やっぱりこのオーケストレーションの魅力には、抗しがたいですね。
北マケドニアの元アイドル・シンガー、カロリーナ・ゴチェヴァのルーツ還り第3作。
だいぶ前にルーツ還り第1作のアルバムを取り上げたこともありましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-05-06
一聴、曲もプロダクションも極上なんだけど、
女性歌手でぼくがもっとも苦手とする発声と歌い口にウンザリして、
1回聴いただけで放り出してしまいました。
その後何度か聴いてみたものの、何度トライしてもカロリーナの歌い口が、
前にジャネット・エヴラの記事で書いた、全世界的にはびこる
現代の女性シンガーの歌いぶりそのもので、ぼくには耳ざわりでしょうがないんです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-11-23
それほど苦手な声をガマンしても、売却用の棚に放り込まず、
繰り返し聴きたくなるのは、ニコラ・ミチェフスキーの見事なアレンジなのでした。
もちろんスラヴとロマが混淆した北マケドニアらしい歌謡性をたっぷりとたたえた
抒情味溢れる曲の良さもあってこそで、本作の作編曲は完璧と言えるでしょう。
泣かせる曲満載の、胸に迫るメロディにやられます。
カヴァル、タンブーラ、カーヌーンなどの民俗楽器を効果的に配し、
クラリネットやアコーディオンでバルカンのサウンドを演出しながら、
どこまでも洗練されたアレンジの手さばきに、ポップス職人の腕を感じますねえ。
冒頭1曲目の、ダミャン・ペイチノスキの流麗なギター・ソロに続く、
弦セクションのパッセージなど、圧巻です。
とまあ、サウンドに耳を集中して、
カロリーナの自意識の立つ歌を意識しないように聴いているんですが、
ホンネ言うと、このオケのまま別の歌手に差替えてくれたらと思わずにはおれません。
自意識を消して歌に殉じることのできる、トラッド系の歌手が歌ってくれたらなあ。
ま、もっともこんな融通の利かない耳は、オヤジ特有のものだと思うので、
若い人ならこの歌声は絶賛されるんでしょう。
マリーザ・モンチの歌に癒されるという人が大勢いるくらいですから、ハイ。
Karolina Gočeva "IZVOR" Croatia CD6084050 (2019)