長谷川白紙を試聴して、不覚にも店頭でフリーズしてしまったワタクシでしたが、
その日のお目当ては、石若駿の新プロジェクトの新作だったのです。
こちらはすでに先行シングルのMVを観ていたので、
石若駿が存分に叩きまくっていることは、承知のうえ。
発売日をめっちゃ楽しみにしていたのでした。
これまで石若がさまざまな名義で制作してきたリーダー作は、
歌ものや作曲家としての作品ばかりで、もどかしく感じていたファンも多かったはず。
いまさら言うまでもないことですけれど、日本のジャズという枠をとっくに飛び越えて、
ワールド・クラスのドラマーに成長した石若駿ですからねえ。
新たに立ち上げた Answer to Remember というプロジェクトの新作、
思う存分ドラムスを叩きまくる石若が堪能できる、もってこいのアルバムに仕上がりました。
すでに先行シングルで聴いていた KID FRESINO をフィーチャーした‘Run’からしてスゴイ。
7拍子で始まる実験的なトラックは、トラップのようでもあり、
生ドラムスでこんなことができてしまうんだという驚きに満ち満ちています。
途中から4拍子に変わったかと思えば、また7拍子に戻って、
5拍子に着地するという複雑な展開は、まさにめくるめくといった構成で、
このトラックでなんなくラップしてみせる KID FRESINO も圧巻です。
高いところでハイハットを細かく鳴らしているサウンドが、すごく刺激的ですねえ。
前の長谷川白紙の『エアにに』で叩いていたトラックでも、
ハイハットをよれたリズムでキックと同期させずに叩くという、
人間技と思えぬドラミングを披露していましたっけ。
このアルバムでは、過剰なくらい音を足してサウンドを組み立てていても、
ドラムスが前景化せず、歌やメロディを表に出しているところがキモでしょうね。
ドラムスはバックでぶわーっと大きく鳴っているという構図が、
どのトラックでも徹底されています。
歌もラップもドラムもガツンといくところで、
ちゃんとイってる感がスゴくって、めちゃくちゃ爽快です。
超絶テクニックをガンガン押し出した生々しいサウンドがフルに鳴っていて、
ドラマーのリーダー作としては理想的なサウンドといえます。
いやぁ、去年のクリス・デイヴの初リーダー作が霞んじまったなあ。
世界に嵐を呼ぶドラマー、ここにありですね。
Answer to Remember 「ANSWER TO REMEMBER」 ソニー SICL287 (2019)