今年もまたトゥン・ズオンとグエン・レのアルバムを聴く季節がやってきました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-04-12
個人的な冬の定盤は、いろいろありますけれど、
これは比較的最近になって仲間入りしたアルバム。
トゥン・ズォンのミュージカル調の歌い上げるヴォーカルに
最初は抵抗もあったんですけれど、今ではすっかり慣れて、
そのドラマティックなヴォーカル表現を楽しめるようになりました。
このアルバムを聴いたのは、アルバム名義にギタリストのグエン・レの名があったからで、
トゥン・ズオンはこのアルバムで初めて知りました。
グエン・レと共同名義になっているとおり、このアルバムの聴きどころは、
グエン・レがクリエイトしたハイブリットなサウンド・プロダクションで、
もちろんグエン・レのギターも、冴えたソロを随所で聞かせています。
これを聴き返していて、そういえばグエン・レの新作を聴き逃していたのを思い出し、
今年2月に出た“STREAMS” をジャズCDショップで買ってきました。
レーベルは、いつものドイツのACT。92年にACTが設立されて、
最初に独占契約を結んだアーティストが、グエン・レだったんですよ。知ってました?
本作は、クラシック畑の打楽器奏者としても活躍する
ヴィブラフォン奏者のイリヤ・アマールに、カナダ人ベーシストのクリス・ジェニングス、
アメリカ人ドラマーのジョン・ハッドフィールドとのカルテット。
9曲中7曲がグエン・レのオリジナルなんですけど、曲がすごくいいですね。
複雑な構成の曲が多いんですけれど、
メロディがちゃんとあって、アブストラクトにならない。
グエン・レのルーツであるヴェトナムらしい感性が、メロディに生かされています。
コンテンポラリー・ジャズのフォーマットを取っていますけれど、
イリヤ・アマールがヴェトナムの竹琴トルンを弾いている曲もあって、
ワールド・ジャズ的な響きを伴っているところは、グエン・レの作品らしいですね。
そしてなんといってもグエン・レの最大の魅力は、
きちっと構築された緻密なソロをとるところ。
探し弾き的なリックは、この人から絶対出てきませんね。そこがいいんだなあ。
かつてジミ・エンドリックスのトリビュート・アルバムを出したこともあるように、
ギンギンのロック・ギター・サウンドと、テクニカル・フュージョン的なフレーズを繰り出す
グエン・レの個性が円熟味を増したことを実感させる、充実の新作です。
Nguyên Lê Quartet "STREAMS" ACT 9876-2 (2019)