マンデ・ポップの未来は、この人にかかっていると、
大きな期待を寄せている、若きンゴニ奏者カンジャファの新作が出ました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-11-01
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-12-12
新作といっても新録ではなく、
09年にカナダ人グループ、ルイス・メルヴィル&ザ・ウッドチョッパーズと録音した
未発表のファースト・アルバムを、新たにソロを録り直して、リメイクしたもの。
カンジャファは、シディ・トゥーレのツアーに帯同してアメリカやカナダを訪れ、
カントリー音楽に感化されたという話は聞いていましたが、
ルイスとはカナダで出会ったのではなく、バマコで出会ったそうです。
ルイス・メルヴィルは、ギター、バンジョー、マンドリン、ペダル・スティール他を演奏する
マルチ弦楽器奏者で、ルーツ・ミュージックを追及する一方、
実験音楽にも関心を寄せ、トロントのオルタナティヴ・ミュージック・シーンで、
プロデューサーとしても活躍する重要人物。
ブータン伝統舞踏団のタシネンチャや、タイ=ミャンマー国境のカレン人難民キャンプの
学生グループを録音するほか、キューバ、マタンサスのアフロ・キューバンの
ヨルバ音楽を記録するプロジェクトにも関わるなど、
活発な異文化交流の経歴を持っています。
ルイスはウッドチョッパーズの選抜メンバーとともにマリへ出向き、
コラのグリオのマンサ・シソコ、ワスルのジャー・ユスフ、
バマコの国立芸術音楽団の学生たちとレコーディングをして、
この時にカンジャファとも出会ったのですね。
こうして09年に本作がバマコで録音され、その後カンンジャファがカナダへ出向いて、
ルイスとウッドチョッパーズとともに、2か月間カナダ・ツアーしたのだそうです。
ウッドチョッパーズは、ギター、ピアノ、ベース、ドラムス、ハーモニー・ヴォーカルに、
サックス、トランペット、トロンボーンの3管を擁した8人編成。
サウンドはオルタナティヴ・カントリーといえますが、3管のアレンジがユニークで、
ニュー・オーリンズ・ジャズのような対位法的なプレイを聞かせる曲がすごく新鮮です。
アタックの強いフィンガリングで、バリバリ弾くカンジャファのンゴニと、
ルイスが弾くバンジョーとの対比も聴きものです。
カンジャファの明快なタッチに、才気が溢れんばかりなのは、今回も変わりませんが、
オルタナティヴ・カントリーとマンデ音楽の共演が、
異種格闘技的な色彩を帯びなかったところが、本作最大のポイント。
ンゴニがバンジョーのルーツであることを証明するかのように、
地続きのルーツ・ミュージックとして両者が融合しているところに、
お互いの音楽性をよく理解しあっていることが示されています。
Kandiafa "PLANTING TREES" Sans Commentaire SC09 (2020)