ミリ・ロボ?
うわぁ、なんて懐かしい名前。ずいぶん聴いていなかったなあ。
92年に出した3作目の“PARANOIA” 以来だから、四半世紀を越すご無沙汰。
どうしていたのかと思っていたら、98年にオス・モバフコというグループの
録音に参加したのを最後に音楽活動から離れ、
故郷のサル島でサラリーマン生活を送ったあと、
農業生産会社とレストランを経営していたのだそう。
10年以上ぶりで音楽活動を再開し、“PARANOIA” 以来のソロ作、
“CALDERA PRETA” を2010年に発表したところ、
カーボ・ヴェルデの5つの音楽賞の4部門で受賞するという大成功を収めたそうです。
そのアルバムは未聴なんですけれど、
本作はその成功後に出した5作目となるわけですね。
いやぁ、円熟しましたねえ。
枯れたところなど微塵もない、艶もハリもある声で、
マイルドな歌い口にはたっぷりとコクが湛えられ、聴き入ってしまいます。
ソダーデ溢れるモルナ‘Mas Um Amor’ のトロける甘さなんて、悶絶もの。
ミュート・トランペットやクラベスが、
センティミエントなボレーロをも想わせるじゃないですか。
ジャケットに写るミリ・ロボの風貌も、92年の“PARANOIA” とは一変、
髪も髭も白くなっていますけれど、年輪を重ね、ますますいい歌い手になりましたね。
若い頃のミリ・ロボは、ラジオの影響からアメリカやブラジルの音楽が大好きで、
10歳の時に初めて歌ったのがマイケル・ジャクソンの‘Maria’ なら、
初めてステージで歌ったのは、なんとブラジルの名サンバ・カンソーン歌手、
ネルソン・ゴンサルヴィスの代表曲‘A Volta do Boêmio’ だったといいます。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-10-17
のちにプライアで兵役に就いていた時期に、
モルナやコラデイラなどのカーボ・ヴェルデの音楽に興味を持ち、
退役後に故郷のサウ島に帰って、本格的にカーボ・ヴェルデの音楽を
歌うようになったミリ・ロボですけれど、少年時代にアメリカのポップ・ソングや、
ブラジルのサンバ・カンソーンから吸収したセンスが、肥やしになったんじゃないかなあ。
本作の音楽監督は、これまたキム・アルヴェス。
キムはピアノ、アコーディオン、ヴァイオリン、ギター、ベース、
カヴァキーニョ、パーカッション、コーラスと八面六臂の活躍ぶり。
先行シングルで出たキム・アルヴェス作のフナナー‘Ta Da Ta Da’ も収録されています。
ミリ・ロボ自身の自主レーベルから出た作品ですけれど、
プロダクションは豪華で、インディの弱みなし。
カーボ・ヴェルデのヴェテランのアダルトな魅力に酔える逸品です。
Mirri Lobo "SALGADIM" Mirri Lobo no number (2018)
Mirri Lobo "PARANOIA" Mendes Brothers MB001 (1992)