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人力演奏で再現した80年代ポップ・ライ ナディム

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Nadim.jpg

ひさしぶりにイキのいいライを聞けました。
生のドラムスにダルブッカが重量感のあるロック・ビートを叩き出すんですけれど、
いやぁ、痛快ですねえ。
マイナー・レーベルのローカル作品は打ち込みに頼るのが一般的なので、
こんなに生演奏を全面に押し出したライは、長年聴いていなかった気がします。
レイヤーされたシンセの合間を縫うように、
エレクトリック・ギターとガスパ(葦笛)が存分に暴れ回っていますよ。

カルカベも加わる‘Daoui Galbi’ では、ストリングスやホーン・セクションまで起用する
ゴージャスさに、ちょっとびっくり。
続く‘Rebi Ki N'Dira’ では、ストリングス・セクションにウードも使っていて、
曲ごとにさまざまな工夫が施されています。
ロック調の‘Mme Amokrane’ では、アコーディオンが起用されていますね。

ラスト2曲は、エレクトロなリミックスを施した収録曲のヴァージョンと
インスト・ヴァージョンをボーナス的に置いています。
いやぁ、ローカル作品でこれだけ力の入ったプロダクションは、珍しいですねえ。
わずか33分という短さですけど、堪能しました。

いかにもヴェテランらしいオヤジ顔をした主役のナディムですけれど、
確か同じ名前のライ・シンガーのCDを持っていたはずと、
棚を探してみたところ、手元にあったのはもっと若いシンガーで、別人でした。
どうやらこちらのナディムは、かつてハレドとシェブ・マミが主演した97年のライ映画
“100% ARABICA” のサントラに1曲収録されていた人のようです。
ハレドを小粒にした感じの声もおんなじだし。

そのサントラでは、ビラルの曲を歌っていましたけれど、
本作はすべて自作曲で、リミッティに捧げた曲やタイトルなどから考えると、
ポップ・ライ誕生期のサウンドを人力演奏で回帰することがネライだったのでしょう。
シンセとドラムマシンで作られた80年代ポップ・ライのサウンドを、
骨太なロック・ビートで強化し、シンセで代用していた葦笛のノイジーなサウンドを、
本物を使って再現した本作はそのネライを十分実現しています。

コブシ使いも確かな歌唱力のある人ですけれど、
本作のプロモーション・ヴィデオの再生回数の少なさには、ガクゼンとします。
半年以上前にアップされてるのに、再生回数100回に満たないって、
これじゃプロとは言えませんよねえ。人気のない人なんでしょうか。
これほど充実した作品が、知られぬまま埋もれるのは、もったいない気がします。

Nadim "AUX ANCIENS" no label no number (2019)

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