4年前だったか、この人の88年作がなぜかCD化されて、
ズーク全盛期のグアドループに、こんなアルバムが出ていたのかと、
少し意外に思ったものです。その主は、エドゥモニー・クラテール。
グウォ・カのパーカッショニストで、ジャズ・トランペッターでもあるという人ですね。
そのアルバムは、グウォ・カ伝説の音楽家、ヴェロをトリビュートした内容。
ヴェロことマルセル・ロリアは、グアドループの文化的アイコンともなった人で、
カ(大太鼓)の妙技と野趣たっぷりの歌は、
セリニ盤LPなどでぼくもずいぶん愛聴しました。
一方、エドゥモニーのアルバムは、
グウォ・カ・ミーツ・スピリチュアル・ジャズ/フュージョンといった仕上がりで、
「グアドループのマヌ・ディバンゴ」みたいなポジショニングですね。
なんでまた30年も前のアルバムが突然CD化されたのか、
ナゾに思っていたんですけど、どうやら新作の予告編だったみたいですね。
2年前に、30年ぶりとなるアルバムが出ていたことに気付きました。
なぜかこちらは日本に入ってきませんでしたね。
コンセプトは、88年作とおんなじ。
全編でグウォ・カのリズムを通奏低音に響かせながら、
コンテンポラリー・ジャズ、フュージョン、エレクトロを駆使しながら、
カリブの音楽とリズムを引き立てています。
プログラミングとカ(大太鼓)がガチンコで競演する‘An Ba Jouk’ あたりが、
この人ならではでしょうか。
昔からのフレンチ・カリブ音楽ファンの頬をユルませる、
ビギンの‘Jouwé Tanbou’ ‘An Ba Jouk’ もありますよ。
ここ最近、エドゥモニー・クラテールやエリック・コザックとかに、
急にスポットが当たるようになったのって、ジャズ・ミュージシャンが
グウォ・カを取り上げるようになったのと、何か関係があるんですかね。
ジョナサン・ジュリオンやヴェロニカ・エルマン・サンビンのように、
グウォ・カをしっかりと咀嚼して、自身の音楽に取り入れる音楽家もいれば、
アルノー・ドルメンのように、グウォ・カの影響を自称するわりに、
さっぱりその痕跡が作品にうかがえない人もいて、濃淡はかなりあるんですけれども。
エドゥモニー・クラテールのグウォ・カ愛はホンモノで、
COVID-19の影響で遅れている新作のリリースが待たれます。
Edmony Krater et Zepiss "TIJAN POU VELO" Heavenly Sweetness HS142CD (1988)
Edmony Krater "AN KA SONJÉ" Heavenly Sweetness HS176CD (2018)
[LP] Anzala, Dolor, Vélo "ANZALA - DOLOR - VÉLO" Celini RCG10007
Velo "GWOKA" Emeraude/Esoldun CC2-714 (1963)
Vélo "VÉLO MAÎTRE