レイラ・マキャーラの3作目となる新作、
音楽性がぐ~んと拡張した、素晴らしい作品になりましたよ。
ラングストン・ヒューズと自身のルーツのハイチ音楽を結び付けたデビュー作に、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2014-04-23
フレンチ・クレオールのルーツをさらに深めていったセカンド作と
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-07-03
これまでも意欲的な作品を送り出してきたレイラですけれど、
どこかまだ頭でっかちな面は否めませんでした。でも、今作は違います。
1曲目のタイトル曲は、レイラが弾くテナー・バンジョーに、
もう1台のテナー・バンジョーを加え、ピアノ、トランペット、クラリネット、
トロンボーン、チューバにトラップ・ドラムという編成で歌った
ニュー・オーリンズ風味のクラシック・ブルース。
レイジーなムード満点なノスタルジックなサウンドにイッパツでやられました。
続く‘Money is King’ は、
往年のカリプソニアン、ザ・タイガーが34年に録音したカリプソ。
タイガーがプロになったばかりの18歳の時にニュー・ヨークで録音した曲で、
オリジナル録音は、アーフリー盤“CALYPSOS FROM TRINIDAD” で聞けます。
ただ、ヴィオラやトランペットをフィーチャーしたレイラのヴァージョンは、
このオリジナル録音ではなく、もっと後年のグロウリング・タイガー名義で出した
79年のラウンダー盤“KNOCKDOWN CALYPSOS” の演奏を下敷きとしたみたいですね。
もうこの2曲で、今のアメリカ社会に対するレイラの異議申し立てが
はっきりと表明されているのがわかります。
そしてぼくが一番感じ入ったのが、‘Aleppo’。
ぶっこわれたようなノイジーなギター・サウンドは、
空爆で市民が虐殺され続けているアレッポの現状と、
いっこうに世界がアレッポ市民の救援に動かない苛立ちを
表現しているように、ぼくには聞こえました。
ほかにもザディコの‘Oh My Love’ に
‘Settle Down’ ではハイチの大所帯バンド、ラクー・ミジクと共演。
思えば、昨年のラクー・ミジクのアルバム“HAITIANOLA” は、
ニュー・オーリンズに接近した作品で、レイラもゲスト参加していましたね。
今作のサウンドの立役者は、プロデューサーである
キング・ジェイムズこと、ジミー・ホーン。
ちなみに‘Aleppo’ で轟音ギターを弾いているのも、この人なんですね。
ニュー・オーリンズR&Bバンドのザ・スペシャル・メンを率いるバンド・リーダーで、
デイヴ・バーソロミューやファッツ・ドミノなどの古いニュー・オーリンズR&Bから、
サン・ラーやパンクも呑みこんだ音楽性の持ち主で、
彼の異才が本作のプロダクションに大きく貢献しています。
レイラは3作目にして、素晴らしい音楽パートナーと巡り合いましたね。
Leyla McCalla "CAPITALIST BLUES" Jazz Village JV570154 (2019)
Atilla The Hun, Lord Beginner, The Tiger, The Lion, The Caresser, The Growler, King Radio, Lord Executor and others
"CALYPSOS FROM TRINIDAD : POLITICS, INTRIGUE & VIOLENCE IN THE 1930S" Arhoolie CD7004
Growling Tiger "KNOCKDOWN CALYPSOS" Rounder CD5006 (1979)