ん? これって、グレッチェン・パーラト?
店で流れていたスキャットが気になって、CDを見に行ったら、
なんと日本人のピアニストの作品で、びっくり。
歌っていたのはグレッチェンではなく、ものんくるのヴォーカリスト、吉田沙良。
うわー、スゴイな。
ブラインドで聴いてると、もはや演奏者が日本人かどうか、ぜんぜん判別できませんね。
ピアノをバックから猛烈にプッシュしながら、
飛翔するようなドラミングを聞かせるのは、石若駿。
重量感がありながら、軽やかなこのグルーヴ、さすがだわー。
平成生まれのジャズ・プレイヤーたちが、時代を更新していくのを実感させてくれる作品、
と言いかけたら、主役の渡辺翔太は88年生まれだそうで、ギリで昭和最後の年。
ベースの若井俊也も同じ88年生まれなんだね。
いずれにせよ、30歳前後の世代が、
日本のジャズ・シーンを変えているのは、まぎれもない事実。
渡辺翔太は、全世界で進行する新世代ジャズに並走する
日本人若手ピアニストの一人といっていいんでしょうね。
ここ十年くらい、日本人ジャズ・ピアニストは女性の独壇場でしたけれど、
ようやくその潮目が変わってきたのかな。
高速で流麗に弾きまくる場面も多いものの、
音色はマイルドで、繊細さをあわせもった渡辺のピアノはリリカルです。
ごんごん弾くハンマー・スタイルはいまや女性ピアニストの方が多いくらいで、
もはやピアノのプレイ・スタイルも、ジェンダーレスだな。
吉田沙良をフィーチャーしたトラックは、
グレッチェンを思わす器楽的なヴォイスをフィーチャーした「回想」に、
まんまシティ・ポップな「君を抱きよせて眠る時」もあり、
新世代らしくジャズとポップの垣根が見事に溶解していますよ。
若井がメロディカを吹いたり、石若がグロッケンを弾くなど、
楽曲のアレンジも、ジャズとポップを行き来する柔軟さがいいなあ。
まばゆい若さに、明るい日本のジャズの未来が見えます。
渡辺翔太 「FOLKY TALKIE」 リボーンウッド RBW0012 (2019)