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ラッパーからアフロビート・バンドへ バントゥー

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Bantu  EVERYBODY GET AGENDA.jpg

ナイジェリア人の父とドイツ人の母のもと、
71年にロンドンで生まれたアデ・バントゥーことアデゴケ・オドゥコヤ。
バントゥーの名を知ったのは、フジ・シンガーのアデワレ・アユバをフィーチャリングした
05年のアルバム“FUJI SATISFACTION” でした。
ドイツのピラーニャから出たこのアルバムは、
ひさしぶりにフジがインターナショナルなシーンに登場した作品で、
おおっと注目したんですが、アフロビートやレゲエを取り入れたアレンジが凡庸で、
がっかりしたものです。

アユバが強靭なフジのこぶしを利かせているものの、
主役のラッパー、バントゥーとの絡みがチグハグで、まるっきりイケてないんだよなあ。
フジとヒップ・ホップの融合については、当時ワシウ・アインデ・バリスターの試みから、
打楽器と肉声をガチンコ勝負させる可能性に期待を持っていただけに、
このアルバムのサウンド・プロダクションには落胆させられました。
ソッコー売っぱらっちゃったので、画像は載せられませんが、当時日本盤も出ました。

というわけで、ナイジェリア系ドイツ人ラッパーとして記憶したバントゥーでしたが、
その後、13人編成のナイジェリア人メンバーによる
本格的アフロビート・バンドを率いるとは、意外でしたね。
10年作の“NO MAN STANDS ALONE” ではファタイ・ローリング・ダラーと共演したり
(今気づいたけど、ガーナのワンラヴ・ザ・クボローも、ゲストに迎えていたんだね)、
17年の前作“AGBEROS INTERNATIONAL” では、
トニー・アレンが1曲ゲスト参加していました。

そして、先月出たばかりの新作、これが過去作をはるかに上回る快作なんですよ!
これまでバンド・アンサンブルが洗練されすぎていて、アフロビートの強度や
ストリート感に欠けるのが気になっていたんですけれど、今作では洗練を上回る
エネルギーが満ち溢れていて、がぜん説得力を増しています。
レゴスに暮らす庶民の現実を照射したポリティカルなメッセージが、
エネルギーの源泉になっていますね。

バントゥーというバンド名を、アデ・バントゥーの名前ではなく、
Brotherhood Alliance Navigating Towards Unity の
頭文字とした心意気にも、グッとくるじゃないですか。
歌詞もピジンのほかヨルバ語でも歌っていて、
地元リスナーに向けたリアリティが伝わってきます。
アフロビート・バンドには珍しいトーキング・ドラマーも、大活躍していますよ。

ジャジー・ヒップ・ホップとアフロビートを結合した‘Water Cemetery’ も、
一歩間違えばスカした感じに仕上がりそうなところを、
踏みとどまっているところが、いいじゃないですか。
ハード・ボイルドなアフロビートのトラックの合間に置かれた
ヨルバのプロヴァーヴ(諺)をチャントする‘Jagun Jagun’ にもウナらされました。
そして、アルバムのハイライトは、
ラスト・トラックのシェウン・クティがゲスト参加した‘Yeye Theory’ ですね。
生前のフェラ・クティのモノローグが、最後にフィーチャーされています。

ジャケットを開くと、トタン屋根の貧しい住居が並ぶ地区を
上空から写した白黒写真となっていて、これはアパパ地区かな。
対照的に、全曲歌詞が掲載されたライナー中央には、
超高層ビルが乱立するヴィクトリア島のビジネス街の写真が載っていて、
レゴスの貧富の格差を象徴的に示しています。

ゴツゴツとしたアフロビートのアグレッシヴなサウンドと、
R&Bセンスのメロウなコーラスとジャジーに仕上げたサウンドとのバランスもよく、
アフロビート・ファン必聴のアルバムですよ。

Bantu "EVERYBODY GET AGENDA" Soledad Production no number (2020)

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