こりゃあ、スゴイ!
コロンビアの逃亡奴隷の解放区、パレンケの末裔にあたる若者たちが、
パレンケの言語とリズムでヒップホップした大傑作!
カルタヘナ南東の丘陵地帯にあるパレンケ・デ・サン・バシリオは、
人口約3,500人の村。かつては数多くあったパレンケも、スペイン人に破壊され、
現存する村はここただ一つとなってしまったものの、
ユネスコの世界遺産にも登録されて、その存在が広く知られるようになりました。
奴隷制、植民地時代、そして今も続く軍やゲリラとの武力紛争と、
400年にわたるコロンビアの暴力の歴史にさらされてきたサン・バシリオの住民にとって、
コミュニティを維持することが、パレンケの文化的一体性を保つことにもなったんですね。
ラテン・アメリカの中でアフリカを作り上げるというパレンケの目標に向かって、
最前線にいるグループが、彼らコンビレサ・ミなのではないでしょうか。
特殊仕様の変型ジャケットに収められた
ブックレットのメンバー9人の写真が、グッときます。
メンバーのファッションやヘア・スタイルからは、同時代性のセンスとともに
闘いの歴史を経てきた祖先から受け継いだ抵抗の精神が、
びんびんと伝わってくるようじゃないですか。
居並ぶメンバーの立ち姿の自信に満ち溢れた表情からも、彼らの気概が伝わってきますよ。
マリンブラの弦をはじく低音が、ぐいんぐいんとリズムを前に押し出し、
伝統的な打楽器が叩きだすアフロ系のリズムにのせて、
9人のメンバーのラップが行きかうビートが快感です。
高中低音バランスのとれたパーカッション・アンサンブルは、
奥行きがありつつ十分なスペースがあり、
自在にリズムを変えていく合間を縫うようにラップのフロウが泳いでいくところは、
コール・アンド・レスポンスの歌とコーラス以上に、伝統的です。
ミュージック・マガジン11月号の
「ラテン/カリブ音楽オールタイム・アルバム・ベスト」で、
未来の希望につながるラテン音楽がぜんぜん見当たらないとうなだれましたが、
ようやく出会えましたね。今年のラテン・ベスト、文句なしでっす!
Kombilesa Mi "ESA PALENKERA" Kombilesa Mi no number (2019)