 フィドルのルイ・ミショーとアコーディオンのアンドレ・ミショーの兄弟を中心に、 パワフルでディープな伝統ケイジャンを奏でるグループです。 ポピュラー音楽の基礎となったカリブ海発祥のリズム「カリンダ」をタイトルにした...
View Article生きているブラック・クレオールの伝統 ジョー・ホール
ジョー・ホールもまた、ゴリゴリの伝統派といえるクレオール・ミュージシャンです。 国会図書館にも録音を残す祖父のクレメント“キング”ネッドからアコーディオンを学び、 ボア・セック・アルドワンやマーク・サヴォイ、ノートン・シミエンといった 伝説的な先達との共演を通して、自身のザディコを深めてきた人ですね。 相棒のフォレスト・フーヴァルのフィドルとのコンビネーションも磨きがかかり、...
View Articleラップ・フォルクロリコ・パレンケロ コンビレサ・ミ
こりゃあ、スゴイ! コロンビアの逃亡奴隷の解放区、パレンケの末裔にあたる若者たちが、 パレンケの言語とリズムでヒップホップした大傑作! カルタヘナ南東の丘陵地帯にあるパレンケ・デ・サン・バシリオは、 人口約3,500人の村。かつては数多くあったパレンケも、スペイン人に破壊され、 現存する村はここただ一つとなってしまったものの、...
View Articleモンテマリアナのガイテーロ ソン・デ・ラ・プロビンシア
コロンビアからもう1枚嬉しいアルバムが届きました。 6人組のソン・デ・ラ・プロビンシアは、 縦笛ガイタ2本と打楽器3台でオーセンティックなクンビアを聞かせるグループ。 メンバーの出身はさまざまのようですが、ガイタの二人は、 クンビアを生んだマグダレーナ川に近いカルメン・デ・ボリバルだそうで、 北部山岳地域のモンテス・デ・マリアで12年に結成されたそうです。...
View Article肩の力が抜けパワー・アップ イェミ・アラデ
ティワ・サヴェイジとアフロビーツのクイーンの座を争う、 イェミ・アラデの4作目を数える新作です。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-06-19 ビヨンセの『ライオン・キング:ギフト』にフィーチャリングされて、 ますます鼻息を荒くしているイェミですけれど、 新作でもナイジェリアを代表するポップ・スターらしい貫禄を示しているのは、...
View Article本領発揮のファンキー・ハイライフのヴェテランたち パット・トーマス、ジェドゥ=ブレイ・アンボリー
カムバックしたファンキー・ハイライフ時代のヴェテランたちが、揃いも揃って絶好調。 昨年のエボ・テイラーのアルバム”YEW ARA” もそうでしたけれど、 立て続けに届いたパット・トーマスにジェドゥ=ブレイ・アンボリーの新作が いずれも快作で、もう嬉しいったらありません。 パット・トーマスの4年ぶりとなるカムバック第2作は、 欧米受けするアフロビートの要素を排し、本来のパット・トーマスらしい...
View Articleラズジャズ アイチャ・ミラッチ
シンと冷える冬の夜、心落ち着けて聴くことのできる女性ヴォーカルを見つけました。 中音域のふくよかな発声で、ひそやかに歌うヴォーカルに引き込まれます。 時に軽やかにハネる声が氷上のバレリーナを連想させる、静謐なジャズです。 トルコ東部黒海沿岸に暮らす少数民族ラズ人と 南コーカサスのジョージアの少数民族ミングレル人の伝統音楽をベースとしたジャズ作品。...
View Article伝統とポップで齟齬をきたす発声と歌い口 カロリーナ・ゴチェヴァ
やっぱりこのオーケストレーションの魅力には、抗しがたいですね。 北マケドニアの元アイドル・シンガー、カロリーナ・ゴチェヴァのルーツ還り第3作。 だいぶ前にルーツ還り第1作のアルバムを取り上げたこともありましたけれど、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-05-06 一聴、曲もプロダクションも極上なんだけど、...
View Articleサザン・ソウルのオールド&ニュー ヴィック・アレン、J=ウォン
寒くなってくると、サザン・ソウルのアルバムが恋しくなります。 ウィリー・クレイトン、オマー・カニングハム、サー・チャールズ・ジョーンズなどの アルバムに手が伸びる季節なんですけれど、 この冬は、ヴィック・アレンとJ=ウォンの2枚でキマリ。 2枚連続聴きで、仕事から帰路のヘヴィ・ロテ盤となっています。 二人ともミシシッピ、ジャクソン出身という、生粋のサザン・ソウル・マン。...
View Articleサハラウィのポリサリオ・ロック エル・ワリ
これは強烈! いきなり飛び出す女性シンガーの叫ぶような ハイ・トーン・ヴォーカルにノック・アウトを食らいました。 西サハラのグループ、エル・ワリが、94年にベルギーへツアーした時に レコーディングした幻のCDの復刻です。 幻というのは、ごく少量しかプレスされず、オリジナルの音源が所在不明だったためで、 海賊カセットがサハラ一帯ばかりでなく、西アフリカに広く出回ってヒットを呼び、...
View Article夢見るサンバ女主人 イヴォーニ・ララ
うわぁ、このCD化は嬉しいなあ。 女主人<ドナ>の名で知られるイヴォーニ・ララが85年に出したソン・リブリ盤。 ドナ・イヴォーニ・ララの数多い作品のなかで、 ぼくにとっては一番愛着のあるアルバムです。 87年にRGEからジャケットを変えた再発LPが出て、 翌88年に日本でCD化されたんですけれど、 オリジナル・ジャケットでのCD化はこれが初。 やっぱこの<夢見るおばちゃん>ジャケじゃなくっちゃあ。...
View Article職人芸のバランソ パプジーニョ
DJユースのレア・グルーヴとして、その筋には有名なアルバム。 DJ方面のディスク・ガイドではよく目にするかわり、 ブラジル音楽ファンの間では、あまり知られていないレコードじゃないですかね。 かくいうぼくも、今回のCD化で初めて聞いたんであります。 誰のアルバムかと言うと、コンジュント・ソン4を率いたほか、 ルイス・ロイ・キンテートで活躍したトランペット奏者、パプジーニョの70年作です。...
View Articleウェルカム・バック ソーサーダトン
ミャンマーの伝統ポップスが花盛り。 メーテッタースウェ、キンポーパンチ、トーンナンディといった 十代の女性歌手たちが活躍して、溢れんばかりの若い才能をはじけさせているのは、 シーンに活気があるなによりの証拠ですね。 その一方、気になっていたのが、ソーサーダトンの近況が伝わらなくなってしまったこと。 00年代から10年代にかけて、ミャンマーの伝統ポップは、...
View Articleロックでたどるマロヤの古層 トランス・カバール
マロヤ・ロック! う~ん、ありそうで、なぜかこれまでなかったコンセプトのグループですね。 アシッド・フォークやエレクトロでマロヤをモダン化した、 アラン・ペテロスやジスカカンといった先人はいましたけれど、 ここまでマロヤをストレイトにロック化したグループは、初めてじゃないかなあ。 トランス・カバールは、 ギター、ベース(コントラバス)、ドラムス、カヤンブによる4人組。...
View Articleエクスペリメンタル・ポップの奇才 長谷川白紙
とてつもない才能が現れましたよ! 「長谷川白紙」という人を食ったステージ・ネームは、 「長谷川博士」の変換まつがいなんすかね? 冗談はともかく、これが20歳の作品というんだから、もう、頼もしすぎる。 日本のポップス・シーンにパラダイム・シフト起こす、 異能のシンガー・ソングライターの登場です。 待ってましたよ、こういう有無を言わせぬ圧倒的な才能が出てくるのを。...
View Article世界に嵐を呼ぶドラマー 石若駿
長谷川白紙を試聴して、不覚にも店頭でフリーズしてしまったワタクシでしたが、 その日のお目当ては、石若駿の新プロジェクトの新作だったのです。 こちらはすでに先行シングルのMVを観ていたので、 石若駿が存分に叩きまくっていることは、承知のうえ。 発売日をめっちゃ楽しみにしていたのでした。 これまで石若がさまざまな名義で制作してきたリーダー作は、...
View Article