ジェネイ・アイコの新作を繰り返し聴くうちに、
なんだ、けっこう気に入っているじゃん、じぶん、とひとりごち。
最初に聴いた時、似たような曲調が続くので、ちょっと退屈かなあ、
それに62分とやたら長いしと、しばらく寝かせちゃってたんですよね。
忘れたままになっていたのに気付いて、もう一度聴いてみたら、
やるせない歌声が、身体の細胞にじわーっと沁み込んできて、
すっかりやられてしまいました。
長くて単調という第一印象も、雲散霧消。
聴き終えると、またアイコの歌声が聴きたくなるという、
まるで効き目が遅れてやってくる、遅効性の薬のようじゃないですか。
静謐なアンビエントなサウンドには人肌のぬくもりがあり、
アイコの淡々とした歌いぶりのなかに込められた
豊かなニュアンスを引き出しています。
クリスタル・グラスに反射する七色の彩のように、
切なさや淡い思いといった感情を、
フロウのような歌い口にのせるアーティキュレーションは、
この人の最大の魅力ですね。
ジャジーでチルなこういうR&Bが、新しい流れになってきているんでしょうか。
去年登場したH.E.R.にもキュッと胸をつかまれたんですけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-03-06
またそこに一人、キアナ・レデという人が加わりましたよ。
この人もジェネイ・アイコと同じくロス・アンジェルスを拠点に活動しているとのこと。
90年代R&B・テイストをたたえた楽曲に、ダウナーなサウンド、
幼さが残る歌い口ながらアンニュイなムードを醸し出していて、クールです。
フォー・ビートのシンバル・レガートなど、フックの利いたプロダクションも楽しめます。
熱帯夜も二人の歌声のおかげで、涼しく過ごせます。
Jhené Aiko "CHILONBO" Def Jam Recordings B0031915-02 (2020)
Kiana Ledé "KIKI" Republic B0031912-02 (2020)