これはよくできたフュージョン・アルバムですねえ。
フュージョンを聴いてカンゲキしたのって、すごいひさしぶり。21世紀に入って初、かも。
スナーキー・パピーのキーボーディスト、ショウン・マーティンのデビュー作です。
試聴機でチラ聞きした印象がすこぶる良く、家でじっくり聴き直してみたら、
たいへんな力作で、ウナってしまいました。
曲・アレンジとも、じっくり練りこんであって、
プロデュースの手腕が作品の成否を握るフュージョンにあって、
本作はまさに理想的な作りとなっています。
タイトルが示すとおり、シャウンはこのデビュー作を完成させるのに、
7年間をかけていて、なるほどそれだけの時間をかけただけの成果が、
しっかりと音楽に刻み込まれていますね。
アルバム冒頭、フェイド・インするグラスパーぽいクールなヒップホップ・ジャズの
アーバンなムードに浸っていると、いきなりセカンド・ラインもゴギゲンな
ニュー・オーリンズ・ファンクになだれこむという変わりように、持っていかれます。
すっかりアッパーな気分になって、いい感じに発汗していると、
今度は一転、美しいピアノの響きにクール・ダウンする曲へと移っていく趣向。
この冒頭3曲の流れは、何度聴いても、あっぱれというほかありません。
デイヴ・グルーシンの“MOUNTAIN DANCE” を
思い起こさずにはおれないM3“The Yellow Jacket” に続いて、
トランペットをフィーチャーしたM4“Lotus” はティル・ブレナーを思わすほか、
ジョー・サンプルの“RAINBOW SEEKER” に近い手触りもあったりして、
フュージョン名作を次々と連想させます。
これ以降の3曲はゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした歌もので、
ゴージャスなストリングス・オーケストラを配した、
ミュージカル調のM5“Have Your Chance At Love”、
クリスタル・ジョンソンの名作“THE DAY BEFORE HEAVEN” を思わす
M6“Love Don't Let Me Down” のクールなヒップホップR&Bと、
曲ごと手を変え品を変えのアレンジとプロダクションが鮮やかです。
そしてM8“The Torrent” は、ピアノ・トリオによる60年代ふうモード・ジャズ。
ネルソン・マンデーラが死去した時にジョハネスバーグを訪れた時の思い出を曲にした
M10“Madiba” は、21世紀のジャズらしいコンテンポラリー・ジャズ。
マイりました。ショウン・マーティンの才能に降参です。
Shaun Martin "7 SUMMERS" Ropeadope/Shunwun Music no number (2015)