おぅ、これ、ボビー・バレンティンの新作か!
ぐいと前を見据えたボビーの眼光の鋭さに、呼ばれちゃいました。
75歳にして、このキリリとしたマイト・ガイぶり。カッコよすぎます。
それにしても、サルサ新作でこんなシブい色合いのジャケットというのは、
珍しいんじゃないでしょうか。
デジパックを開くと、黒の革ジャン、丸首の白シャツ、ジーンズの揃いでキメた、
オルケスタの集合写真がど~んと載っています。
どんよりとした曇り空をバックに、モノトーンで迫るラテンらしからぬ佇まいから、
ヴェテラン・オルケスタの気概が伝わってくるかのようですね。
「こりゃあ、良さそうだぞ」と感じた予感は、的中。
1曲目のロベルト・アングレロ作の“Amolador” から、涙腺が爆発してしまいました。
71年作の“ROMPECABEZAS”に収録されていた名曲の再演なんですが、
新曲と変わらぬ、フレッシュで緊張感溢れるオルケスタ・サウンドに、カンゲキしきりです。
タイトル曲の“Mi Ritno Es Bueno” も、
ファニア時代の73年作“REY DEL BAJO” でやっていた曲ですね。
ファニアからブロンコに移り、よりエッジの効いたオルケスタ・サウンドとなったヴァージョンで
かつての曲を聞けるのというのも、オツじゃないですか。
珍しいところでは、アルセニオ・ロドリゲスの“Yo No Engaño A Las Nenas” があります。
エディ・パルミエリが68年作の“CHAMPAGNE” でカヴァーしていましたが、
本作ではすごく複雑なアレンジを施したホーンのソリが聴きどころ。
あと、ボビーのベース・ソロが聞けるというお楽しみもあり。
それにしても、トランペットからバリトン・サックスまで、
高低音の音域差を使い分けた5管のアレンジの巧みさや、
個性の異なる3人のカンタンテ(歌手)の使い分けなど、
何十年と変わらぬボビー・バレンティンの普遍のスタイルながら、
どうしてこうもみずみずしく響くんでしょうか。
手練れた感触などまったくなく、ぴりっと引き締まった演奏ぶりは、
もう素晴らしいとしか言いようがありません。
ラストのカチャートにオマージュを捧げた曲まで、
5リズムと5ホーンがキレまくった王道サルサの最高作。
数多いボビーの愛聴盤の中でも、
85年の“ALGO EXCEPCIONAL” 以来のヘヴィー・ローテーション盤となりそうな新作です。
Bobby Valentin "MI RITMO ES BUENO" Bronco BR178 (2015)