う~ん、絶好調だな、スレイモン。
もう今のフジは、この人だけ追っかけてれば、それで十分かなあ。
出る新作がどれもツブ揃いで、ハズレなしなんだから、
この品質保証ぶりは、フジ諸先輩たちの作品をはるかにしのいでいますよ。
20世紀に入ってからのフジは、粗製乱造がひどくなる一方で、
ワシウ・アラビ・パスマやサヒード・オスパといった人気シンガーの作品でさえ、
「アタリ」を見つけるまで、10枚近い「ハズレ」をつかまされる始末でした。
これじゃ、どんなファンも熱が冷めようというものです。
それこそアフロビーツと比べたら、プロダクションやレコーディングのクオリティは、
同じ国の音楽とは思えないほど違うしねえ。
これまで聴いてきたスレイモンの作品で、はっきり「ハズレ」と感じたアルバムはなく、
明らかにレコーディングに対する姿勢は、先輩たちより真摯な姿勢を感じます。
それは、作編曲・プロデュースのクレジットにスレイモン自身の名があることからも明らか。
フジの豪胆さと、メロディアスなソングライティングを両立させながら、
ボトムの利いたパーカッション・アンサンブルと
軽快な疾走感をあわせもつスレイモンのフジは、バリスターやコリントン、
K1・デ・アルティメット(ワシウ・アインデ・バリスター)の時代とは、
明らかにサウンドの質感が違います。
いや、もちろん違って当たり前なんですよ、
親子ほどの世代差なんだから。ところが、フジはある時点から、
進化がぴたりと止まってしまっていましたからねえ。
ヴォーカルとコール・アンド・レスポンスのコーラス隊、
パーカッション・アンサンブルそれぞれがサウンドの中でくっきりと立ち上り、
いずれのパートも前景にも後景にもならない緊密な関係が、
メリハリに富んだ構成を生み出しています。
ガラガラ声のスレイモンのコブシを要所要所で炸裂させながら、
グルーヴを巻き上げるパーカッション・アンサンブルに、
いつの間にか夢中にさせられてしまう、これぞフジの醍醐味じゃないですか。
シンセやギターなどのアンサンブルが登場する場面も要所だけに限り、
アクセントに徹しているところも、本来のフジのサウンドをジャマしていなくて、
好感が持てますねえ。
今作も大満足のスレイモンのフジでありました。
Sulaimon Alao Adekunle Malaika "EXAMPLE" Babalaje/Golden Point Music no number (2019)