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クラブ・ミュージックからトラップへ タッシャ・レイス

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Tássia Reis  PRÓSPERA.jpg

うわぁ、スタイリッシュですねえ。
ブラジルで話題となっている、
フィメール・ラッパー、タッシャ・レイスの3作目となる新作。
聴き始めたら、もうワクワクが止まりません!

14年にデビューEP、16年にセカンドを出しているそうで、
今作で初めてタッシャを聴きましたが、キュートなラッパーじゃないですか。
ソフトな声質を生かしたスムースなフロウ使いは、
この夏ゾッコンとなったジェネイ・アイコとも親和性を感じさせ、グッときちゃいました。
ラップばかりでなく、ヒップ・ホップR&Bシンガーとしても魅力的な人です。
ローリン・ヒルやエリカ・バドゥに影響を受けたというのもナットクですね。

そして、なんといっても聴きものなのが、プロダクションです。
すぐに連想されるのが、2000年代に一大ブームを巻き起こしたトラーマ。
マックス・ジ・カストロ、ウィルソン・シモニーニャ、DJパチーフィあたりが
人気沸騰だった時代を、思い出させるじゃないですか。
ハウスやドラムンベースなどのクラブ・ミュージックをベースにした新世代MPBを
クリエイトしていたトラーマが、現代に更新されて蘇ったのを感じさせます。

更新されたのは、クラブ・ミュージックからトラップへと変化したビート・センスでしょう。
‘Dollar Euro’ のビートメイキングが、それを象徴していますね。
テンポの遅いドラッギーなビートに、重厚なベース・ラインが絡むトラックの上で、
タッシャが高いスキルを示すラップを聞かせるトラックですけれど、
バックでゆったりと鳴る金属的な響きが、まるでガムランのようで、
トーパティ・エスノミッションのメンバーに聞かせたくなりますねえ。

トラーマのアーティストたちがクラブ・ミュージックをベースにしていたように、
タッシャの世代がトラップをベースとするのは、
進化し続けるヒップ・ホップの流行を反映した、当然の帰結。
その一方、タイトル・トラックの‘Próspera’ では、
レイ・チャールズのような60年代ソウルから、
プリンスやディアンジェロまでが、シームレスに繋がっているのを感じさせ、圧巻です。

さらに、ジャズのセンスがあるのも、タッシャの強みですね。
デビュー・シングルは‘Rapjazz’ というタイトルだったそうですけれど、
ジャジー・ヒップ・ホップの‘Try’ のスキャットを組み合わせたフロウなど、実に鮮やか。
‘Ansiejazz’ では、ネオ・ソウルとミックスした、
いかにもイマドキなジャズ・ヒップ・ホップを聞かせます。

そうしたヒップ・ホップ世代にも、サンバが底層にあるのは、やはりブラジル人ゆえ。
クララ・ヌネスやパウリーニョ・ダ・ヴィオラからの影響を言うとおり、
‘Amora’ ではカヴァキーニョやパンデイロのリズムにのせて、
さらりとサンバをやるパートも交えて、サンバ・ソウルを歌います。
歌ごころ溢れるセンスは、トラーマ世代から変わらない、
ブラジル産ヒップ・ホップの良さであり、強みですね。

Tássia Reis "PRÓSPERA" MCK MCKPAC0349 (2019)

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