冷房のよく利いた部屋で聴く、真夏の夜のジャズ・ヴォーカル。
ブラジルのジャズ・シンガー、レニー・アンドラージの84年ライヴ盤です。
熱帯夜続きの毎日に、何十年も昔に愛聴していたレコードをふと思い出し、
聴き直してみたら、どハマリしてしまいました。
リオのジャズ・クラブにタイム・スリップできる、最高のライヴ盤なんです、これが。
MCの短い紹介から、間髪おかずに始まるクールな演奏、
レニーの歌い出しとともに、観客の温かい拍手が送られると、
すでにライヴ会場にいる気分にさせられます。
エレピのひんやりしたサウンドが、火照った昼の身体をほぐして、
心地よい夜へといざなってくれるようじゃないですか。
オープニングの‘Estamos Ai’ に次いで‘Batida Diferente’ と、
2曲立て続けにマウリシオ・エイニョルンとドゥルヴァル・フェレイラの名曲が歌われて、
ぼくはこれで、このレコードにゾッコンになったんだっけなあ。
ハーモニカ奏者マウリシオ・エイニョルンの80年の名作”ME” での名演が
忘れられない2曲ですけれども、ここで聴けるのは、
その最良のヴォーカル・ヴァージョンといえます。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2010-04-04
スキャットを繰り出す、キレのあるレニーのヴォーカルは、
ジャジーで、かつパワフルなもの。
多少声の荒れも感じさせるものの、ライヴらしい雰囲気がカヴァーします。
エレピを中心としたスモール・コンボの演奏もタイトで、
ギターのウネウネとしたロング・ソロや、
ジャズ・サンバ・マナーのシンバル打ちが快感ですねえ。
ぼくはこのレコードで初めてレニー・アンドラージを知り、
のちにもっと若い頃のレコードや、この後のアルバムもフォローしましたけれど、
けっこう大味な歌い方をしていたり、スキャットがワン・パターンなアルバムも目立つので、
やっぱり本作が最高作ですね。ポインターという弱小レーベルから出たレコードですが、
04年にシッドからCD化もされ、いまでもそう入手は難しくないと思います。
イヴァン・リンス、ジャヴァン、シコ・ブアルキ、
フィロー、ドリ・カイーミのレパートリーに加え、
1曲英語曲で、レオン・ラッセルの‘This Mascarede’ を取り上げたのも、
レニーの持ち味に合った、いい選曲です。
ラストのイヴァン・リンスの‘Roda Baiana’ では、
エンディングをリピートするライヴらしい演出をみせて、聴後の満足感も最高ですね。
ブラジリアン・フュージョンが好きなファンにもアピールしそうな、名ライヴ盤です。
Leny Andrade "LENY ANDRADE" Cid CD00586/9 (1984)