ソロ・シンガーとして独立したラルフ・タマールがカムバックして
マラヴォワが完全復活した09年の“PÈP LA” から11年。
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その後、40周年記念ライヴや、大勢のゲスト歌手を囲んだ
“MATEBIS” の続編的アルバムもありましたけれど、
ずっと待ち望んでいたのは、こういうオリジナル・アルバムだったんですよ。
昨年12月4日に発売された新作は、ゲスト歌手なしで、
フロントを務めるのは、看板歌手ラルフ・タマールただひとり。
“PÈP LA” 以来のマラヴォワ新体制の布陣に代わりなく、
バンマスのパーカッション兼ヴィブラフォン奏者ニコル・ベルナール以下、
マラヴォワ流ビギン・サウンドを引き継ぐメンバーがずらり。
少し変わったのは、ストリングス・セクションに女性メンバーが増えたくらいのもの。
新作のタイトルは、クレオール語で「強い女性」を意味していて、
強い気質を持ち誇り高く生きる女性へ、敬意を表しています。
1870年のマルチニーク反乱のヒロイン、ルミナ・ソフィーや、
グアドループで奴隷制に抵抗したラ・ミュラトレス・ソリチュードなどの歴史上の人物から、
脱植民地化の詩人エメ・セゼ-ルの妻で作家のシュザンヌ・セゼールほか、
99歳で初アルバムを出した伝説の女性歌手ジェニー・アルファや、
マラヴォワとの縁も深かった歌姫エディット・レフェールなど、
8人の女性の写真がライナーに飾られています。
レパートリーの大部分は、リーダー、ニコル・ベルナールのオリジナル作。
オープニングに元リーダーのポロ・ロジーヌ作‘Loup Garou’ のほか、
マルチニーク民俗楽団を率いたルル・ボワラヴィルの‘L'enfant Roi’ を
取り上げています。
今回注目に値するのはアレンジャーで、ニコルの兄でベルナール兄弟グループ、
ファル・フレットのリーダーのピアニスト、ジャッキー・ベルナールが5曲で
アレンジを手がけたほか、ジャッキーのオリジナル曲も1曲取り上げています。
このほか、ピアニスト、ホセ・プリヴァのインスト・オリジナル曲では、
新進ジャズ・ピアニストとして注目を集めるホセの息子グレゴリー・プリヴァが
映画音楽的なオーケストレーションのアレンジを施しているほか、
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弦楽セクションのハーモニーとヴォブラフォンとピアノを多層的に動かしていく、
‘Bwavè’ のハイブリッドなアレンジに驚いたら、
なんと三宅純が起用されていて、ドギモを抜かれました。
う~ん、もう大満足であります。ポロ・ロジーヌの遺志を継いで、
マルチニークが産み落としたクレオール・ミュージックを前進させ、
更新し続けていることに、目頭が熱くなります。
Malavoi "MASIBOL" Aztec Musique CM2716 (2020)