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鉱山労働者のヴォーカル・グループ マッセラ・レ・ディホバ

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Matsela Le Dihoba.jpg

先月レソトのアコーディオン音楽ファモの名グループ、
タウ・エー・マッセカを紹介しましたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-06-14
今回紹介するのは、南ソトを代表するヴォーカル・グループのマッセラ・レ・ディホバ。

ぼくは初めて知ったグループなんですが、南ソトのア・カペラ・コーラスというと、
以前イギリス、イーグルから2枚組の10枚シリーズで出た、
南アフリカ放送協会SABCのトランスクリプションの第3集『南ソトとツワナ編』に、
ヴァージニア・ゴールド・マイナーズ、
プレス・ステイン・ゴールド・マイン・バンドの2曲が
収録されていて、聴いたことがあります。

AFRICAN RENAISSANCE VOL.3 SOUTH SOTHO & TSWANA.jpg

マッセラ・レ・ディホバもその2曲とまったく同じタイプのア・カペラ・コーラスで、
コール・アンド・レスポンス主体のワーク・ソングを強くうかがわせる音楽ですね。
南ア黒人のア・カペラ・コーラスというと、
ズールーのンブーベがすぐに思い浮かびますけれど、
ンブーベのような重厚でヴォリューミーなコーラスと違って、
こちらは、ひび割れた声に土臭い味わいがあり、粗く乾いた手触りを残します。
レディスミス・ブラック・マンバーゾのような洗練されたイシカタミアとも
まるでタイプの違う、野趣溢れるコーラスですね。

『南ソトとツワナ編』収録のグループ名が、どちらも鉱山の名を冠しているとおり、
どうやら鉱山労働者のグループらしく、マッセラ・レ・ディホバのリーダー、
ラッセマ・マッセラ(1925-99)も、40年代後半にウェスト・スプリングスの鉱山へ
出稼ぎで働き、56年に初のヴォーカル・グループを結成したとライナーに書かれています。
ラッセマがフル・タイムのミュージシャンだったことはなく、鉱山の仕事を終え、
鉱山仲間のメンバーとともに音楽活動をしていたようですね。

そんな出身を聞くと、この音楽はワーク・ソングそのものなのかと思ってしまいますが、
そうではなく、ソト人男性のダンスのモホベロ、ソト人女性のダンスのモヒボ、
結社の歌のマンガエやレリゴアナにもとづいて、
ラッセマ・マッセラが創作した曲なのだそう。
ラッセマの独自の解釈で、ソトのさまざまな伝統音楽を再構成して創作した、
新しい伝統音楽であるところが、マッセラ・レ・ディホバの真骨頂だったのですね。

ラッセマは鉱山労働をやめたあと、
ソウェトのソト人とツワナ人収容地区だったフィリに移り、
工場やマーケットで働きながら、コーラス・グループの活動を続けました。
結婚式をはじめ教会や鉱山などのアトラクションで次第に人気を集めるようになり、
SABCの目にとまったんですね。
本CDは、66年から74年にSABCに録音されたトランスクリプションから選曲されていて、
68年録音では、名歌手のマリタバとアコーディオンをフィーチャーしたファモを
2曲聴けるのも貴重です。

Matsela Le Dihoba "MME MMANGWANE" Recordiana CDREC102
v.a. "AFRICAN RENAISSANCE: VOL.3 SOUTH SOTHO & TSWANA" Eagle SABC003

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