少し前にセール品で買った一枚。
良作であるものの、特に記事にしたくなるほどの盛り上がりは起こらず、
そのままにしていたんですが、仕事疲れの緊張を解きほぐしたい時に、
なんとなく手が伸びる一枚として、もう何か月も手元に置いたままとなっています。
気がつけば、お気に入り盤というやつで、
せっかくだから、ちょっと書いておこうかなと思った次第。
サン・パウロのピアニスト、グスタヴォ・ボンボナートのソロ・アルバム。
エルメート・パスコアール門下のアンドレ・マルケスに5年師事したという人なんですが、
ここで聴けるのはエルメート・ミュージックではなく、ジャジーなMPBです。
インスト・アルバムではなく、歌ものアルバムなんですね。
タチアナ・パーラ、マヌ・カヴァラーロ、フィロー・マシャード、
アドリアーナ・カヴァルカンチという、ジャズ・センスの高い歌手4人をフィーチャーして、
グスタヴォのオリジナル曲を歌わせています。
ピアノとローズを弾くグスタヴォのほかは、
ドラムスにエドゥ・リベイロとクーカ・テイシェイラ、
ベースにニーノ・ナシメント、チアーゴ・エスピリート・サント、
フルートとサックスにラファエル・フェレイラというサン・パウロの名手が勢揃い。
ハーモニカのガブリエル・ロッシが1曲客演しているところも嬉しいな。
全員派手さのない抑えの利いたプレイで、ヴォーカルの引き立て役に徹していて、
これぞ歌伴のお手本のようなアルバム。それでこそ、歌も引き立つというもので、
‘Finda À Dor’ でタチアナが聞かせる清涼感たっぷりの歌声、
‘Sapateiro Benevolente’ でフィローお得意のスキャットが、ことのほか粋に聞こえます。
「上質を知る人の」なんて、いけ好かないコピーが昔ありましたけれど、
本作はまさにそんなコピーが良く似合う作品です。
Gustavo Bombonato "UM RESPIRO" Gustavo Bombonato GB002 (2018)