キング・アイソバの相棒で、ガーナのコロゴ・シーンを賑わせる逸材、
アユーネ・スレのインターナショナルに向けた第2作です。
ヒップ・ホップ感覚に富んだコロゴを聞かせた18年の前作と路線は変わらず、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-10-09
さらにアユーネ流コロゴをブラッシュ・アップしたアルバムになりましたね。
アユーネ・スレの一番の特徴は、キャッチーなメロディ・ラインに、
フックの利いたフロウが絡む、ソングライティングの上手さ。
アユーネのコロゴを聴いてもらえば、
コロゴが反復フレーズとコール・アンド・レスポンスだけの単調な音楽という、
誤った固定観念を持たれずに済むんじゃないかな。
前作では、ガーナのメインストリームのポップ・サウンド、
ヒップライフやアゾントを取り入れる試みもみられましたけれど、
今作では直接そうしたサウンドを借用することはせず、
ヒップ・ホップやファンクをしっかりと咀嚼して血肉化したサウンドで、
コロゴをアレンジしたという印象でしょうか。
たとえば、ホーンを模したシンセ・サウンドが耳を引く
オープニングの‘Tezaa So Ndeyine’ のリズム・アレンジにも、それが表れていますね。
この曲にフィーチャーされたラッパーは、On-U・サウンドを代表するバンド、
アフリカン・ヘッド・チャージのダブ・マスターのボンジョ。
ボンジョはもう1曲‘Fighting Music’ でもフィーチャーされていて、
控えめなダブ処理も終盤にちらりとみせています。
女性コーラスも従えてラップをフィーチャーしたファンク味たっぷりの‘Don't Be Lazy’ は、
ヒット間違いなしのアップリフティングなナンバー。
人々をダンスに誘うナンバーでも、道徳を説き、神の教えを伝え、
先祖の智慧を受け継ぎ、引き継ぐことを歌う歌詞は、コロゴのストーリーテリングという、
ミンストレル(吟遊詩人)が持つ性格をしっかりと示しています。
今回も大勢のラッパーがフィーチャされていますけれど、
前作のメンツとは全員入れ替え。
ディープなアユーネの歌声と、キレのいいラッパーのフロウの対比が、
キャッチーな曲を輝かせ、伝統とモダンの幸福な結婚が示されています。
Ayuune Sule "PUTOO KATARE YIRE" Makkum MR30 (2021)