トンガ・ボーイズも、ピョートル・チチョッキの制作だったのかあ。
今回日本に入荷したジップロック・バッグ入りのCDを見て、
ああ、あのグループかと、すぐにピンときました。
以前、マラウィ帰りの方からいただいたCDで、
同じジップロックのバッグに入ったものがあったんですけど、
棚から取り出してみれば、やっぱり同じトンガ・ボーイズ。
袋の裏を見ると、録音・ミックスにピョートル・チチョッキの名が書かれていました。
トンガ・ボーイズのバンドキャンプのページを見にいったところ、
ぼくがもらったCDは17年に出たもので、現在はダウンロード販売のみになっています。
18年の新作はジップロック・バッグ入りCDで売られていて、
それが日本にも入ってきたんですね。
トンガ・ボーイズは、マラウィ北部の都市ムズズのスラムで活動するグループで、
故郷のンカタ灣からムズズにやってきて、日に1ドルを稼ぐのがやっとの、
経済的にギリギリの生活を送っている若者グループです。
プラスチック製のバケツ、シャベル、砂利を入れた缶、
木の板に針金を張って作ったギターなど、手近なもので作られた楽器を使いながら、
シンプルなコール・アンド・レスポンスの曲を歌います。
スラムにある彼らの自宅でレコーディングされた音楽は、素朴そのもの。
曲はすべて4分の4拍子で、リズムもとりたてて複雑ではありませんが、
ツバが飛んでくるような活気溢れる歌いぶりが、聞かせるんですね。
ヒップ・ホップ世代を思わせるビート感覚に、民俗音楽とは異質の手ごたえを感じます。
グループ名が示すとおり、トンガ人の音楽伝統にスラムの生活感覚が混入した、
都市のフォークロアを照射しているのが、彼らの強みでしょう。
ピョートル・チチョッキがビートを強化した、控えめなエレクトロも効果を上げています。
そして、今回の新作は、基本的に1作目と変わらないものの、
メンバーからもっと音を追加して欲しいという要望が出たようで、
チチョッキが前作よりもエレクトロを大幅に施した曲もあります。
その一方、いっさいオーヴァーダブを避けて、彼らのコール・アンド・レスポンスのみで
仕上げたトラックもあり、チチョッキは彼らの粗野なエネルギーを減じないよう、
細心の注意を払ったことがうかがえます。
トランシーな反復によるプリミティヴな音楽に、
スラムのなまなましいリアリティをドキュメントした2作です。
Tonga Boys "TIRI BWINO" 1000HZ no number (2017)
Tonga Boys "VINDODO" 1000HZ no number (2018)