ノー・インフォメーションで買ってきたCD。
ワールド関係の試聴機の棚に並べてあったものの、
お店のポップがついておらず、どこの国の歌手かもわからず、
CDをいくら凝視しても、ヒントになりそうな記述は皆無。どなたさまでしょ?
う~ん、ひさしぶりに味わう、このドキドキ感、いいなぁ。
ネット時代になって、みずてんで買うなんてことがなくなっちゃったもんねえ。
試聴してみると、アフリカらしく、リシャール・ボナやロクア・カンザを連想させる、
洗練されたコンテンポラリー・センスの持ち主のよう。
アーティスト名も曲名もスペイン語というのが謎で、
アフリカでスペイン語といったら、赤道ギネアと西サハラしかない。
???のまんま、家にお持ち帰りし、あえてネット検索などしないまま、
ひととおり聴いてみました。
試聴機では、中性的な声に、男性か女性かすら判然としなかったんですけれど、
デジパックを開くと、ギターを抱えたむさくるしい感じの男が写っていて、
レユニオンあたりのインド洋の人に見えなくもない。
じっさい、1曲目はインド洋音楽ぽくあるんですけれど、
風貌に似合わず、歌声は繊細なシンガー・ソングライターといった雰囲気。
ノー・フォーマット!レーベルあたりの、フランス人好みのサウンドです。
続く2・3曲目の浮遊感のあるメロディや歌声は、リシャール・ボナみたいだし、
4曲目はサンバ、8曲目はボサ・ノーヴァという具合で、???
結局、耳だけではまったく素性がわからず、あきらめてネット検索。
すると、なんとアルゼンチンのシンガー・ソングライターのデビュー作だとわかり、驚愕。
はぁ? アルゼンチン人が、なんでこんなアフリカっぽいの?と思ったら、
12歳の時にメキシコに移り住み、ギネアの音楽家たちのコミュニティと出会って
マンデ音楽を学び、音楽的感性を育んだとのこと。
え? メキシコにギネア人のコミュニティがあるの?
でも、このアルバムにマンデ音楽の要素はないよねえ。
ラスト・トラックで、本人がバラフォンを叩いて歌ってはいるけど。
なんだか、想像がまるで及ばない経歴ですけれど、
この音楽を聴けば、マンデ音楽はさておき、リズム・センスはたしかにアフリカだし、
不思議なミクスチャーも腑におちるような、そうでもないような。
音数の少ないシンプルな伴奏は、なかなかに上質。
誰でしょう?とクレジットをみると、
コラを演奏しているのはバラケ・シソコで、チェロはヴァンサン・セーガル。
うわぁ、予備知識なしで、かえって良かったと思われるお二人が参加
(ファンの方はごめんなさい。ぼくはこの二人が苦手)。
それがわかってたら、たぶん試聴すらしなかったと思います、自分。
なにも知らなかったから出会えた、ラッキーな一枚でありました。
Ignacio Maria Gomez "BELSIA" Hélico HWB58135 (2020)