カイヤエイ? ケイヤエイ?
どう発音するのかわからないんですが、スゴい才能が登場しましたね。
バンドキャンプで残りわずか2枚になっていた限定CDを、
ギリで入手できたんですが、R&Bのシンガー・ソングライターという紹介では、
到底説明しきれない、サウンド・クリエイターぶりに驚かされました。
93年シカゴ生まれ、ニュー・ヨークのブルックリンで活動するカイヤエイこと
チャケイヤ・リッチモンドは、R&B、ヒップ・ホップ、ネオソウル、ジャズ、
エレクトロ、アンビエント、ビート・ミュージックをブレンドした音楽性で、
ジェイムズ・ブレイク以降の内省的な、靄に覆われたサウンドスケープを描きます。
デビュー作となる本作は、すべて彼女がトラックメイクしていて、
ほんの数人の手を借りたほか、彼女一人の孤独な作業によって制作されたそうです。
ローファイなテクスチャにアンダーグラウンドなイメージを持つものの、
インディ・ロックのスピリットをR&Bに宿した革新性があります。
サンプラーから生み出されるループを特徴とした彼女のソングライティングは、
意外にもアフリカン・マナーであるのと同時に、ジャズの即興性も強く感じさせます。
シカゴ時代にサックスを吹いていたそうなので、ジャズの素養があるんじゃないかな。
一方、キャッチーなパンチ・ラインを持つ‘Every Nigga Is A Star’ では、
巧みなラップを披露するし、プリンスの‘Do Yourself A Favor’ は、
曲をいったんバラバラに解体して再構築したカヴァーとなっていて、その手腕は見事です。
カイヤエイは、黒人女性の愛や喪失、解放について、
個人的な日記を語るように歌い、黒人コミュニティにフィードバックしては、
抑圧的な社会と対峙する姿勢を示しています。
ニーナ・シモンに、オーネット・コールマンの元夫人の詩人ジェイン・コルテスや、
黒人フェミニストとして知られる劇作家で詩人のヌトザケ・シャンゲの朗読・
インタヴューをサンプリングしているのも、そんな彼女の意図のあらわれでしょう。
BLMが大きなうねりとなった2020年に出るべくして出た作品、
ダイヤモンドの原石を思わすアンダーグラウンドR&B新人のデビュー作、
革新的な傑作です。
KeiyaA "FOREVER, YA GIRL" Quik Language QL001 (2020)