カムバックしたファンキー・ハイライフ時代のヴェテランたちが、揃いも揃って絶好調。
昨年のエボ・テイラーのアルバム”YEW ARA” もそうでしたけれど、
立て続けに届いたパット・トーマスにジェドゥ=ブレイ・アンボリーの新作が
いずれも快作で、もう嬉しいったらありません。
パット・トーマスの4年ぶりとなるカムバック第2作は、
欧米受けするアフロビートの要素を排し、本来のパット・トーマスらしい
ファンキー・ハイライフのスタイルを取り戻していて、快哉を叫んじゃいました。
オルガンを軸にしたバンド・サウンドに、野性味を増したホーンズのブロウと、
前作よりもぐっと聴き応えが増しました。
前作でもパットらしいハイライフをやっていたとはいえ、
ゲストのトニー・アレンに3曲叩かせていたように、
アフロビートのニュアンスを入れたがるレーベル側のたくらみが、ウザかったんですよねえ。
カムバックした御大たちに、自分たちのハイライフのスタイルでなく
アフロビートをやらせるのに、苦虫をつぶす思いで眺めてきたので、
今作の方向性は嬉しい限り。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-06-21
欧米人プロデューサーのハイライフ音痴ぶりと、
アフロビート禍は本当にジャマくさいと思ってきましたが、
ミスター・ボンゴなどがファンキー・ハイライフ時代のオリジナル盤の復刻を進めたことで、
ずいぶんとハイライフへの理解も進んだんじゃないですかね。
泥臭いハイライフのメロディにもリスナーがなじんだところで、
パット・トーマスの本領を発揮した本作の土臭さにファンがついてこれたら、
オーライでしょう。
ジャケットも往年のガーナイアン・マナーなデザインで、嬉しくなります。
そして、前作“KETAN” が絶賛されたジェドゥ=ブレイ・アンボリーの2年ぶりの新作も
快調そのものです。アフロ・ソウル色の強いジェドゥのファンキー・ハイライフは、
もとよりアフロビートと親和性が強く、欧米プロデューサーの意向などではなく、
ジェドゥ本来の持ち味によってアフロビートなニュアンスが加味されている点は、
前作同様です。今回ももちろん、ガーナ録音。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-05-29
ジャジーな味わいのジェドゥのラップとポエトリーを交えたヴォーカルが、超クール。
ジェドゥのヴォーカルの低音の魅力は、リントン・クウェシ・ジョンソンと双璧ですね。
タイトに引き締まったアフロ・ファンク・サウンドとも、抜群の相性の良さです。
ハードエッジなアフロビートあり、トーキング・ドラムが活躍するアフロ・ファンクあり、
ホーン・セクションがトロピカル・ムードを盛り上げる明るいメロディのハイライフあり、
E・T・メンサーなどハイライフの巨人たちを称えるラップが入る曲あり
(このラッパー、誰?)、実にヴァラエティに富んでいます。
ジェドゥの新作は文句なしのカッコよさで、若い人にも支持されることウケアイですけど、
一聴朴訥としたパット・トーマスのざっくりとした粗削りなハイライフの魅力にも、
気付いてもらえたら嬉しいですね。
Pat Thomas & Kwashibu Area Band "OBIAA!" Strut STRUT201CD (2019)
Gyedu-Blay Ambolley "11TH STREET, SEKONDI" Agogo AR131CD (2019)