全14曲77分超って、どんだけ詰め込めば気が済むのかという感じですけど、
この長さを飽きさせず聞かせる実力は大したものです。
またも知らないエチオピアの若手男性シンガーのアルバム。
ミキヤス・チェルネットと読むんでしょうか。
YouTube をチェックすると、2010年代に入ってから出てきた人みたいです。
新作の1曲目がレゲエだったので、レゲエ・シンガーかと思いきや、さにあらず。
ライト・タッチなコブシ回しも鮮やかに、
エチオピア民俗色をたっぷりと薫らせた曲の数々を歌っています。
アクのない聴きやすい声質のせいか、するすると聞き流してしまいがち。
スムースすぎて引っ掛かりがないシンガーなのに、
何度も聴き返したくなる魅力があるんです。
気合を入れて、じっくり耳を傾けてみると、かなり歌唱力のある人だとわかりました。
さっぱりとした歌い口に、晴れ晴れとした爽やかな歌いぶりで、
よく伸びるハイ・トーンを振り絞るように歌ったり、
ヴィブラートをかけて歌ったりと、コブシの技巧も抜群です。
プロダクションの方も、4~5人のアレンジャーを起用して制作するのが
近年デフォルトとなったようで、
かつてのナホンのような金太郎飴サウンドに堕することなく、
アレンジャーの個性を生かした、カラフルなアルバムに仕上がっているのも嬉しいですね。
マシンコ、ケベロをフィーチャーして、男女コーラスとのコール・アンド・レスポンスで
歌う3曲目‘Turinafa’ 、アクースティック・ギターと打楽器の伴奏で聞かせる4曲目‘Kiya’、
グラゲのリズムを使ったダンサブルな5曲目‘Ziyozi’、
アコーディオン、マシンコ、クラール、ワシントを全面に押し出した
タイトル曲の6曲目という、民俗色を打ち出した中盤の流れが、すごくいいんです。
そして、アルバム・ラストの‘And New Demachin’ で聞かせる
アズマリを思わせる泥臭いビートとレゲエをミックスしたグルーヴが最高ですね。
Mikiyas Cherinet "10 KE10 YEGEBASHAL!" Vocal no number (2019)