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アフリカン・エレクトロ・リディム ブラックフェイス・ファミリー

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BlackFace Family  AFRICAN DRUMS.jpg

前回の記事で触れたピョートル・チチョッキは、
ワルシャワ大学民族学・文化人類学研究所の助教授で、
人類学者としての研究とともに、調査対象のマラウイ、タンザニア、ルワンダの
音楽プロデューサーとしても活動し、1000Hz というレーベルを主宰しています。

ローカルで相対的な視点を置く人類学と、普遍的な基準を探る音楽プロデュースという
両極の間を揺れ動きながら、共通点を見出したり、時にはその両極をナヴイゲートする、
独自の作業方法を模索していると、チチョッキはインタヴューで語っています。
そのインタヴューを読んで思い浮かべたのは、
カメルーンでバカ・ピグミーとヒップ・ホップの研究をされている矢野原佑史さんのお仕事。
二人のアプローチには共通するものがあり、
文化人類学の研究にも新しいディメンションがやってきていることを感じます。

前回のドクター・カヌスカ・グループによるヴィンブザは、
チチョッキの人類学のフィールド・ワークの成果だったわけですけれど、
今回のブラックフェイス・ファミリーは、音楽プロデューサーとしての仕事ですね。
チチョッキが調査地のマラウィで数か月暮らしていたときに
仲良くなったミュージシャンから手渡された自作CDが、制作のきっかけとなったそうです。

ブラックフェイス・ファミリーは、マラウィ北部の都市ムズズのヒップ・ホップ・チーム。
プロデューサーでクリエイターのツイッギーと、二人の弟スパロウ、ジャー・フェイスに、
幼なじみのシンガー、クリティックを加えた4人組で、公用語のチェワ語と、
北部で広く使われるトゥンブーカ語に英語を使ってラップします。

クカニンギナコ(「カニンギナ山から来た」の意)と称する彼らのスタイルは、
ヒップ・ホップ、ダンスホール、レゲトン、アフロビーツ、クワイト、ハウスなど、
若者受けする流行のサウンドから、イイとこ取りしたもの。
地元ムズズのクラブで開かれるディスコ・パーティでは、
彼らのmp3 が最高の人気だといいます。
アッパーでキャッチーな曲が多いことからも、それがわかりますね。

彼らのスタジオにちょくちょく出入りしていたチチョッキが、
ムズズを離れるさい、ツイッギーとジャー・フェイスからプレゼントされたCDをベースに、
あらためてブラックフェイス・ファミリーの過去3年間のシングルから選曲し直し、
リマスターして作ったといいます。
CDのスリム・ケースにデザインされたシールを貼り付けた仕様は、
ヴェトナム系ポーランド人デザイナー、トゥイ・ドゥオン・ダンの手によるもの。

時代遅れのソフトウェアが入ったラップトップに、
古いマイクが1本とモニターだけという粗末な設備で作られたものながら、
このグルーヴはどうです!
複雑なシンコペーションを組み込んで、
ダンサナブルなリズムを打ち出すビート・メイキングと、キャッチーな楽曲は、
ローテクな機材をものともしない、センスの塊を感じさせます。

聴き始めこそ、サウンドのチープな響きに失笑したものの、
聴き進むほどに、多彩なグルーヴの渦に腰は浮き立ち、
キレのあるラップに、すっかり夢中にさせられてしまいます。
なんだか、カシオトーンから生み出されたスレンテンを連想せずにはおれない、
アフリカン・エレクトロ・リディムじゃありませんか。

BlackFace Family "AFRICAN DRUMS" 1000HZ no number (2018)

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