70年代カリビアン・クロスオーヴァー ハリー・ベケット
へぇー、こんなレコードがCD化されるとは思わなかったなあ。 UKジャズの盛り上がりが、リイシューにも及ぶようになったんでしょうか。 ブリティッシュ・ジャズと呼ばれていた時代、 70年代のロンドンで活躍したトランペット奏者、 ハリー・ベケットの75年作がCD化されました。 ぼくにとってハリー・ベケットといえば、 クリス・マグレガーのブラザーフッド・オヴ・ブレスでの活躍が、...
View Articleマラウィ北部のヒーリング・ダンス ドクター・カヌスカ・グループ
ポーランドの人類学者ピョートル・チチョッキが、 マラウィ北部に暮らすトゥンブカ人の民間療法である 憑依儀礼のヒーリング・ダンス、ヴィンブザをフィールド・レコーディングしたアルバム。 マラウィ北部州ムジンバ県の中心地ムジンバで、 19年の5月から9月にかけて録音されたもので、 チチョッキが主宰するレーベル、1000Hz からリリースされました。...
View Articleアフリカン・エレクトロ・リディム ブラックフェイス・ファミリー
前回の記事で触れたピョートル・チチョッキは、 ワルシャワ大学民族学・文化人類学研究所の助教授で、 人類学者としての研究とともに、調査対象のマラウイ、タンザニア、ルワンダの 音楽プロデューサーとしても活動し、1000Hz というレーベルを主宰しています。 ローカルで相対的な視点を置く人類学と、普遍的な基準を探る音楽プロデュースという...
View Articleマラウィ北部のゲットー・ミュージック トンガ・ボーイズ
トンガ・ボーイズも、ピョートル・チチョッキの制作だったのかあ。 今回日本に入荷したジップロック・バッグ入りのCDを見て、 ああ、あのグループかと、すぐにピンときました。 以前、マラウィ帰りの方からいただいたCDで、 同じジップロックのバッグに入ったものがあったんですけど、 棚から取り出してみれば、やっぱり同じトンガ・ボーイズ。...
View Articleジャズ・サイドの大友良英 ONJQ
これ、これ、これ。これが聴きたかったんですよ。 ‘Hat&Beard’ と‘Straight Up and Down’ の 大友良英・プレイズ・『アウト・トゥ・ランチ』に、思わず快哉を叫んじゃいました。 ぼくが大友良英のジャズに期待するパフォーマンスが、この2曲で繰り広げられています。 あらかじめ告白しておくと、...
View Article日本のジャズの明るい未来 渡辺翔太
ん? これって、グレッチェン・パーラト? 店で流れていたスキャットが気になって、CDを見に行ったら、 なんと日本人のピアニストの作品で、びっくり。 歌っていたのはグレッチェンではなく、ものんくるのヴォーカリスト、吉田沙良。 うわー、スゴイな。 ブラインドで聴いてると、もはや演奏者が日本人かどうか、ぜんぜん判別できませんね。 ピアノをバックから猛烈にプッシュしながら、...
View Article無頼な天才シンガー・ソングライター登場 藤井風
とてつもない天才が、また出てきましたよ! YouTube で注目され、いま話題沸騰中の新人シンガー・ソングライター、藤井風。 この声にヤラれない人なんているのか?と口走りたくなるほど魅力的なシンガーで、 ぼくは一聴、金縛りにあい、即、カヴァー集付き2枚組の初回限定盤を買いました。 なんといっても、藤井の声の色彩感がスゴい。 田島貴男や久保田利伸といった、さまざまな先達の声が思い浮かぶだけでなく、...
View Article平成生まれのポップ体質と作品主義 ヨルシカ
藤井風と一緒に買ったこちらも、試聴していてブッとんだアルバム。 平成生まれ世代が、日本の音楽を更新していることを、 まざまざと実感させてくれる作品でした。 ヨルシカというのは、n-buna(ナブナ)という作編曲家と、 suis(スイ)という女性ヴォーカリストによる男女ユニット。 当人たちは「バンド」を称しているんだそうですけど、 二人でバンドというのはピンときませんね。ユニットじゃいけないのかな。...
View Articleワスルへ還る声 ウム・サンガレ
世界的な成功を果たしたマリを代表するシンガー、ウム・サンガレの新作は、 ポンコツだった前作“MOGOYA” のリヴェンジ・アルバム。 なーんて書いたら、ご本人に叱られますかねえ。 17年に出た“MOGOYA” 全曲をアクースティック・スタイルで再録音し、 さらに91年のインターナショナル・デビュー作“MOUSSOLOU” で歌った ‘Diaraby Nene’ と、93年の名作“KO SIRA”...
View Articleガリフーナの過去を未来につなぐ情熱 ザ・ガリフーナ・コレクティヴ
あれ? 去年新作が出ていたの! これまでイヴァン・ドゥランが制作したガリフーナ音楽のアルバムは、 日本にも配給されていたのに、このザ・ガリフーナ・コレクティヴの新作は 日本盤が出なかったので、リリースされているのを気付きませんでしたよ。 13年に出た前作は、タイトルの“AYÓ”(ガリフーナ語で「さよなら」の意)が示すとおり、 亡きアンディ・パラシーオにオマージュを捧げた作品でしたね。...
View Articleグアドループのジャジー・伝統ポップ エドモニー・クラテール
グアドループのエドモニー・クラテールの新作が届きました。 前作“AN KA SONJÉ” からドラムス、ピアノが交替し、パーカッションも一人抜けて、 グウォ・カのリズムをリードするのは、カの名手ロジェ・ラスパイユ一人に任されています。 グウォ・カをベースとするクレオール・ジャズという方向性は変わりませんけれど、 鍵盤奏者が交替した影響で、前作とはサウンドがかなり変化しましたね。...
View Articleマレイ・ポップ最高の歌姫の円熟 シティ・ヌールハリザ
わお! 今度のシティの新作はいいぞ。 ユニヴァーサル移籍後のスタジオ作では、これ、最高作じゃないかな。 マレイシアのトップ・スターにして貴族に嫁ぎ、 まごうことなきセレブとなったシティ・ヌールハリザ。 スリア時代の最後の頃には、伝統歌謡とポップスの垣根を溶解させて、 マレイ・ポップの最高峰を聞かせてくれたシティでしたけれど、 ユニヴァーサルに移籍してからは、妙にコマーシャルな色気が漂う、...
View Articleラ・ラの生きる伝説 ゴールドマン・ティボドー&ロウテル・プレイボーイズ
ロウテル・プレイボーイズが今も活動している! うわー、それは知らなかったなあ。 ぼくのなかでは、完全に伝説のグループだったもんで、申し訳ありません。 46年にベベとエラステのキャリエール兄弟によって結成されたロウテル・プレイボーイズ。 ルイジニア深南部で20~30年代に育まれたクレオール音楽ラ・ラを継承するグループです。 初代アコーディオン奏者のエラステが高齢となって引退し、...
View Articleスピリチュアルに昇華したR&B ケム
はぁ~、もうタメ息しか出ませんね。 絶望を知った人のみが生み出せる深いロマンティシズムに、圧倒されます。 ケムの音楽世界に、「メロウ」なんてチンプな形容詞をあてるのをためらうのは、 深い闇を超えて浄化された魂が、神へ救いを求める精神の昇華を、 仰ぎ見るような気にさせられるからでしょうか。 オープニングの‘Not Before You’ のプロダクションからして、...
View Articleライヴ・セッションで本領発揮 バンバ・ワスル・グルーヴ
おぅ! バンバ・ワスル・グルーヴの新作も昨年出てたのか! ザ・ガリフーナ・コレクティヴといい、なんか最近ワールド関係の流通事情、悪くない? バイヤーが買い付けないばかりか、情報もちっとも伝わってこなくて、 見逃し案件がほかにもあるんじゃないかと、疑心暗鬼になりますねえ。 バンバ・ワスル・グルーヴは、バンバラ人ギタリストのザニ・ジャバテとともに...
View Article捕鯨航海を歌う アイリス・ケネディ
アイルランド、西ケリー、ディングル半島出身のフォーク・シンガー、 アイリス・ケネディの4年ぶりの新作。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-04-25 アイリスは、マサチューセッツのニュー・ベッドフォード捕鯨博物館を訪れて、 19世紀の捕鯨航海の航海日誌や手紙を読みこみ、 そこから着想を得て作曲したという5曲が収録されています。...
View Articleスコットランド伝統歌の旨味 フィンドレイ・ネイピア&ジリアン・フレイム
ジェイムズ・テイラーを思わす フィンドレイ・ネイピアの柔らかな歌声に惹かれました。 相方を務めるジリアン・フレイムの気品のあるシンギングとの相性も理想的。 テナー・ギター、フィドル、オルゴールを弾く マルチ奏者のマイク・ヴァスがプロデュースを務め、 ベースとパーカッションが控えめにサポートしたこのアルバムは、 スコットランド伝統歌の旨味をたっぷりとたたえた、極上の内容に仕上がりましたね。...
View Articleパリのアマリア・ロドリゲス
ああ、またも買っちゃいました。 ボックスものはできるだけ買わないようにしているんですけれど、 アマリア・ロドリゲスじゃ、しょうがないよねえ。 と、自分に言い訳して買った、アマリア・ロドリゲス生誕100周年記念の5CDボックス。 ボックスはスキャンするのが難しいため、画像はネットから拾ってきました。すみません。 生誕記念にかこつけて、過去の音源を適当に編集したようなものでないことは、保証付。...
View Articleアナログ・オンリーのCD入手法 ダミリ
ここ最近、アフリカ方面のリイシューは、 アナログのみリリースというカタログが、全世界的に増えていますね。 プラネット・イルンガ(ベルギー)、アフリカ・セヴン(UK/フランス)、 アフロ・7(フィンランド)、ミシシッピ(アメリカ)あたりは、 CD制作などハナから眼中になく、 他のレーベルも、売上が期待できそうなカタログだけCDを出すといった、 腰の引けたリリース状況となっています。...
View Article世界に知られるべきギネア=ビサウの才媛 カリナ・ゴメス
わぁ、やっと見つかりました。 ギネア=ビサウの新進女性シンガー・ソングライター、カリナ・ゴメスのデビュー作。 エネイダ・マルタの新作でカリナの曲が起用され、その時にちょっと話題にした人です。 https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2020-01-10 カリナ・ゴメスはギネア=ビサウ独立2年後の76年、...
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