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イチベレの日本人ファミリー・オルケスタ イチベレ・ズヴァルギ

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Itiberê Zwarg  ORQUESTA FAMÍLIA DO JAPÃO.jpg

イチベレ・ズヴァルギの18年作“INTUITIVO” は、
エルメート・パスコアールの未完成な音楽を高度に統合して、
ブラジル音楽史上、類を見ない器楽奏作品に仕上げた大傑作でした。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-09-11
あのアルバムに驚嘆してまもなく、イチベレがたびたび来日して、
日本人音楽家向けにワークショップを開いていることを知りました。

エルメート・マジックならぬ、イチベレ・マジックの秘密を知りたくて、
ぼくもワークショップに参加しようと思ったんですが、気付いた時すでに遅しで、
予約が一杯で参加できなかったのは、残念でした。
これらのワークショップを通じて、日本人音楽家とイチベレとの交流が深まり、
イチベレの日本人オーケストラが結成され、
イチベレ・ズヴァルギ&オルケスタ・ファミリア・ド・ジャポンとして
19年に掛川のフェスティヴァルでお披露目されたんですね。

その時のライヴがディスク化されたんですが、
いやあ、スゴイですね、これ。
あ~、掛川まで観に行くべきだったなあ。
演奏は日本人だしなあ、なんて思って行くのをやめてしまった、愚かな自分。
全12曲、イチベレが書き下ろした新曲を、
イチベレほか総勢25人の日本人ミュージシャンとともに演奏しているんですが、
演奏しているのが日本人だということを忘れてしまうような、
見事なエルメート・ミュージックを展開しているのだから、オドロキです。

これだけの人数をリハーサルするだけでも、どんなに大変だったかと思うんですが、
イチベレと日本人ミュージシャンの情熱が実った、素晴らしいライヴ盤です。
なんでもイチベレはスコアを書かず、口伝でメロディやハーモニーを示して、
その場のメンバーとともにアレンジを組み立てていくというやり方をするのだそうです。
それを聞いて、あの複雑なコンポジションで、
ダイナミックな生命力あふれる演奏を可能とする秘密が理解できた気がしました。

カリスマティックな指揮者の上意下達の統率で、譜面と首っ引きで演奏したら、
あんなスポンテイニアスな演奏ができるわけがありません。
メンバーの自発性を引き出し、ぴりっとした緊張感を演奏のすみずみまでに
行き渡らせることができるのも、そういうアンサンブルの組み立てにあったんですね。

昨年、イチベレの娘のマリアナ・ズヴァルギが、
セクステット編成でアルバムを出したんですけれど、
正直かなり物足りなかったんですよね。
イチベレも参加してエルメート・ミュージックを展開しているわけなんですけれど、
演奏の密度がまるで違うんですよ。

それだけに、今回の日本人オルケスタの充実したパフォーマンスは、
ぼくの想像のはるか上を行っていました。
音楽を生み出す喜びに溢れた演奏、素晴らしいの一語に尽きます。

Itiberê Zwarg "ORQUESTA FAMÍLIA DO JAPÃO" Scubidu Music TORTO015 (2021)

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