南ア・ジャズを代表するトロンボーン奏者ジョナス・グワングワの初めて見るCD。
こりゃあ珍しいと、ロクにタイトルも確かめずにオーダーしてみたら、
届いてびっくり。なんと『ポップ・アフリカ800』にも載せた、
“FLOWERS OF THE NATION” と同内容のアルバムじゃないですか。
えぇ? これがオリジナルだったの!?
びっくりしてバック・インレイを確かめてみると、1993年と書かれてある。
『ポップ・アフリカ800』に載せたソニー盤は2001年作で、
じゃあ、こっちは再発盤だったのか!
あわてて調べてみたところ、オリジナルはさらに前の90年に
アフリカン・エコーズという会社から出たLPで、
3年後に‘Batsumi’ ‘Time Up’ の2曲を追加して、
曲順を変えてCD化したのが本CDだということが判明。
CD表紙は、オリジナルLPと違ったものになっています。
01年に出たソニー盤は、本CDにさらにボーナス・トラックとして
‘Diphororo’ のヴォーカル・ミックスを追加して再発されたものだったんですね。
うわー、知らなかったあ。
おかげで、あらためてこのアルバムの魅力の理由が、フに落ちましたよ。
翌02年に出た“SOUNDS FROM EXILE” が、
かなり洗練されたフュージョン・タッチのサウンドだったので、
“FLOWERS OF THE NATION” とのサウンドの違いが不思議でならなかったんです。
10年も前のリリースなら、サウンドが違うのも当然の話で、
なにより本作に充満している、ハンパない熱量の理由が、
90年作と聞けば、するっと了解できようというものです。
なんたって、90年といえば、アパルトヘイト関連法の廃止が目前となり、
2月にはネルソン・マンデーラが釈放されるという、
長年の悲願がついに叶えられた時期ですからね。
まさに南ア黒人たちの自由と解放が、すぐ手の届くところまで迫った時で、
“FLOWERS OF THE NATION” の歓喜に満ち溢れたサウンドは、
まさにそういう時期だからこそ生み出されたものだったんですね。
60年代から亡命生活を送っていたジョナス・グワングワは、
「アマンドラ」の音楽監督を務め、映画「クライ・フリーダム」のスコアを書くなど、
音楽家としてアパルトヘイト撤廃に向けた活動を一貫して続けていました。
91年になってようやく南アへ帰国を果たすわけですけれど、
本作はその前年、ロンドンでレコーディングされたんですね。
録音月日が不明なんですが、マンデーラ解放後だったんじゃないかな。
ピアノとアルト・サックスにベキ・ムセレクが参加しているように、
南ア出身のジャズ・ミュージシャンたちによる、
重厚なホーン・アンサンブルと男女コーラスが歓喜を爆発させたサウンドは、
解放を目前とした南ア黒人たちの万感の思いがたぎっていて、
いつ聴いても感動的です。
Jonas Gwangwa "FLOWERS OF THE NATION" Kariba/Tusk TUCD31 (1993)
Jonas Gwangwa "FLOWERS OF THE NATION" Sony CDEPC8177 (2001)