祝! ついに、お鯉さんの「よしこの」のオリジナル音源が初CD化!
ご存じ♪ えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ ♪、
24歳のお鯉さんが31年に吹き込んだ、「徳島盆踊り唄」です。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-08-23
最初の録音では、「よしこの」とは名乗っていたなかったんですね。
「徳島盆踊り唄」の曲名で、空前の全国ヒットとなったのかあ。
いやー、それにしても若き日のお鯉さんの歌のパワーは、スゴイ。
軽やかでエネルギッシュというパラドックスに、ノック・アウトを食らいますよ。
古いスタイルを残す「よしこの」の三味線二挺が生み出すリズムも最高です。
チャンカ、チャンカでなく、チャン、チャンチャカ、チャンチャなんだな。
よしこの三味線とも呼ばれる、細かい返しの入った返しバチの技法が、
独特のグルーヴを生んでいるんですね。お鯉さんの唄が始まると、
太鼓と鳴り物がすっと後ろに下がるところなんて、まるでダブ。
このCDには、お鯉さんの「阿波よしこの」が冒頭の87年録音、
終盤の66年録音と31年の初録音と3ヴァージョン収録されています。
時代が下るほどに、歌い口は洗練され、味わいを深めていくのですけれど、
力強い美声がまったく変わらないのは、本当に驚異的です。
さて、お鯉さんの話ばっかりしてしまいましたけれど、
本作は87年に録音されたカセット『阿波の民謡集』をCD化したもので、
お鯉さんの過去音源は、ボーナス・トラックとして追加されたもの。
阿波の山間部に残された山仕事の唄や盆踊り唄を、
たっぷりと聴くことができるんですけど、どの唄も軽やかなんですよねえ。
それに明るいんです。この風通しの良さは、すごく貴重ですよ。
バブル期真っ只中の87年に、こんな録音が残されていたというのが驚くべきことで、
制作者には失礼ですけど、おそらく当時誰も見向きもしなかったんじゃないかな。
あの浮かれた時代に、こういう音楽を楽しむ環境はなかったもんねえ。
当時、型だけが保存されるばかりになった民謡は、すでに生命力を失って久しく、
いきいきとした民謡が日本で生きながらえているのは、
沖縄や河内音頭ぐらいしか、視界に入ってこなかったもんなあ。
阿波にこうした生きた民謡が遺されたのは、「先生」なんて存在がいなくて、
正調などと決められた通りの型を歌わせることがなかったからだろうな。
土地の歌自慢が、好き好きに自由に歌い、
個性を競い合っている気風が伝わってきます。
昨年復刻された『阿波の遊行』の野趣たっぷりの唄とはまた違い、
整って録音された民謡ですけれども、このすがすがしさは得難いものです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-08-12
v.a. 「阿波百景」 日本コロムビア COCJ41218