ジェイムズ・テイラーを思わす
フィンドレイ・ネイピアの柔らかな歌声に惹かれました。
相方を務めるジリアン・フレイムの気品のあるシンギングとの相性も理想的。
テナー・ギター、フィドル、オルゴールを弾く
マルチ奏者のマイク・ヴァスがプロデュースを務め、
ベースとパーカッションが控えめにサポートしたこのアルバムは、
スコットランド伝統歌の旨味をたっぷりとたたえた、極上の内容に仕上がりましたね。
民俗学者ノーマン・ブッチャンが、50年代後半から60年代初めにかけ、
新聞スコッツマン紙にスコットランドの伝統音楽の記事を毎週掲載していたのを、
フィンドレイ・ネイピアのお祖父さんが、切り抜いてスクラップしていたのだそう。
アルバム・タイトルとジャケットに示されているとおり、
そのノートが本作制作の発端となってします。
60曲以上スクラップされていた記事の中から10曲が選ばれ、
ノートに張られた歌詞や楽譜に解説が、ブックレットに転載されています。
民俗学者ノーマン・ブッチャンによるこの新聞記事は、のちにまとめられて、
“101 Scottish Folks Songs - The Wee Red Book” として出版され、
スコットランド伝統歌集の名著となります。
オープニングの‘Bonnie George Campbell’ は、
チャイルド210番として知られる名バラッド。
ニック・ジョーンズやジューン・テイバーの英訳ヴァージョンで聞いていましたけれど、
本来のスコティッシュ・ゲール語で歌われているのを聴くのは、初めてかな。
‘Twa Recruitin' Segeants’ の後半でちらりと出てくる軍用ドラムなど、
音楽面のアイディアがストーリーテラーの歌い手をサポートしていて、
歌詞を解さずに聴いている外国人にも、音楽のイマジネーションを広げてくれますね。
フィンドレイとジリアンの軽やかなハーモニーが、
優美な伝統歌に現代性をもたらした傑作です。
Findlay Napier & Gillian Frame with Mike Vass "THE LEDGER" Cherry Groove CHERRY008 (2020)