うわぁ、このCD化は嬉しいなあ。
女主人<ドナ>の名で知られるイヴォーニ・ララが85年に出したソン・リブリ盤。
ドナ・イヴォーニ・ララの数多い作品のなかで、
ぼくにとっては一番愛着のあるアルバムです。
87年にRGEからジャケットを変えた再発LPが出て、
翌88年に日本でCD化されたんですけれど、
オリジナル・ジャケットでのCD化はこれが初。
やっぱこの<夢見るおばちゃん>ジャケじゃなくっちゃあ。
最初にレコード店で手にした時、
ドナが松田聖子ぶってる!と吹き出したこと、よく覚えてます。
当時のサンバはパゴージ・ブームで、パーカッションが小編成となり、
メロディも歌いやすいシンプルなものとなっていた時代でした。
イヴォーニ・ララのこのアルバムも当時のトレンドに乗ったものとはいえ、
彼女の作風は変わることなく、むしろシンプルな編成になったことによって、
イヴォーニ・ララのサンバの魅力をぐんと浮き立たせて、成功作となったんですね。
久し振りに聴き返しましたけれど、やっぱり傑作ですね。
80年代サンバの代表作ですよ。
日本でCDが出たのと同じ年の7月に、イヴォーニ・ララは来日しました。
当時婚約中だった奥さんと一緒に観たんですけれど、
この日のライヴはとてもよく覚えています。
というのは、この日がものすごく暑い日で、
ライヴに行く前に、彼女の気分が悪くなってしまい、
近くの喫茶店で寝込んでしまったんでした。
こりゃ、とてもライヴは無理だなと思って、家に送っていこうとしたら、
少し休めば大丈夫だからと、しばらくそのまま待っていたところ、
楽になったから行けるという彼女の言葉に従って、
開演前ぎりぎりに入場したんでした。
会場は渋谷のクラブ・クアトロ。
たしかクアトロがオープンまもない頃で、ひょっとして初めて行った時だったかも。
立見だったので、彼女がまた具合が悪くならないかと、ヒヤヒヤしました。
フンド・ジ・キンタルの面々が先に登場して、何曲か歌って場を温めたあと、
ようやくドナ・イヴォーニ・ララが登場。
ドナがすごい巨体で、お付きの人間が介添えしてステージに上がり、
足元もおぼつかない様子なのには驚きました。
ステージ間近で観たせいか、前年のヌスラットよりも大きく見えたもんねえ。
隣の彼女の様子をちらちら横目で見やりつつ、正面のステージに目を向ければ、
ドナの歌もやや不安定で、ライヴ当初はどうなることやらだったのでした。
フンド・ジ・キンタルやダンサーとのかけあいによって、だんだんドナものってきて、
ヨロヨロと立っているのもおぼつかない様子だった最初とは打って変わり、
終盤では、軽やかにステップを踏んで踊り出すまでになったんでした。
ぼくも踊りながらはっと思い、隣の彼女を見れば、ステージに視線を送りながら、
満面の笑みを浮かべながら踊っていて、やれやれとほっとしたのでした。
そんな初めハラハラ、終わりニコニコのライヴでしたけれど、
こんなに太っていたら、命を縮めるだろうなと思ったものです。
ところがその後、イヴォーニ・ララはダイエットに成功して、別人のようにやせ細り、
<ドナ>の愛称がそぐわなくなるほどの体形に変身しましたね。
昨年天寿を全うした時は、御年96歳。
女性サンバ作曲家として、豊かなサンバ人生を送ったといえるんじゃないでしょうか。
Ivone Lara "IVONE LARA" Som Livre/Discobertas DBSL182 (1985)