ショーロのクラリネット奏者パウロ・セルジオ・サントスが、
なんと20年ぶりに新作を出しましたよ!
少し前にギンガとのデュオ作はあったけれど、本人名義のアルバムは、
今作と同じトリオ編成の01年作“GARGALHADA” 以来のはず。
レーベルは20年前と同じクアルッピだけれど、この20年の間に
クアルッピは活動を休止、その後閉鎖の憂き目にあい、
11年に新経営陣のもと再スタートするという浮き沈みを経ているくらいだから、
どれだけ長い期間だったのか、感慨深く思ってしまいますねえ。
ショーロのクラリネット奏者というと、
ぼくは70年代にアベル・フェレイラから聴き始めて、
その後パウロ・モウラに夢中になったんですけれど、
パウロ・セルジオ・サントスは、もっとずっと後になって出てきた人。
エンリッキ・カゼスやマウリシオ・カリーリョと同世代の、
若手ショーロ演奏家のひとりです。
ぼくが最初にパウロの名前を意識したのは、
コンジュント・コイザス・ノッソスの『ノエル・ローザ曲集』(83)でのプレイだったな。
その後94年に出したソロ・デビュー作、そして同じ年に出たマウリシオ・カリーリョと
ペドロ・アモリンと組んだオ・トリオでの演奏は、忘れられない名演でした。
なんせ長い付き合いなので、つい思い出にふけってしまうんですが、
いまやもう大ヴェテランですからねえ。どんな難曲も涼しい顔で
さらさらと演奏してしまう名人芸に、もう頬がゆるみっぱなしですよ。
今作は、20年前の前作とカイオ・マルシオのギターは変わらず、
パーカッション/ドラムスがジエゴ・ザンガードに交替しています。
レパートリーは、前作同様新旧ショーロを織り交ぜ、
古くはアナクレット・ジ・メデイロス、エルネスト・ナザレー、ピシンギーニャから、
ラダメース・ニャターリ、カシンビーニョ、アベル・フェレイラ、シヴーカ、
新しいところで前作同様ギンガの曲が選ばれています。
柔らかな音色で滑らかに吹いてみせるパウロに、
7弦ギター的なコントラポントを交えて多彩なラインを弾くカイオのギター、
パーカッションとドラムスを交互に叩き分けるジエゴと、
たった3人という編成であることを忘れさせる、奥行きのある演奏を堪能できます。
パウロは、カイオ・マルシオの曲で一瞬ユーモラスな表情をみせるほかは、
派手さのないプレイに徹していて、若い時から変わらぬ実直さを嬉しく思います。
Paulo Sérgio Santos Trio "PEGUEI A RETA" Kuarup KCD340 (2021)
Paulo Sérgio Santos Trio "GARGALHADA" Kuarup KCD155 (2001)