「キング・オヴ・キゾンバ」の異名をとるC4・ペドロの4作目となる新作。
コワモテのルックスに、ヒップ・ホップ色の強いヤンチャなシンガーとばかり
思い込んでいたんですが、あれ? こんな味のあるいいシンガーだったのか!
新作は『紳士』のタイトルどおり、オレも分別のつくオトナになったとでも言いたげな、
アダルト・オリエンテッドな歌を聞かせてくれます。
C4・ペドロことペドロ・エンリケ・リスボア・サントスは、83年ルアンダ生まれ。
父親が歌手の音楽一家に生まれ、ベルギーで生活していた時代に
弟のリル・サイントとコンビで活動をする一方、
07年にベルギーでデビュー作を出します。
その2年後、弟のリルとともにアンゴラへ帰国して故国でもデビュー作を発売し、
10年に新人賞とベスト・バラード賞のダブル受賞を獲得。
その後も毎年数々の音楽賞を受賞し、
キング・オヴ・キゾンバの名をほしいままとしました。
そのC4・ペドロの新作は、キゾンバのスター・シンガーらしく、
国内外から大勢のゲストを招いています。
まずアンゴラ国内では、同じキゾンバ・シンガーのアンセルモ・ラルフ。
国外から、カーボ・ヴェルデ系ポルトガル人のディノ・ディサンティアゴ、
ナイジェリアのミスター・イージーに、ブラジルのラッパー、MC・ズカ、
フランス生まれのポルトガル人シンガー、ダヴィッド・カレイラ、
ポルトガルのダンスホール・デュオ、スパ・スカッドの片割れ、
ミスター・マーリーの名前が並びます。
今作は泣かせる楽曲が満載。
いかつい顔つきに似合わぬビター・スウィートな歌声、
スムースな歌い口から溢れ出る男っぷりは、
アンゴラ女性のハートを捕まえて離さないだろうなあ。
ディノ・ディサンティアゴをフィーチャーしたソダーデ感溢れる‘Nha Rainha’ や、
ギターラとピアノに弦オーケストラをフィーチャーした、
哀歓たっぷりの‘Vou Ter Saudade’ など、まさに大人の魅力が溢れていますよ。
ラストだけ、バッキバキのトラップの‘Bang Bang’ を置いて、
その後のシークレット・トラックに泣きの曲で締めくくったところも、ニクい構成。
ところで、ジャケット裏のクレジットの最後に、
小さく「やめろ」とひらがなで書かれていて、なんだソリャと思ったら、
デザイナーの名前が Yamero Djuric。
プート・ポルトゥゲースの新作をデザインした「侍」といい、
アンゴラ人デザイナーの間では、日本語がブームになってるんですかね。
C4 Pedro "THE GENTLEMAN" BLS Prod./Sony Music no number (2019)