ブルガリア、チャルガの大スター、イヴァナの新作。
オープニングのジタン調のナンバーに続き、2曲目はロック歌謡、
ほかにもジャズありラテンありクラブ・ミュージックありの
ポップ・ア・ラ・カルトといった仕上がりで、チャルガらしいナンバーは7曲目のみ。
従来のチャルガを大きくはみ出したコンテンポラリーなサウンドは、
アラブのシャバービーに匹敵するプロダクションといえそうです。
イヴァナの歌いっぷりも、従来のバルカン演歌の情の深さを封印し、
クールに聞かせていて、熟女の貫禄あるセクシーさに翻弄されます。
エレクトリックからアクースティックなサウンドにシフトして、
引きのあるアダルト・オリエンテッドな志向を強めた作品といえます。
とはいえ、どこかアカ抜けないローカルな味わいを残すところは、
チャルガ(=ポップ・フォーク)ならではの良さでしょう。
タイのルークトゥンにも通じる下世話な庶民性は、
洗練されたシャバービーやターキッシュ・ポップになじめないファンも
取り込めるんじゃないかな。
思えばここ十年くらい、下層庶民のポップスは世界のどこでも、
絶滅の一途をたどるか、お上品にして一般ウケ狙いで延命するかの
二択になった感が強いですよね。
ダンドゥットしかり、ルークトゥンしかり、ライしかり。
チャルガもその波にあるのは間違いなく、
中・上流の顧客獲得に向けて制作された意図を感じさせる一作です。
Ivana "SASHTATA I NE SAVSEM" Payner Music PNR2019011696-1179 (2019)