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アフリカの木琴好きにはたまらない伝統ポップ作 SK・カクラバ・ロビ

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SK Kakraba Lobi  KANBILE.jpg

昨年オウサム・テープス・フロム・アフリカからリリースされた、
ガーナの木琴奏者SK・カクラバのアルバムは、ギリ(木琴)1台の完全独奏で、
民俗音楽然としたアルバムでしたけれど、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-10-01
まったく趣の異なるSKの旧作を聴くことができました。

本作は、10年から14年にかけて、SKが演奏旅行で訪れた各所の録音をまとめたもので、
ガーナのアクラ、バークレー、コロラド、サンフランシスコの6か所でレコーディングされています。
選りすぐりのベスト・パフォーマンスというべき内容で、聴き応え十分なんですね、これが。

曲ごとに編成はさまざまで、ギリの独奏もあれば、
アテンテベンというアシャンティの竹笛、太鼓のゴメにパンロゴ、シェケレといった打楽器を加えた
アンサンブルあり、さらにギターやピアノを加えた曲も1曲あるなど、
さまざまなサウンドの中で、じ~んじ~んとノイジーに響くSKのギリを楽しむことができます。
さらにSKが歌っている曲もあるなど、とてもカラフルなアルバムといえますね。

葬儀で演奏されるロビの伝統的な曲もやっていますけれど、
ギターとピアノが加わったダンサブルな自作曲など、とてもポップな仕上がり。
この曲では、ギターとピアノが控えめなサポート役に徹したところが成功したといえます。

ほかにも、サッチャル・ジャズばりの“Take Five” なんてのもやっていて、痛快そのもの。
よく練られたアレンジで、キワモノにならなかったところが、好感度高しですよ。
前半でソロを取るアテンベンが、ジャズらしいフレージングを駆使していて、
6穴しかない素朴な笛で、よくこれだけのプレイができるものだなあと感心してしまいました。
民俗音楽から大きく足を踏み出した伝統ポップ作、すごくいいアルバムじゃないですか。

SK Kakraba Lobi "KANBILE" Pentatonic Press no number (2014)

アンゴラのフリー・ソウル カンダ

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Kanda  SINAIS.jpg

これは、アンゴラのシティ・ポップス !?
センバでもキゾンバでもない、オシャレなアフロ・ポップは、
インターナショナルのマーケットで通用するクオリティといえるんじゃないですかね。
へぇ、アンゴラには、こんな人もいるんですねえ。

84年ルアンダ生まれのカンダこと、エマヌエル・ジョゼー・コスタ・カンダのデビュー作。
アクースティック・ギターの響きを活かしながら、ソフト・ロック、ネオ・ソウル、ライト・ファンクなど、
さまざまなテイストを加味したコンテンポラリー・サウンドのプロダクションは、上質です。
スムース・ジャズ・マナーのジャジーな風味も好ましく、
ジョナサン・バトラーやアフォンシーニョを連想させる曲もありますよ。

カンダの親しみのあるメロディとフックの利いた曲は、
ソングライティングの才を感じさせますが、
いわゆるアンゴラらしい哀感や抒情とは、明らかに違うセンスの持ち主ですね。
ブラジリアン・テイストをまぶした西海岸AORといった雰囲気は、
ジョルジ・ヴェルシーロあたりが好きなファンには、どストライクでしょう。
アンゴラのフリー・ソウルともいえるかな。

カンダのソングライティングにアンゴラ色はほとんど感じられないものの、
ゆいいつアンゴラ人のアイデンティティを示したといえるのが、
ンゴラ・リトモスの“Palamé” をカヴァーしたところでしょうか。
ンゴラ・リトモスは、47年に結成されたアンゴラ初のポピュラー音楽のグループで、
50年代に絶大な人気を呼び、伝説のバンドとして、今もアンゴラ人に愛され続けています。

カンダは、“Palamé” のブリッジをラテン・アレンジでシャレたサウンドに塗り替え、
若いセンスとコンテンポラリーなスキルを生かした手腕を、十二分に発揮しています。
この“Palamé” をはさんだ前後の“Kessa Ye Venga” “Lunguieki” の終盤3曲は、
それまでのアフリカを感じさせない曲と違って、アフリカらしいリズム・センスを発揮していて、
爽やかな汎アフリカン・ポップスとしてアルバムを締めくくっています。

Kanda "SINAIS" N’Guimbi KDCD01 (2010)

ナイジャ・ヒップホップR&B+ヨルバ・ポップ ダレイ

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Darey  Naked.jpg

ティワ・サヴェイジのアルバムで、
ナイジェリアのポップスのクオリティの高さにノックアウトをくらい、
ナイジェリアはヒップホップよりR&B寄りのポップスの方が、
断然面白いことに気づかされたんですが、
今度はダレイという男性シンガーの最新作に、やられちゃいました。

本作が5作目になるという“NAKED” は、のっけの“Asiko Laiye” からゴッキゲン。
アフロビート使いのヒップホップR&Bに仕立てたこのトラックは、
キャッチーなツカミもバツグンの、グルーヴィなナンバー。
人気沸騰中のラッパー、オラミデをフィーチャーしたリミックス・ヴァージョンを、
8曲目にも収録しているくらいなので、ヒット狙いの勝負曲なんでしょうね。

続いて、ピジン・イングリッシュとヨルバ語で歌われる2曲目の“Orekelewa” は、
サウンドのテクスチャこそ、メジャー感いっぱいのポップスとなっているのにもかかわらず、
トーキング・ドラムがカクシ味に使われ、メロディにもヨルバ臭さがぷんぷん匂うという、
ティワ・サヴェイジで目を見開かされた、新機軸のヨルバ・ポップとなっているんです。

3曲目の“You're Beautiful” も王道のポップスといったメロディーで、
1番はきれいなクイーンズ・イングリッシュで歌われていると思いきや、
2番からピジンになり、最後はヨルバ語に変わって、
トーキング・ドラムとヨルバ流儀のコール・アンド・レスポンスによる
ブリッジを挟むというアレンジに、ヨルバ・ミュージック・ファンは、
頬をゆるまさずにおれません。

ヨルバ流アフロ・ポップから、ヒップホップR&B、
さらにインターナショナルに通用するポップ・ナンバーまで、
幅広な曲を書くことのできる才能は、感服するほかありませんね。

またシンガーとしても魅力溢れる人で、屈折のない、まっすぐな歌いぶりは、
フェイク使いのR&Bシンガーと異なる資質を感じさせ、
正統派のポップス・シンガーたる大物感を漂わせています。
ピアノ伴奏のみで歌う曲なんて、若い頃のビリー・ジョエルを思わすところもあって、
上質のアイドル・ポップといった感をいっそう強くしますね。

ストリングスやホーンをふんだんに使ったプロダクションもゴージャスなら、
時間と金をかけてしっかりと制作されたPVも見ごたえがあって、
圧倒されるほかありません。
ヨルバ・ミュージックの未来は、もはやジュジュやフジでないことだけは確実で、
ポップスの中にこそ、その伝統が生かされているのを強く感じます。

Darey "NAKED" Livespot no number (2015)

コンテンポラリー・マンデ・ポップ アイサタ・クヤテ

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Aïssata Kouyaté.jpg

クヤテというその姓から、グリオ出身であることはすぐわかるものの、
アイサタ・クヤテという女性歌手の名は、これまで聞いたことがありませんでした。
すでに何回か来日しているらしく、今年も夏にやってきたといいます。
招聘したのが、アフリカン・ダンスのスタジオで、
コンサートではなく、ダンスやジェンベのワークショップとして開催されたらしく、
歌より、ダンスの方がメインだったのかもしれません。

どうも日本では、アフリカ音楽を聴くだけのファンと、
ダンスや楽器を演奏するファンの間に断絶があり、お互いの交流がないのは寂しいですね。
ぼくも先月まで、この人のことをまったく知らなかったくらいなので、
<実践>ファンのイヴェントが、<聴くだけ>ファンの目に届かないことの典型例といえます。
その逆もまたありなんでしょうけれど、そもそもアフリカ音楽というニッチな世界で、
ファンが分裂していて情報の行き来がないというのは、お互いにソンな話だよなあ。

来日時に本人が持ってきたとおぼしき自主制作CDも、
CDショップでは売っておらず、ワークショップ関連のアフリカ楽器店が販売しているだけ。
これじゃあ、フツーのアフリカン・ポップス・ファンはアクセスできません。

もったいないよなあ、と思わずため息をもらしてしまったのは、
自主制作の本作が、すこぶるよく出来たマンデ・ポップだったからなんですね。
レコーディングはパリ。
クレジットの名前を見る限り、参加ミュージシャンのほとんどはアフリカ人ではないようで、
同郷人らしき名前は、コラやンゴニ、パーカッションなど数人のみしかいません。

そのためか、実にこなれたコンテンポラリー・サウンドを聞かせていて、
マンデ・ポップの中に、ロック、ファンク、レゲエを溶かし込んだ手腕が鮮やかです。
流麗なヴァイオリン・ソロや、フランスで活躍するマダガスカル人アコーディオン奏者
レジス・ジザブをフィーチャーした曲もいいアクセントとなっているし、
そんな合間に、コラとギター伴奏のみの伝統的な曲を置いているのも効果的です。

メジャー作と遜色のないプロダクションで、
海外のリスナーにアピールするツボを押さえたサウンドづくりが、
アイサタ自身によるプロデュースというのにも、感心させられました。才女ですねえ。
ママディ・ケイタやモリ・カンテのグループで、キャリアを積んできた成果でしょうか。

グリオとして鍛えられた歌声にも、作曲にも、サウンドづくりにも、
三拍子そろってマンデの伝統がしっかりと刻み込まれた快作です。

Aïssata Kouyaté "MANDÉ" no label no number (2014)

新世代パームワイン・ギタリストの誕生 チェチェクー

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Kyekyeku.jpg

いまどきパームワインを演奏する若いギタリストが、ガーナから登場するとは。

ヴィンテージ・パームワインの復刻CDを目下制作中の深沢美樹さんが、
フェイスブックで紹介されていた、チェチェクーなる若者のデビュー作。
ヴィンテージSPのリイシューCDが、楽しみで待ち遠しいんですけれど、
その前に新作パームワインが聞けるとは、前祝いでしょうか。嬉しいですねえ。
ハイライフをもじったタイトル『ハイアー・ライフ・オン・パームワイン』のウイットも効いていますね。

幼い頃、教会のオルガン奏者だったお父さんからオルガンを習っていたというチェチェクーは、
オルガンより、6・7歳の頃に偶然テレビで見たコー・ニモの“Gyamena Boo” が忘れられず、
ずっと心に残っていたんだそうです。
わずか30秒ほどのパームワインが、チェチェクーの運命の曲になったんですね。

それから15年後、大学で教鞭をとっていたコー・ニモとじっさいに会うことができ、
パームワイン・スタイルのギター、オドンソンを直々に習うばかりでなく、
アカンの伝統音楽やアシャンティの歴史を深く学んだのだそうです。
セルフ・プロデュースによる本デビュー作の1曲目で、
そのコー・ニモとデュエットしています。

ここでは、オーソドックスなパームワイン・スタイルに加えて、
ヴィシャル・ナガーのタブラをフィーチャーしたところがミソ。
伝統やルーツに即した若い世代の音楽家たちが、
さまざまなフェスで交流した外国のミュージシャンたちと共演して、
無理なく音楽性を広げていくところは、グローバルな時代の良さといえますね。

レパートリーはパームワインのほか、ハイライフ・ナンバーも多くあって、
全体のサウンドは、オーガニックなアフリカン・フォークといったムード。
ホーン・セクションを交えた曲でも、
チェチェクーの柔らかなアクースティック・ギターの響きが常に中心にあって、
爽やかなサウンドとなっています。

チェチェクーのギター・スタイルは多彩で、ツー・フィンガーのアフリカン・ギターは当然として、
ピカードをさりげなく披露したりと、フラメンコ・ギターも修得していることを伺わせます。
マヌーシュ・スタイルのフレージングも聞かせたりしているので、引き出しは多そう。

アルバム・ラストは、活動の拠点としているアクラのジャズ・クラブでのライヴ演奏で、
なんと、フェラ・クティの“Lady” をカヴァーしています。
ジャジーなアレンジで、洒落たムードに仕上げていて、
イメージをがらりと変えたこのカヴァー・ヴァージョンは、とても新鮮です。

Kyekyeku "HIGHER LIFE ON PALMWINE" no label no number (2016)

エレクトロ・アンビエント・ソウル ジョーダン・ラカイ

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Jordan Rakei  CLOAK.jpg

ジャケットのヴィジュアルに、到底自分のシュミじゃないと思っていたら、
偶然耳にした“Midnight Mischief” がドツボで、ハマってしまいました。
オーストラリア出身の新鋭シンガー・ソングライター、ジョーダン・ラカイのデビュー作です。

ネオ・ソウルって、サウンドは好みなんだけど、主役の声がダメっていうケースが多くて、
なかなか好みのアルバムと巡り合うことができないジャンル。
特にワタクシの場合、白人の声と相性が悪いものだから、話題となったジェイムズ・ブレイクも、
生理的に受け付けられなくて、まったく困ったもんなんですが、珍しくこの人はタイプでした。

軽やかでつぶやくような歌声は、甘口ながらべたつかず、
舌の上ですっと溶ける和三盆のような味わいがあります。
ジャズやヒップホップを通過した、音響系ネオ・ソウルとでも呼ぶべきプロダクションも極上で、
浮遊するサウンドスケープから立ち上がる音像が、クールです。

こういう独特のムードって、イーフレイム・ルイス以来かも。
エレクトロ・アンビエントといったサウンドの手触りながら、
クラブ・ミュージック臭のないオーガニックさは、人力の生演奏ゆえでしょう。
とりわけ、いまどきのジャズらしいソリッドなドラミングが、サウンドの要となっています。

複数のドラマーが起用されていますが、
いずれもポリリズムを多用して歌伴する新世代共通のプレイ・スタイルを持つ人たちで、
とりわけフライング・ロータスとの共演で有名なリチャード・スペイヴンが聴きものです。
人力ドラムンベースというべきスペイヴンのドラミングは、スペースを埋め尽くすのではなく、
余白を作るのがうまく、なまなましいビート感にぞくぞくしますね。

Jordan Rakei "CLOAK" Soul Has No Tempo SHNT002CD (2016)

88年のツインズ傑作 コリントン・アインラ

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Kollington Ayinla  Quality.jpg   Kollington Ayinla  Blessing.jpg

コリントン・アインラの最高傑作は、
オルモ時代の82年作“AUSTERITY MEASURE” と信じて疑わないぼくですが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-05-13
88年あたりから90年代半ば頃までのコリントン時代の諸作を
最高傑作とする人がいても、異論はありません。

82年にオルモから自己レーベルに移ってからのコリントン・アインラの快進撃はすさまじく、
ライヴァルのシキル・アインデ・バリスターと競い合いながら、
武骨なまでに剛なるフジを磨き上げていきました。
そうしてひとつの頂点に登りつめた時代の傑作が、
88年の“QUALITY” と“BLESSING” の2作といえます。

ようやくこの2作が満足いく形でCD化されたので、あらためて聴き直してるんですが、
アブラの乗りきったコリントンのヴォーカルと、フジ・78・オーガニゼーションの
絶妙なパーカッション・アンサンブルに、ホレボレとするほかありません。

祝詞をあげるようなコリントンのイスラミックなコブシから始まり、
アゴゴなどの小物打楽器がステデイなリズムを刻む合間を、
トーキング・ドラムやトラップドラムが自在に打ち込んで、アクセントをつけていきます。
男たちのお囃子とのコール・アンド・レスポンスを繰り返しながら、じわじわと熱気を上げていき、
はっと気付いた時は、多彩な打楽器が上下左右から、
ビシビシとビートを放ってくるリズムの渦に巻き込まれ、もう夢中になっているんですね。

“QUALITY” ではパーカッション・アンサンブルの精緻な緻密さに唸らされる一方、
反対に“BLESSING” では、ラフなアンサンブルがパワフルで、
B面中盤のトーキング・ドラムのフレーズを
コーラスがなぞって歌う場面が聴きどころとなっています。

シンセを効果的に導入し始めたのもこの2作からで、
“QUALITY” のA面ラストで、打ち込みのような機械的なビートにリズムをスイッチして、
シンセが入ってくるところは、がらりと風景が一変するようで新鮮でした。
さらに“BLESSING” ではもっと大胆な取り入れ方をしていて、
A面冒頭からいきなりシンセが登場し、セリア・クルースの名唱でも有名なキューバの童謡
“Sun Sun Babae” をなぞったパートで始まるのは、ホーフク絶倒ものでした。

LP時代にこの2作を同時に入手して、続けて聴くのが習慣になってしまったせいか、
2枚組のようなつもりで聞いてしまうのですが、
この2作が今回アイヴォリー・ミュージックからCD化されたのは、大歓迎です。
すでにハイ・ケイ・ダンセントがCD化していましたが、ハイ・ケイ・ダンセント盤はすべて盤おこしで、
ノイズが酷くって聴く気がしませんでしたからねえ。

EMI系列のアイヴォリー・ミュージックが、
なぜコリントン・レコーズのこの2作をCD化したのかナゾなんですが、
マスターからちゃんとCD化しているようで、音質はバッチリです。
曲目表示すらなかったハイ・ケイ・ダンセント盤と違って、ちゃんと曲名もクレジットされているし、
ジャケットもオリジナルの写真を使い、
デザインもオリジナルLPを踏襲して作り直しているのが、好感を持てますね。

ハイ・ケイ・ダンセント盤なんて、近影のコリントン・アインラの写真を使い、
オリジナルLPのデザインなんてまったく無視してますからね。
ここ最近は、コリントン時代の諸作をオルモもCD化していて、
いったい契約がどうなってるのかという感じですが、音質はオルモの方がいいので、
これからコリントン・アインラの旧作CDを聴く方には、オルモ盤をオススメします。
いっそのこと、アイヴォリー・ミュージックが全部やってくれたらと思いますけれどねえ。

Alhaji (Chief) Prof. Kollington Ayinla and His Fuji '78 Organisation "QUALITY" Ivory Music KRLPS(CD)26
Alhaji (Chief) Prof. Kollington Ayinla and His Fuji '78 Organisation "BLESSING" Ivory Music KRLPS(CD)27

カタログに残らない歴史的名作 アマリア・ロドリゲス

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Amália Rodriguez  FADO PORTUGUÊS.jpg

『ポルトガルのファド』とずばり名付けられたタイトルも神々しい、
アマリア・ロドリゲスの56年の名作が、50周年記念エディションとしてお目見えしました。
2枚組のディスク1には、オリジナル盤収録の12曲が初のモノラル・ヴァージョンでCD化され、
さらに本作のセッションで録音された別の既発曲10曲が収録されています。
ディスク2には、別テイクやテスト・テイクなどの未発表音源を収録していて、
スタジオ内での会話も含むテイクは、熱心なマニア向けといえますけれど、
アマリア・ファンなら必携でしょう。

今回のCD化は、アマリア・ロドリゲスのLP録音を行った
ヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョによるもので、まさに本家本元による復刻なんですが、
今回ちょっと驚いたのは、同時発売で“AMÁLIA NO OLYMPIA” が出ていたこと。
あれ? これは、フランス・オリジナル盤のジャケットを採用したリマスター盤が、
iPlay から出たばかりだよねえと思ったら、
もうあれから5年も経っているんですね。月日が流れのは速いなあ。

なんと、あのiPlay盤はすでに廃盤なんだそうで、
ヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョが出したのは、
英語(!)のタイトルを白地にレタリングしただけのシロモノ。
アマリアの歴史的名作にこのジャケット・デザインはないだろといった素っ気ないデザインで、
iPlay がオリジナルの風格あるステージ写真を再現していただけに、カチンときましたよ。

え、それじゃあ、もしかしてiPlay が復刻した歴史的傑作“COM QUE VOZ” の
デラックス・エデイション2枚組は?とチェックしてみたら、なんと、こちらも廃盤。
えぇ~、知らなかったぁ。
わずか5年程度で、あのスグレものの復刻CDが、市場から姿を消すとは。
アマリア・ロドリゲスほどの大物ですら、この扱いかよと、フンガイしてしまいました。

アマリア・ロドリゲス・ファンの皆様、
とりあえず、この“FADO PORTUGUÊS” の50周年記念エディション、即買いましょう。
どうせファースト・プレスのみで、すぐになくなってしまうのは必至でしょうから。
ついでに、ポルトガルの伝承曲を歌った3作を集大成した“AMÁLIA… CANTA PORTUGAL” と、
65年にイギリスのプロデューサーが録音した英語曲の新たな編集盤“SOMEDAY” も
同時発売されたので、興味のある方はこちらもあわせて入手をおすすめします。
オフィス・サンビーニャのウェブ・ショップのみで限定販売されています。

思い起こすと、アマリア・ロドリゲスのヴァレンティン・ジ・カルヴァーリョ盤LPは、
80年代末にポルトガルEMIがずらっとCD化したんですよね。
まだ当時はCDが出始めの頃で、旧作のカタログも豊富ではなかった時代でしたが、
オリジナル・フォーマットでずらっとCD化されたのが壮観で、
さすが大物アマリア・ロドリゲスは違うと感心しつつ、
LPでは持っていなかったものもせっせと買ったことを思い出します。

ところが、これも数年後には廃盤となって入手困難になってしまい、
ポルトガル盤CDを買い逃した人の恨み節を、ずいぶんよく聞いたものでした。
その後も長い間オリジナルLPのフォーマットでCD化されることはなく、
いい加減な編集盤しかないという時代が、長いこと続いたんですよね。

ようやく05年頃になって、ソン・リブレが旧作カタログを再CD化し始め、
社名変更したiPlay が継続していたんですが、
それも実は、日本で配給していたオフィス・サンビーニャの田中勝則さんの
オファーで実現したものだったということを、
今回買ったCDに付いていた当時の日本語解説で知ってびっくり。そうだったんだぁ。

アマリア・ロドリゲスほどの歴史的歌手のCDですら、この始末。
レコード会社が所有する過去のカタログへの冷淡さは、
今に始まったことじゃないですけどね。
「いつまでもあると思うな親とレコード」。
大手のレーベルから出てるから、いつでも買えるなんて油断してたら、
あっという間になくなるぞっていう話であります。

Amália Rodriguez "FADO PORTUGUÊS" Edições Valentim De Carvalho SPA0354-2

アビシニア・ママ マルタ・アシャガリ

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Martha Ashagare YEGUD MEWIDED.jpg   Martha Ashagari  Child's Love.jpg

マルタ・アシャガリの新作! おお、なんてひさしぶり。
この人の歌を聴くのは、96年のAIT盤“CHILD'S LOVE” 以来ですよ。
AIT盤のライナーには、これがマルタの6作目で、29歳と書かれていたので、
現在は49になるわけね。女性の年齢をわざわざ書くのは、失礼でありますが。

アルバムの少ない人で、これまで出たCDはこのAIT盤1枚だけのはず。
96年当時で6作目といっても、5作目まではカセットだったんじゃないかな。
アスター・アウェケ、ハメルマル・アバテ、クク・サブシベと並ぶ、ヴェテラン歌手であります。
トロントに暮らしていた時期もあったようですが、今は帰国してエチオピアで活躍しています。

今作がヴェテラン復活の作なのか、
歌ってはいたもののCDを出していなかっただけなのかは、
よくわからないんですが、歌いぶりにはブランクを感じさせません。

“CHILD'S LOVE” では、しゃくりあげ唱法ともいえる独特の歌いぶりが印象的でした。
線の細い声で、すすり泣くようなユニークな節回しを聞かせていました。
あれから20年、かつての線の細さはなくなり、声も太くなって味わい深くなりましたよ。

エチオピア伝統の音感と節回しを深く刻み込んだ歌いぶりは、
ヴェテランらしいこの世代の面目躍如といったところでしょうか。
エチオピア情歌のティジータをはじめ、エチオピア独特の五音音階をもとにした
楽曲が多く取り上げられているほか、ティグリーニャの曲も歌っていて、
エチオピアのフォークロアの香り豊かなレパートリーが並びます。

マシンコやクラールなどの伝統楽器に
アコーディオンやサックスを効果的にフィーチャーしたプロダクションも申し分なく、
円熟したマルタの歌声を盛り立てています。

Martha Ashagare "YEGUD MEWIDED" Flute no number (2015)
Martha Ashagari "CHILD’S LOVE" AIT AIT006 (1996)

華のあるエチオピア演歌 ゲテ・アンレイ

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Gete Anley  MELKISH AYBELTISHIM  Ambassel.jpg   Gete Anley  MELKISH AYBELTISHIM  Nahom 2015.jpg

かすかに苦味を加えた味のある声、なんか聞き覚えがあるなあと思って、
棚をごそごそと探したら、この人の04年作“CHEBEL LEBE” がありました。
少しクセのあるテナー・ヴォイスで、伸びのあるヴォーカルを聞かせる
エチオピアの男性シンガー、ゲテ・アンレイ。

キレのあるこぶし使いが巧みで、いい歌手だなあと思いつつ、
ナホンの凡庸な金太郎飴プロダクションが、その歌いぶりを生かせず、
なんとも残念に思っていたんでありました。

今度の新作も、ナホン専属のアレンジャー兼ギタリスト、エリアス・メルカの制作なんですが、
ちゃらい鍵盤系のチープなサウンドが影を潜め、
ボトムにも厚みが増して、ぐっと重心が低くなりましたね。
エリアスのロック調ギターや、ファンク・ベースのフィル・インを効果的に使い、
打ち込みのホーン・サウンドに生のサックスを絡ませるなどの工夫もして、
メリハリのあるプロダクションにしています。

曲中に複雑なリズムを織り交ぜるパートを作るなど、
以前には聞かれなかったアレンジを施すようになったほか、
鍵盤楽器によるオーケストレーションのアレンジも格段に向上しています。
なんかすっかり腕を上げましたねえ。エリアス・メルカ、見直しましたよ。

ゲテ・アンレイもカラフルなサウンドに応えて、
迷いのないパワフルなヴォーカルでシャープに歌っていて、胸をすきます。
ゲテは、10年にジャン=ポール・ブレリーのアディス・アベバ・セッションにも参加していましたね。
今まさに脂ののった、華のあるエチオピア演歌を歌える逸材です。

Gete Anley "MELKISH AYBELTISHIM" Ambassel no number (2015) [Ethiopia]
Gete Anley "MELKISH AYBELTISHIM" Nahom no number (2015) [US]

キューバのメロウネスに酔う ルイス・バルベリーア

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Luis Barberia feat. Sexteto Sentido  A FULL.jpg

オ・ド・ロ・き・ました。
キューバにこんなオシャレなアーバン・ポップスがあるとは。
キューバの新世代シンガー・ソングライターという、
ルイス・バルベリーアの新作サンプルを聴いて、ソッコー、ぽちりましたよ。

パブロ・ミラネースやシルビオ・ロドリゲスへの悪印象のせいで、
ヌエバ・トローバは完全無視のジャンルと、自分の中に位置づけたのがもう30年前のこと。
キューバのシンガー・ソングライターなんて、まったくの関心外でしたけど、
時代はとっくに移ろっていたんですねえ。
そういえば、パブロ・ミラネースの娘がステキなフィーリン作を出してたっけなあ。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03

ほかにも、アクースティック・サウンドでジャジーなヴォーカルを聞かせる若手に、
ジューサをはじめ、テルマリーやヘマ・コレデーラがいますけど、
どうもどの人も薄味で、ぼくには魅力薄だったんですよね。
ラテンが薄味じゃ、ダメでしょ。
でも、ルイス・バルベーリアの歌い口にはコクがあって、惹かれたんですよ。

そして、ジャジーなポップ・センスにも、目を見張らされました。
アクースティック・ギターを軸にしながら、ドゥーワップやスキャットをこなし、
グルーヴィなファンクをさらりとやってのける手腕も鮮やかで、
インターナショナルに開かれた音楽性を感じさせる人ですね。

ルイス・バルベリーアは、スペインを拠点にヨーロッパで活動していたんだそうで、
たしかにキューバ国内よりも、グローバルなマーケットの方が、ウケはよさそう。
韓国人ギタリストと女性ベーシストがバックを務めるのも、イマっぽいもんな。
キューバ帰国後、エグレムと契約したことは、国内では意外と受け止められたようです。

ルイスの太くソフトなヴォーカルを包み込む、
女声四重奏セスト・センティードの天使の歌声が極上のメロウさで、
羽毛布団のベッドにダイヴするような、夢見心地を味あわせてくれます。
クアルテート・エン・シーを思わすのは、ブラジル好きのサガでありますが、
ラス・デ・アイーダの現代版ととらえるべきなんでしょうね。

なんか、ここんところ、オーガニックでジャジーなポップスがきてるなあ。
アンゴラのカンダに続き、絶賛ヘヴィー・ローテーションとなること間違いなし。
大嫌いな言葉ではありますが、スタイリッシュという形容は、
こういう音楽にこそふさわしいのかもしれません。

[CD+DVD] Luis Barberia feat. Sexteto Sentido "A FULL" Egrem CD+DVD1268 (2014)

爺ちゃん、ハツラツ! ロス・フビラードス

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Los Jubilados  LA LLAVE DEL SON.jpg

世界で老人がカッコいい国といえば、キューバとコンゴが両横綱でしょうか。
キューバはサンティアゴ・デ・クーバのソンのグループで、
ロス・フビラードス、その名も「退職者」というグループを初めて知りました。
ワタクシもお年頃のせいか、親近感のわくグループ名であります。
写真を見ると、トランペッター以外のメンバー全員がご老人で、
ご隠居クラブといった面持ちなんですが、みなさんオシャレで、さすがはキューバです。

そんでもって、音楽がまたハツラツとしてるんだから、たまりません。
アルバム全編にみなぎる、ソンのスピード感がすごい。
なにこの疾走感! キリリと引き締まったビート!
枯れた円熟味なんて、どこへやら。こんなにフレッシュな演奏を、
ほんとにこのおじいちゃんたちがやってんのかと、のけぞっちゃいました。

すんごいなあ。
サンティアゴ・デ・クーバには、こんなグループがいくらでもいるんだろか。
ロス・フビラードスというグループをぜんぜん知らなかった不明を恥じて、
あわてて調べてみたら、94年にサンティアゴ・デ・クーバの伝説的なソネーロ、
フアン・グアルベルト“ベベート”フェレールがリーダーとなって結成したグループで、
セカンド・ヴォーカルにベベートと50年代からのコンビのマリオ・カラカセスを擁していました。

98年にデビュー作“CERO FARANDULERO” をメキシコのコラソンから出し、
本作は8年ぶりの7作目にあたるとのこと。
06年からはペドロ・ゴメスがリーダーを務めていて、
ベベートとカラカセスはすでに他界していて、
結成当初のメンバーはもう残っていないみたいです。

キレ味たっぷりのソンには、サンティアゴ・デ・クーバらしい味わいがいっぱい。
レパートリーにはメンバーのオリジナルのほか、
ピート “エル・コンデ” ロドリゲスが歌った“Catalina La O” や
ジョー・アロージョの“Rebelion” なんて曲も。1曲クンビアもやっています。

すっかりお気に入りになってしまって、
これまでこのグループを知らなかった不明を恥じて、
現在前作のエグレム盤“PURA TRADICION” と
デビュー作のコラソン盤“CERO FARANDULERO” をオーダー中。
届くのが楽しみです。

Los Jubilados "LA LLAVE DEL SON" Egrem CD1369 (2016)

かくも短き独立の歓喜 テタ・ランド

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Teta Lando.jpg

独立戦争から内戦と、戦乱に翻弄されたアンゴラの70~80年代に、
国内外のアンゴラ人からもっとも愛された歌手が、テタ・ランドでした。

アルベルト・テタ・ランドは、アンゴラ北部、コンゴ民主共和国の国境に接するザイーレ州、
ンバンザ・コンゴの裕福な大地主一家のもと、48年に生まれました。
一家には32人もの子供がいたそうです。
ちなみに、10年にテタ・ランドに捧げたアルバム“LETRA CHORADA” をリリースした
テタ・ラグリマスは、テタの8歳年下の弟です。

Teta Lágrimas  Letra chorada.jpg

テタが13歳の時、父親が暗殺され、一家はルアンダへの避難を余儀なくされます。
愛国者だった父親は、北部のコンゴ人を主体とした、反共を掲げるアンゴラ人民同盟 UPA
(のちのアンゴラ国民解放戦線 FNLA の前身)の支援者で、植民地政府に睨まれていたのでした。
息子の行く末を心配した母親は、15歳のテタをポルトガルへ留学させます。
テタは、リスボンでボンガ、リリ・チウンバ、マリオ・ガマほか、
多くのアンゴラの音楽家たちと出会って触発され、プロの音楽家を目指しました。

64年に初めてキンブンド語で作曲し、65・66年頃に作曲した“Kinguibanza” がヒットし、
一躍テタ・ランドの名は、アンゴラでも知られるようになります。
68年にアンゴラへ帰国すると、数多くのバンドがテタを迎え入れようと競い合い、
結局、テタの友人だった打楽器奏者でダンサーの
ジョゼー・マッサノ・ジュニオルが在籍していたアフリカ・ショウに参加します。

Africa Show.jpg

アフリカ・ショウは、アンゴラでオルガンを初めて導入したバンドで、
内戦となる75年まで、アンゴラのトップ・バントとして活躍しました。
アフリカ・ショウの昭和歌謡を思わせる演歌調の哀愁漂うメロディや、
ムード・コーラスふうの曲に、テタの強烈な泣き節がよく映えました。
「恋は水色」をカヴァーしているところなどにも、
センチメンタル好きのアンゴラ人の好みがよく表れているといえます。

そんな人気沸騰のさなかの74年にソロとして独立し、
ンゴラからシングル曲をまとめた初のLP“TIA CHICA” をリリースします。
そして翌75年、ついに独立を達成した記念すべき年に、
独立レーベルCDA第1弾アルバムとして、“INDEPENDENCIA” を出し、
自由を獲得したアンゴラ人民の喜びを体現するかのように大ヒットとなりました。

アルバム1曲目が、独立運動の主導権を争った二派の
“F.N.L.A. M.P.L.A.” というタイトルなのは象徴的でしたが、
皮肉にも両者は独立直後か再び敵対し合い、内戦へと突入します。
本作はそのはざまに残された記念碑的作品ともなったわけですが、
テタは隣国コンゴ民主共和国のキンシャサへ脱出し、
タクシー運転手をしながら、フランコのO・K・ジャズでも歌ったりしていたようです。
そして76年にはドイツへ、さらに78年にはフランスへ亡命し、
テタはパリで89年まで望郷の歌を歌い続けながら、
国外に逃れたアンゴラ人のシンボリックな歌手として愛され続けました。

“INDEPENDENCIA” が突然フランスからCD化されたのには、驚きました。
この頃のアンゴラ盤LPが、オリジナルのままCD化されるのはめったにないことで、
ポルトガル以外のインターナショナルなマーケットでは、これが初でしょう。
見開きジャケットも、オリジナルのままに再現されています。

ちなみにライナーには、本作が初LPと記されていて、
今月号の『レコード・コレクターズ』の記事にも「テタ・ランドの初LP」と書いてしまったんですが、
シングル曲をまとめたLPが先に出ているので、初LPは誤りでした。
ここにお詫びして、訂正させていただきます。

Teta Lando "INDEPENDENCIA" Facon FAN34652 (1975)
Teta Lagrimas "LETRA CHORADA : HOMENAGEM A TETA LANDO" Teta Lagrimas no number (2010)
África Show "MEMÓRIAS" Rádio Nacional De Angola no number

雑食ファンクからヴードゥー・ファンクへ T・P・オルケストル・ポリ=リトゥモ

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Le Tout-Puissant Orchestre Poly-Rythmo  MADJAFALAO.jpg

おそれいりました、フローラン・マッツォレーニ。
今度はベニンの老舗楽団ポリ=リトモの新作を手がけましたよ。
フローランが監修した、オート・ヴォルタの70年代録音3枚組CD写真集に
感服していたばかりだったんですけれど、リイシューだけでなく新作まで、
いまや西アフリカはフローランの独壇場ですね。

ベニンのT・P・オルケストル・ポリ=リトゥモといえば、
03年にドイツのPAMがリイシューしたのを皮切りに、
サミー・ベン・レジェブのアナログ・アフリカが執念ともいえるこだわりで、
限定リリースのファースト・アルバムを含む4作の単独復刻作をリリースしましたね。
ほかにも、ベニンやトーゴのアフロ・ファンクのコンピレーションにも、必ず選曲されていて、
そこまで復刻する価値があるのかなあと思っていたのも、正直なところ。

しかし、そんなヨーロッパでの再評価が現地にも飛び火したのか、
ベニンのトップ・ショウビズから10枚組というすさまじいリイシューが出て、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-12-04
その後同レーベルから、さらにヴォリューム・アップした17枚組が出たとのこと。
http://elsurrecords.com/2016/11/07/le-tout-puissant-orchestre-poly-rythmo-de-cotonou-madjafalao/

ここまでくると、さすがにフツーのアフリカン・ポップス・ファンには関係のない物件といえますが、
あらためてこれまでのリイシューを振り返ってみると、
このバンドの多様な音楽性をうまくダイジェストしたのは、サウンドウェイ盤の
“THE KINGS OF BENIN : URBAN GROOVE 1972-80” だったと思います。

T.P. Orchestre Poly-Rythmo  Soundway.jpg

ポリ=リトゥモは、アフロ・ファンクを軸としながら、
ヴォドゥン(ヴードゥー)のリズム、サトやサクパタを意識的に取り入れたバンドでしたけれど、
いわゆるヴードゥー・ファンクに徹していたわけではなく、ロックンロールもやったし、
パチャンガなどのラテンもやれば、ザイコ・ランガ=ランガのカヴァッシャもやり、
ボサ・アフロなんてゲテものまで、要するに流行りモノははなんでもやるバンドでした。
デビュー作なんて、まるっきりアフロビートでしたからね。

そんな雑食ファンクが真骨頂であり、悪く言えば無個性だったポリ=リトゥモですけれど、
82年に活動を停止して、長いブランクを経てカムバックした11年のストラット盤では、
ヴードゥー・ファンクに焦点をあて、B級と見下されがちなバンドに、
もう一度くっきりとしたアイデンティティを打ち立てようとする意図がうかがえました。

68年結成以来リーダーを務めていたアルト・サックス奏者のメロメ・クレマンが、
12年に67歳の若さで他界するという痛手を負ったものの、
カムバック第2作となる本作では、フローランのプロデュースのもと、
往年の録音以上にヴードゥー・ファンクに活路を見出した傑作に仕上がっています。

思えばガンベ・ブラス・バンドの新作も、ヴードゥーを全面に押し出して、
従来の洗練された音楽性からグッと野性味を増していました。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
ベニンという国は、隣国のガーナやナイジェリアに比べて、
明確なアイデンティティを持ったポップスがないという弱みがありましたけれど、
お隣のトーゴともども、ヴードゥーをキーとして新たな進展が期待できそうです。

Le Tout-Puissant Orchestre Poly-Rythmo "MADJAFALAO" Because Music BEC5156646 (2016)
T.P. Orchestre Poly-Rythmo "THE KINGS OF BENIN : URBAN GROOVE 1972-80" Soundway SNDWCD004

ペディのルーツを見つめて セラエロ・セロタ

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Selaelo Selota  Lapeng Laka.jpg

南ア・ジャズのミュージシャンといえば、ケープタウンやジョハネスバーグの出身者が多いなかで、
ギタリストのセラエロ・セロタは変わり種。
65年1月3日、南ア北部リンポポ州の州都ポロクワネ近郊の
セクルウェ村に生まれたペディを出自とする人で、
幼い頃からペディの伝統的な音楽やダンスに触発されて育ったといいます。

高校卒業後、鉱山労働者として働き、その後ジョハネスバーグに移ってギターを覚え、
劇場の清掃員や案内係、ジャズ・クラブの用務員などの仕事をしながら、
ジャズ・ギターを見よう見まねで練習したという、苦労人であり努力家であります。
その後、奨学金を得てケープタウン大学へ入学し、本格的にジャズを学びながらプロ活動を始め、
98年に初のソロ・アルバムをリリースしました。

5作目にあたる本作は、セラエロのギターに、ピアノ、ベース、ドラムス、
女性コーラスという編成で、セラエロのルーツであるペディの音楽を聞かせます。
ペディの文化は、主流であるズールーやコサに比べて、
あまりに知られていないと感じているセラエロは、
ペディの文化を理解してもらうため、ペディの伝統を自作曲に取り入れ、歌っているといいます。

「マイ・ホーム」を意味するタイトルの本作は、すべてペディ語(北ソト語方言)で歌っていて、
幼い頃の村での生活や、結婚式で歌われる狩猟の歌など、
ペディの伝統音楽をモチーフとした自作曲で占められています。
ペディの音楽というと、オートハープ弾きの盲人ジョハネス・モーララがいるので、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-10-31
聴き比べてみましたけれど、リズムよりメロディに特徴があるように感じますね。
バラッド・タイプの起伏の乏しいメロディの曲が多く、
セラエロの歌い口にも、ストーリーテリング的な性格を感じます。

とはいえ、それがペディ音楽の独自性なのかどうかまではわかりませんが、
グルーヴィーなハチロクあり、3連を強調した4分の4拍子など、
ンバクァンガやマスカンダとは違うサウンドであることはわかります。

ペディ・ポップと呼ぶべき本作のサウンドは、南ア・ジャズではまったくありませんが、
セラエロのギターだけが、正統派のジャズ・ギターのフレージングになっているのが面白いんです。
タウンシップ・ポップにジャズ・ギターが紛れ込んだといった感じで、
フュージョン調にならないところが良さかな。セラエロのクセのないヴォーカルも爽やかです。

Selaelo Selota "LAPENG LAKA" Live At The Shack Entertainment/Sony Music CDSTEP129 (2009)

南ア・ジャズの新進ピアニスト ボカニ・ダイアー

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Bokani Dyer  EMANCIPATE THE STORY.jpg

これが、まだ20代半ばの若者の作品とは。
デビュー作を前年に出したばかりという、
南アのジャズ・ピアニスト、ボカニ・ダイアーの11年作。
その重厚な作風は、年齢に見合わない老成を感じさせるもので、
これがまだ2作目というのだから、恐れ入ります。

ボカニ・ダイアーは86年1月21日生まれと、カイル・シェパードと並んで
南ア・ジャズ・シーン期待の若手の一人と目されている人です。カイルのひとつ年上ですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-05-30
生まれが南アではなく、ボツワナのハボローネというのは、
父親がアパルトヘイト下の南アからボツワナに亡命していた間に
ボツワナ人女性と結婚して、生まれたからだったのでした。

そのお父さんというのが、ジョナス・グワングワやヒュー・マセケラとの共演歴を持つ、
白人サックス奏者のスティーヴ・ダイアーです。
先月オリヴァー・ムトゥクジの記事で触れた60歳記念ライヴで、
スティーヴ・ダイアーがゲスト参加していて、サックスとフルートを吹いていましたが、
ボカニはそのスティーヴの息子なのでした。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17

そして本作では、俗に<スピリチュアル・ジャズ>と称されるサウンドに通じる、
ゴスペル色の濃い、オーセンティックなスタイルのジャズを演奏しています。
若い世代であるにもかかわらず、コンテンポラリー色はみじんもなく、
ブラックネスを強く打ち出したヘヴィーな感触は、
往年のマッコイ・タイナーを思わせる深みを感じさせ、ウナらされました。
もっとも近いスタイルでは、ベキ・ムセレクでしょうか。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-01-17

ボカニはこのあと、15年に“WORLD MUSIC” という
大胆なタイトルの3作目で新たな試みに挑戦していますが、
残念ながら、2作目を超える存在感を示すには至りませんでした。
これから飛躍が期待できる若き才能なので、今後に注目したいと思います。

Bokani Dyer "EMANCIPATE THE STORY" Dyertribe no number (2011)

ジャズ・ベーシストがみた南ア黒人音楽絵巻 ハービー・ツオエリ

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Herbie Tsoaeli  African Time.jpg

時間を見つけては、ここ10年くらいの南ア・ジャズの旧作を、
あいかわらずほじくり返してるんですが、
良作がけっこうあって、目を見開かされ続けています。
嬉しくなってしまったのは、十把一からげに「南ア・ジャズ」のひとことで括れない、
いろいろなタイプの音楽が聞けることで、
さらに、個性豊かなサウンドのいずれもが、
しっかりと南ア音楽の伝統を背負っていることに、あらためて感動を覚えました。

若手では、モーダルな伝統ジャズを聞かせるボカニ・ダイアーがいれば、
ジェイソン・モラン、クレイグ・テイボーン、ビジェイ・アイヤーからの影響を公言する、
いかにも新世代らしいカイル・シェパードがいることは、前回の記事でも触れたとおり。
フュージョンでは、ジンバブウェ出身のルイス・ムランガや、
ジョージ・ベンソンそっくりさんのジミー・ドラッドルという、超売れっ子のふたりがいます。
また、南ア・ジャズというよりは、タウンシップ・ジャズというべき
マラービ色の強い演奏を聞かせる、
レソト出身のブダザ・マペファネのような人もいて、まさしく百花繚乱。

どのようなスタイルを持つミュージシャンであれ、どの人の演奏にも、
南アらしい教会音楽系のメロディがくっきりと刻印されていて、
黒人音楽の伝統を汲んだ歌をフィーチャーしたアルバムも、数多くあります。
ロック、R&B、ヒップホップ、ハウスやテクノなどのグローバル化が進むのに並行して、
南ア音楽の独自色を薄めていくなかで、
南ア・ジャズとその周辺の音楽は、南ア音楽の伝統をしっかりと継承しているといえそうです。

2013年の南アフリカ・ミュージック・アワードの最優秀ジャズ・アルバム賞に輝いた本作は、
20年近いキャリアを持ち、南ア・ジャズ・シーンでもっとも信頼されるベーシストの一人、
ハービー・ツオエリの遅すぎた初リーダー作です。
いわゆるアワードを信用しないぼくも、本作はケチのつけようのないクオリティの高さで、
南ア・ジャズといわず、南ア黒人音楽ファン必聴の傑作といえます。
ちなみに、この時のノミネート作品で、本作と受賞を争ったのが、
カイル・シェパードの“SOUTH AFRICAN HISTORY !X” だったんですね。

どっしりとした重心の低いジャズ作品でありながら、
多くの曲でハービーの歌をフィーチャーしているのが、聴きどころ。
いわゆる歌ものではなく、チャントであったり、
スキャットであったり、コーラス・パートのハミングなどで、
ハービーの低音のかすれ声が、コクのあるノドを聞かせます。
スモーキーな味わいを醸し出すその歌からは、
南ア黒人音楽が持つ深みが自然ににじみ出ていて、
ヴェテラン音楽家だからこその、構えない自然体が成しえた手柄といえますね。

各曲でデディケイトされているミュージシャンに、
ルイス・モホロ、ヴィクター・ンダラジルワナ、モンゲジ・フェザ、
ベキ・ムセレクといった名前があげられているほか、
無名の芸術家や労働者にも捧げられた曲もあります。
伝統的な賛美歌を解釈した曲でアルバムを締めくくっていて、
南ア音楽の歴史を体現した本作は、
ジャズ・ベーシストがみた南ア黒人音楽絵巻といえそうです。

Herbie Tsoaeli "AFRICAN TIME" Sheer Sound SLCD223 (2012)

アダルト・オリエンテッド・シャバービー キャロル・サマハ

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Carole Samaha  ZEKRAYATI.jpg

今年はシャバービーの当たり年ですねえ。

まず、ナワール・エル・ズグビーの新作に始まり、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14
シーリーンのゴージャスな歌謡アルバム、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
王道のポップスに帰ってきたアンガーム、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-06-27
大人の歌を聞かせるようになったマヤ・ディアーブ、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-08
せつな系のジャナットと、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-09-17
ゴキゲンなアルバムが立て続けにリリースされました。

通勤途上iPod でシャバービーを聴かない日は1日もないという、
絶賛シャバービー祭りが続くここ半年間でありますが、
これこそ今年最高の決定打といえるアルバムが届きましたよ。
それがレバノンの歌う女優さん、キャロル・サマハの7作目にあたる新作です。

ついにキャロル・サマハも、ロターナを離れたんですねえ。
ロターナ最終作となった13年の“EHSSAS” 以来3年ぶりとなる本作は、
UAEのカナワットへの移籍第1作となりました。

冒頭から打ち込みの四つ打ちで始まるんだけど、音色がいいんだよなあ。
柔らかくホップする響きが心地よくって、耳にぜんぜん痛くない。
エレクトロはセンス次第ですね、ほんとに。
前作も楽曲が良かったけれど、新作も1曲1曲趣向が凝らされていて、粒揃いです。
バラードからアップまで、多彩な表情をみせてくれます。

リズム・アレンジも巧みで、ダンス・トラックの途中で
伝統リズムにスイッチする場面など、ハッとさせられますよ。
ウード、カーヌーン、ダルブッカなどのアラビックな響きと、
オルガンやエレクトロとの練り込み方も巧いし、
一方、正統歌謡調の曲では、キエフ国立フィルハーモニー交響楽団を起用し、
ゴージャスな演出をしてるんですが、これまた見事にツボにはまっています。

前作に続き、今作でもムハンマド・アブドゥル・ワハーブの曲を取り上げ、
今回は“Aziza” に新たな歌詞を付けて歌うなど、
アラブ歌謡の王道を外さない制作ぶりは、百点満点じゃないでしょうか。

Carole Samaha "ZEKRAYATI" Qanawat no number (2016)

冬の慕情 ハー・ヴァン

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Hà Vân  MẸ LÀ CÁNH CÒ YÊU THƯƠNG.jpg

ひさしぶりにヴェトナムの伝統色溢れる、民歌(ザンカー)集と出会えました。
ちょうど一年前にも、南ヴェトナム懐メロ集で楽しませてくれたハー・ヴァンのアルバムです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2015-12-14
とてつもなく歌のうまい人なんですが、実にさりげなく歌う人で、
けっしてその技巧をあからさまにオモテに出さないところは、
タン・ニャンとは真逆の個性といえますね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-08-28

まずタイトル曲となっているアルバム冒頭の1曲目で、早くもやられちゃいました。
ギターとヴァイオリンだけの伴奏で歌うとは、ザンカーでは珍しい趣向です。
しっとりと歌うハー・ヴァンの慕情のこもった歌声に、胸が熱くなりましたよ。
身体の芯まで温めてくれるこの歌声は、寒い冬の季節にまたとありませんねえ。

2曲目以降は、コンテンポラリー・サウンドにダン・チャン(筝)や
ダン・バウ(一弦琴)の響きを添えたお馴染みのザンカーのプロダクションで、
ハー・ヴァンの美しいヴィブラートと鮮やかなこぶし使いを引き立てています。

また、レパートリーもいいんだな。
ハ・ヴィの11年の大傑作“MẸ LÀ TÌNH YÊU” で歌われていた“Đôi Ngả Chia Ly” に、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-11-01
レー・クエンが“KHÚC TÌNH XƯA 2 : TRẢ LẠI THỠI CIAN” で歌った“Ai Khổ Vì Ai” も
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-08-21
カヴァーしていますよ。

このCDはアメリカのV・ミュージックから出たもので、
以前紹介したルー・アイン・ロアンと同じレーベルですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-02-24
ヴェトナムではリリースされている形跡がなく、
越境コミュニティ向けに制作されたものなんでしょうか。
ソフトケースという安っぽいパッケージは、まるでカンボジア製かミャンマー製みたいで、
海賊盤なのかと疑ってしまいます。

実は中身の方でも気になる点があって、曲間にかすかなプチ・ノイズが入るところや、
8曲目と13曲目でフェイド・アウトを待たずにブツッと終わるところは明らかな編集ミスで、
あちこちのアルバムから取ってきた海賊盤くさいんですが、
ハー・ヴァンの歌やバックのプロダクションには統一感があり、編集盤のようには聞こえません。

どうも出所不明の怪しさが釈然としないCDなんですが、内容はとびっきり。保証します。

Hà Vân "MẸ LÀ CÁNH CÒ YÊU THƯƠNG" V Music no number

南ヴェトナム大衆歌謡の味わい バン・タム

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Băng Tâm  ÐÊM SẦU ÐÂU.jpg   Băng Tâm  EM VẪN… HOÀI YÊU ANH.jpg

こちらは、アメリカのヴェトナム人コミュニティで活躍する越境歌手です。
あでやかなアオザイのジャケットに引かれて曲目を見ると、
アルバム・ラストのタイトルの横に、「カイルオン」と書かれていますよ。これは期待できますね。
同い年に出たもう1枚のアルバムと合わせて、買ってみました。

冒頭から、歌謡ショーの世界そのもの。
いいですねえ。この大衆味は得難いものがありますよ。
ここ最近のヴェトナム本国の抒情歌謡が、
ホーチミンに暮らす都会人のノスタルジアを感じさせる傾向を感じさせますけれど、
こちらはもっと田舎の庶民的な演歌モードでしょうか。

主役のバン・タムは、81年2月3日ホーチミン生まれ。
94年に両親とともにアメリカへ移住し、カリフォルニア、オレンジ・カウンティで
歌手として成長した人とのことで、越境シーンでカイルオンも歌える人というと、
フーン・トゥイがいましたけれど、彼女よりもさらに若いんですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2012-12-21

ダン・バウ(一弦琴)、ダン・チャン(箏)、ダン・ニー(胡弓)、ティウ(笛)など、
ヴェトナムの伝統楽器をたっぷりフィーチャーしたオーケストレーションのアレンジも鉄板で、
アジア歌謡のなかでも、とりわけデリケイトな世界を繰り広げてくれますよ。
タンコ(欧米風と伝統調がスイッチする男女掛け合い歌)では、
なんと大ヴェテランのフーン・ランがゲストで登場します。

ギター・フィムロン、ダン・バウ(1弦琴)、ダン・キム(月琴)など、
ヴェトナム独特のゆらぐ弦が入り乱れる演奏をバックに、
たっぷりとこぶしを利かせたヴォンコ調の歌いぶりを披露して
フーン・ランと渡り合っているのだから、大したものです。

アルバム・ラストは、32分に及ぶカイルオン。
さすがにこれを楽しむには、言葉の壁があって、日本人には厳しいですが、
バン・タムの語りは歌声と変わらぬ愁いを含んだ柔らかな表情で、引き込まれます。
相方を務める男性の穏やかな歌い口にも、ヴェトナム人の心優しさを感じさせますね。

劇中歌の長尺の曲が並んだ“ÐÊM SẦU ÐÂU” に対して、
“EM VẪN… HOÀI YÊU ANH” の方は、歌謡アルバム。
ヴェトナム歌謡の保守王道まっしぐらな完成度の高いプロダクションで、
郷愁味たっぷりのバラード世界を楽しませてくれます。

Băng Tâm "ÐÊM SẦU ÐÂU" Asia Entertainment no number (2015)
Băng Tâm "EM VẪN… HOÀI YÊU ANH" Asia Entertainment no number (2015)
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