緻密にして雄大 アーロン・パークス
コロナ禍に見舞われた2020年を象徴するジャズとして、 ダン・ローゼンブームのアルバムに加えて、アーロン・パークスの本作が、 のちのちの個人的な記憶として残りそうな予感がするなあ。 フリーに寄ったエネルギーを強烈に放っていたダン・ローゼンブームとは対極の、 耽美で繊細なサウンドスケープを生み出す、緻密なアーロン・パークスの音世界。 抒情的な美しさのなかに、緊張や狂気をはらんだエモーショナルな展開が...
View Article鉱山労働者のヴォーカル・グループ マッセラ・レ・ディホバ
先月レソトのアコーディオン音楽ファモの名グループ、 タウ・エー・マッセカを紹介しましたけれど、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-06-14 今回紹介するのは、南ソトを代表するヴォーカル・グループのマッセラ・レ・ディホバ。 ぼくは初めて知ったグループなんですが、南ソトのア・カペラ・コーラスというと、...
View Article解放を目前とした南ア黒人の輝き ジョナス・グワングワ
南ア・ジャズを代表するトロンボーン奏者ジョナス・グワングワの初めて見るCD。 こりゃあ珍しいと、ロクにタイトルも確かめずにオーダーしてみたら、 届いてびっくり。なんと『ポップ・アフリカ800』にも載せた、 “FLOWERS OF THE NATION” と同内容のアルバムじゃないですか。 えぇ? これがオリジナルだったの!?...
View Article90年代も絶好調 パット・トーマス
ファンキー・ハイライフの名シンガー、パット・トーマスがカムバックを果たし、 絶賛活躍中であることは、もうここでも何度か触れたとおり。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-06-21 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-12-07 80年代に経済破綻したガーナを離れ、...
View ArticleUKトリニダーディアン・ポエトリー アンソニー・ジョゼフ
ブリティッシュ・トリニダーディアンの詩人で小説家のアンソニ・ジョゼフは、 ブリティッシュ・レゲエのダブ・ポエトリーで知られる リントン・クウェシ・ジョンソンと肩を並べる、カリブを出自とする社会運動家です。 スパズム・バンドを率いた初期のアルバムでは、アヴァンギャルドなアフロ・ジャズをやり、 ミシェル・ンデゲオチェロがプロデュースした14年のソロ作では、 ギル・スコット・ヘロンをホウフツとさせる、...
View Articleグウォ・カとジャズ エドゥモニー・クラテール
4年前だったか、この人の88年作がなぜかCD化されて、 ズーク全盛期のグアドループに、こんなアルバムが出ていたのかと、 少し意外に思ったものです。その主は、エドゥモニー・クラテール。 グウォ・カのパーカッショニストで、ジャズ・トランペッターでもあるという人ですね。 そのアルバムは、グウォ・カ伝説の音楽家、ヴェロをトリビュートした内容。...
View Articleカリブで再定義されたマリオン・ブラウン ジョナサン・ジュリオン
そういえば、ジョナサン・ジュリオンのアルバムを取り上げていませんでしたね。 ジョナサン・ジュリオンは、フランス、パリの南に位置する イヴリー=シュル=セーヌで生まれ、グアドループで育った若手ジャズ・ピアニスト。 フランスのジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの影響を受ける一方、 アラン・ジャン=マリーやマリオ・カノンジュといったビギン・ジャズのピアニストから...
View Articleターラブを原点回帰させたシティ・ビンティ・サアドのひ孫 シティ・ムハラム
ザンジバルのターラブの歴史を知る人なら、 ターラブをスワヒリ語で歌って大衆歌謡として広めた伝説の女性歌手、 シティ・ビンティ・サアドの名をご存じと思います。 トピック盤に4曲、ヴェルゴ盤に2曲CD化されたSP録音を、 すでにお聞きのファンもいるかもしれません。 時は19世紀末。男性中心の封建的なイスラーム社会のザンジバルで、...
View Article絶好調! センバ/キゾンバ新世代旗手 プート・ポルトゥゲース
10年のデビュー作以来、3年おきにアルバムを出しているプート・ポルトゥゲース。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2015-10-23 リル・サイントやマティアス・ダマジオが参加した、 16年の前作“ORIGENS” を取り上げそびれてしまいましたが、 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-06-03...
View Articleアダルト・オリエンテッド・キゾンバ C4・ペドロ
「キング・オヴ・キゾンバ」の異名をとるC4・ペドロの4作目となる新作。 コワモテのルックスに、ヒップ・ホップ色の強いヤンチャなシンガーとばかり 思い込んでいたんですが、あれ? こんな味のあるいいシンガーだったのか! 新作は『紳士』のタイトルどおり、オレも分別のつくオトナになったとでも言いたげな、 アダルト・オリエンテッドな歌を聞かせてくれます。...
View Articleゆらめくエクスタシー アヴァーント
C4・ペドロととっかえひっかえ聴いているのが、 アヴァーントの通算9作目となる新作。 そのせいか、R&Bなのに、キゾンバに聞こえる空耳が起こったりして。 それはさておき、今作のアヴァーントは、いいぞ。 これまでこの人のアルバムって、楽曲がなんかパッとしなくって、 どうもインパクトに欠けるきらいがあったんだけど、今回は違います。 あいかわらずメロディはシンプルですけれど、...
View Article阿波の自由な民謡
祝! ついに、お鯉さんの「よしこの」のオリジナル音源が初CD化! ご存じ♪ えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ ♪、 24歳のお鯉さんが31年に吹き込んだ、「徳島盆踊り唄」です。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-08-23 最初の録音では、「よしこの」とは名乗っていたなかったんですね。...
View Article進化した2作目 イン・コモン
テナー・サックスのウォルター・スミス3世と ギターのマシュー・スティーヴンスのユニット、コモンの2作目。 ニュー・ヨークの精鋭たちが顔を揃えた、 新世代によるコンテンポラリー・ジャズ・クインテットであります。 前作のクインテットの3人、ハリシュ・ラガヴァン(b)、マーカス・ギルモア(ds)、 ジョエル・ロス(vib)から、今回はミカ・トーマス(p)、リンダ・メイ・ハン・オー(b)、...
View Article大西洋横断セッション マイケル・ジャニッシュ
イン・コモンの新作と一緒に送られてきたCD。 どうやら、発送トラブルのお詫びのようです。 バンドキャンプでオーダーすると、オマケのCDが送られてくることがよくあって、 最低価格でしか買ったためしがないので、いつも恐縮してしまうんですけれど、 さすがに今回は、恐縮する必要ないか。 そのCDは、レーベル・オーナー、マイケル・ジャニッシュの新作。...
View Articleライカで納涼 フリスティアナ・パヴロウ
ギリシャ歌謡でこの風通しの良さは、得難い味じゃないですかね。 従来の伝統的なライカとなんら変わらないスタイルなのに、すごく軽やかで、 サッパリとした後味に、新時代を感じさせる人じゃないですか。 それなりのキャリアがありそうなルックスの女性歌手なんですが、 過去作やバイオ情報が見つからなくて、どういう人なんだろう。 いろいろ調べてみたら、この人、ギリシャ人じゃなくて、キプロスの人なんですね。...
View Article熱帯夜はリオのジャズ・クラブへ レニー・アンドラージ
冷房のよく利いた部屋で聴く、真夏の夜のジャズ・ヴォーカル。 ブラジルのジャズ・シンガー、レニー・アンドラージの84年ライヴ盤です。 熱帯夜続きの毎日に、何十年も昔に愛聴していたレコードをふと思い出し、 聴き直してみたら、どハマリしてしまいました。 リオのジャズ・クラブにタイム・スリップできる、最高のライヴ盤なんです、これが。 MCの短い紹介から、間髪おかずに始まるクールな演奏、...
View Article熱帯夜を癒して マルシア
レニー・アンドラージのライヴ盤をヘヴィロテしていて、これも思い出しちゃいました。 ボサ・ノーヴァ時代から活躍する女性歌手マルシアの96年ヴェラス盤。 キーボードのジャジーなサウンドに共通するセンスがあって、 姉妹盤みたいなイメージがあるんですよね。 マルシアは、ブラジルを代表するギタリスト、バーデン・パウエルの元夫人。 デビュー当初、バーデン・パウエルとの共演作を残し、...
View Articleフォーキー・ソウル・フロム・ロンドン リアン・ラ・ハバス
ジャケ買いです。 縮れ毛で顔は隠れていても、チャーミングな表情に、一目惚れしちゃいました。 ぼくには初めての人で、すでにこれが3作目という、 ロンドンのシンガー・ソングライターとのこと。 お持ち帰りして、ファクトリー・シールをはがすと、見開きジャケットの内側には、 いかにもロンドンらしい風景をバックにした、モノクロームの写真が2枚。 エキゾティックな顔立ちで、めっちゃキュートな女性じゃないですか。...
View Articleゆらめくアンニュイな歌声 ジェネイ・アイコ、キアナ・レデ
ジェネイ・アイコの新作を繰り返し聴くうちに、 なんだ、けっこう気に入っているじゃん、じぶん、とひとりごち。 最初に聴いた時、似たような曲調が続くので、ちょっと退屈かなあ、 それに62分とやたら長いしと、しばらく寝かせちゃってたんですよね。 忘れたままになっていたのに気付いて、もう一度聴いてみたら、 やるせない歌声が、身体の細胞にじわーっと沁み込んできて、 すっかりやられてしまいました。...
View Articleヴードゥー+クレオール・ブルース・ロック ムーンライト・ベンジャミン
ヴードゥー・ロック、なんていうと、いかにもキワモノぽく聞こえますけれど、 これはハイチ人のアイデンティティである真正のヴドゥン(ヴードゥー)と、 ロックをガチンコで融合させた本格作です。 ブークマン・エクスペリアンスが登場した90年代、ミジック・ラシーンのブームによって、 長年偏見を受けてきたハイチのヴドゥン(ヴードゥー)が、 ハイチ文化としてようやくまともに評価されたこともありましたけれど、...
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